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第239話 前兆を見逃すな!


「オイーッス!! 遅くなったッスけど、色々不届きな奴等がいたんで、とっ捕まえてやったッスよ!」



 放置しておいたアンネ先生とトニヤを回収しに行こうと砂浜に戻った。そしたら、しばらく行方不明になっていたゲイリーが姿を現した。変わり果てた姿になって。ほぼ裸、しかも都合良く腰の部分だけ服が残っている。それはまだいい。妙な物を肩に担いでいる。月明かりしかないので、近付くまで正体が判明しなかったが、見たらギョッとした!



「生きてるよな、コレ? いや、生きてるよなコレら? 何があったらこんなことになるんだ?」



 肩に担いでいる物、それは人だった! 正確には人々だ! しかも十数人! それがまとめて団子状に絡まっている! みんなローブを着ているので、浄化委員会か学院運営の連中のどれかだろう。ない交ぜになっているので判別がつかない。まあ、団子の連中は一目見たところ、大きな傷を負っているヤツは見当たらないので、生きていると思う。多分。



「いやあ、喰いモン取りに行ったら、森の中で闇討ちにあったッスよ! 浄化とか処刑とかごちゃごちゃ言いながら、火の玉、雷、氷、椰子の実の雨あられを喰らわせられたッス! そのせいで俺ッチの一張羅がこんななったんスよ!」



 ああ、そういうこと? やっぱ、七光りマンの部下とかにやられたってワケか。何人もの部下が魔法の雨あられを喰らわせさせたから、アイツもゴリラが死んだものと判断したんだろうな? ていうか、しれっと魔法の雨あられのラインナップに椰子の実が入っていたのは気のせいだろうか? 空耳だと思いたい……。



「いやいや! 服はいいけど、本体のお前自身も無事じゃ済まないだろ!」


「いや、わかんないッス! 服だけボロボロになったッスよ! 腹立ったから、バーンってやって、まとめてクチャクチャにしてやったんスよ!」


「何だよ! バーンとかクチャクチャとか! 何やったのか全然わかんねえよ!」


「いや、あったことをそのまま話しただけッスから、文句言われても、これ以上なんも出てこないッスよ。ソレより、椰子の実いかがっスか? 椰子の実は出てくるッスよ!」



 椰子の実、聞き間違いじゃなかった! しかも、しれっと出してきて、すんなり手で割って、半分を俺に渡してきた! 喰うところほとんどないけど汁とかうまいな。何も喰ったり飲んだりしてなかったから余計にうまく感じる。



「師匠の方はセン公とトニ公をシメたんスね? 俺ッチも加勢したかったッス!」


「ああ、この二人ね。先生には危うく殺される所だった。その後、トニヤも不意打ちしてきたが、返り討ちにしてやったよ。ついでに言うとジムのヤツもシメておいた。だからタニシも無事だ。」


「敵は粗方始末したんスね。流石ッス!」



 確かにこの島に最初からいる猛獣たち以外は倒してしまったと言えるだろう。だから危機は去った? いや、そうは思わない。何重にも策を張り巡らせる魔術師たちがこれだけで終わるだろうか? イヤな予感がしてしょうがない。ジムを倒してからここに戻ってきたのは、ゲイリーを探しに来た理由だけじゃない。



「なあ、なんか砂浜が広くなった様な気がするのは、俺の勘違いか? ただの潮の満ち引きだけなのかもしれないけどよ?」


「いやー、わかんないッスわ。俺ッチ、海は初めてなんで。」



 俺の気のせいだろうか? 輩を制圧した今となっては、そういう異変に気付けそうな人間がいない。全員気を失っている。とはいえ遠くに見える水平線の位置が高くなっている様な気もする。まさか、まさかとは思うが……、



「フフフ……。気付いたようだな。」


「……!?」


「セン公がなんか言ってるッス!」



 突然、アンネ先生が不敵な笑いと共に俺らの会話に割って入ってきた。気を失っていると思っていたが、覚醒していたようだ。もし、そうだったとしても、この状態から何か出来るとは思えない。何の意図があるんだ?



「もう遅いぞ。逃げられはしない。私と戦った時点で全て決していたのだ。貴様の負けがな!」


「あァ! 負け犬がフカシてんじゃねえぞ、オラ!!」


「お前は黙ってろ。この人がしょうもない負け惜しみを言うわけがない。先生、逃げられないってどういう意味か教えてもらえる?」



 先生は異変の正体を知っている。でなきゃ、無闇に勝利宣言は出来ないだろう。身動きすら出来ない状況でそんな軽率な事は出来ないはず。本当に何か策を仕込んでいたんだろうな。



「私はお前と対峙する前に事前に仕込んでおいたのだ。水と地属性複合の究極魔術、“大海嘯(タイダル・ウエーブ)”。大がかり故、十名の部下たちと協力して起動したのだ。」



 団子状になった連中の中には先生の部下も混じっているのか? 数人の学生を始末するために、これほどの人数を投入するとは。大人げないったりゃ、ありゃしない。



「これは要するに自然現象の津波だ。これから逃げる術はない! この島から脱出する手段を貴様らは持っていないからな!」


「……!?」



 自分が負けたり死んだりしても、相手を確実に倒す手段を準備していたのか! 用意周到なこった! やっぱ魔術師って、意地が悪すぎる。ここまで来ると悪知恵どころか、悪魔の発想だ。こんなんじゃ、人間の方が魔族よりもタチが悪いじゃないか……。

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