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第244話 君は生き延びる事が出来るか?


(ズドォォォォォォォン!!!!!)



 強烈な光を放つエネルギーが何故か、上の方に逸れていった。放った時点で下に曲がりカーブーを描いて上方に放たれたのだ。ラヴァンのヤツ、威嚇のつもりで撃ったのか?



「バカな! 私は真っ直ぐに向けて撃ったはず!」


「こんなトリックくらい見破れないのか? 自分の専門分野だけにかまけてるから、わからねんだよ!」


「な、何をしたと言うんだ!」


「単純なことだ。空気の層に温度差を付けてやったのさ。熱いのはお前さんの光線がまかなえる。対して俺は頭上の空気を冷やしてやった。さっき使ったダウン・バーストも有効活用してるんだ。あれは冷たい上空の空気を叩きつける魔術だからな。いわゆる蜃気楼現象の応用だ。お前の魔術が純粋な光エネルギーだったから、屈折させりゃこっちには当たらない。それがある意味、お前のミスともいえる。」


「蜃気楼だと! そんな物で私の秘術が……。」



 聞いてビックリだ! 蜃気楼の応用? どっからそんな発想が出来るんだ? イマイチ意味がわからない。砂漠とかで遠くの景色が空に浮かぶ、という現象なのは知ってるが、原理までは知らない。



「空気の層に温度差が起きると光が曲がるんだそうです。だから暑い砂漠で、先の方にある涼しい地域の建物が空に浮かんで見えるそうです。」


「メイちゃんも詳しいね?」


「いえ、これはファルさんから教えてもらったから知っているんです。」


「ああ、そうなんだ。」



 メイちゃんにウンチクを語るファルの姿が目に浮かぶ。女の子相手なら誰にでもそういう知識を披露してそうなイメージがある。



「俺に敵わないのは良くわかっただろ。だからこれ以上手を出すな。出したらどうなるか、わかってるよな?」



 ラヴァン達学院運営側の魔術師はくやしそうにしているか、ビビってすくみ上がっているかのどっちかだった。ほとんど倒れたままのので、これ以上戦うことは出来ないだろう。連中に睨みを利かせた後、ファルはゆっくりとコッチに向かってきた。



「危ないところだったな。とはいえ、コレなしでよくもまあ……津波ごとブッタ斬るとは大したもんだ。」



 何気なく、コレと差し出した物は額冠と剣だった。なんでお前がコレを持ってんの? 身内だから、学長の部屋はセキュリティがガバガバだったのだろうか? それはともかく、素直に礼を言い、受け取って身に付けた。



「すまないな。助けてもらった上に、取り返してくれるとは!」


「違うぞ。俺は預かりモンを持ってきただけだ。例ならあのインフルンサーの娘に言っておけよ。」


「は!? なんでアイツが?」



 なにそれ? アイツ、盗賊稼業にまで手を出し始めたのか? 例えロッヒェンが手を貸したとしても無理だろう。絶対捕まるだろうな。エピオンすら銀色カルメンに警告されてたぐらいだし。



「経緯は知らん。誰かから受け取ったとは言っていた。」


「誰がそんなことするんだ?」


「さあな。俺も含めてクソ学長には敵が多いということさ。特に最近は。」


「最近? 俺が学院に来たことも関係してんの?」


「あのクソ野郎ならお前やエレオノーラが来たことを利用しているのは間違いない。そろそろ、何らかの動きを見せるはずだ。だから、今、俺はここにいる。」



 何らかの動き? コイツが来たことや、エピオンが学院側の動きを探っていたり? 学院内部でも浄化委員会とかインスティチュート・ソサエティとかの他者を排除する目的を持った勢力。思い当たることが多数ある。しかも、学長本人も何かを企んでいる。近いうちに大きな出来事が起きるのかもしれない。



「先が思いやられそ……、」


「おい! どうした!」


「勇者さん、しっかり!」



 急に全身の力が抜けていった。意識も朦朧としている。俺は死ぬのか? 治療を受けていたとはいえ、既に手遅れだったのだろうか? 何か痛いとか、苦しいとかじゃなくて、全身が宙に浮かんでいる様な感覚だ……。


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