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第226話 俺にだって守りたいものがあるんだよ!


「なあ、お前の方も事情を聞かせろよ。」


「……。」



 ジムに追い出された俺たちはずっと砂浜を歩いていた。内陸の方、森がある方へ行くのはリスクが大きすぎたからだ。しかも、今は夜。この状態で森に飛び込むのは自殺行為。だからこそ砂浜を歩いている。



「なあ、何か言えよ。無視するつもりか?」


「うるせえ! 言わなくても、だいたい想像は出来てるんだろ!」


「ああ、そうだな。俺を裏切らないと別れる、とか言われたんだよな?」


「ふざけてんのか、テメエ!」


「いや、お前が話さんから、そうなるんやぞ。」



 大方、あの女、銀色カルメンに言いくるめられたんだろう。良くわからない俺らよりもよっぽど自分の彼女の方が信頼に値するとかそんなところかな。



「うるせえよ! お前に俺の気持ちがわかるもんかよ! 俺にだって守りたいものがあるんだよ!」


「守りたいものがあるのは誰でも一緒だ。でも、なんでも盲目になって信じるのは違うと思うぜ。」


「盲目で悪かったな。それでも俺は間違ったことをしていない! 愛する者を信じて何が悪い!」



 自分に不可欠な関係性が壊れるのがイヤなんだろうな。何が何でもすがりつきたい。そうしないと、自分が壊れてしまう。ある意味であの女に依存させられているとも言える。



「ああ、そうだな。お前は何も間違ってない。お前は正しい。」


「だから死んどけ! 俺が手を下すまでもない。お前一人じゃ生き残れねえよ、この島は!」


「一人? お前、まだ気付いてないのか?」



 俺はゲイリーの方を見た。そろそろ、リカバリーが完了する頃合いだ。電撃で黒焦げになった傷が何事もなかったかのように復元している。夜の月明かりだけでもだいたい確認できるほどである。やはりコイツの再生能力は桁違いだ。これはまるで……いやいや、今は関係のない話だ。とにかくゴリラは復活の兆しを見せている。



「何でだ? 俺は手加減なんてしちゃいねぇ!なんで生きてやがる!」


「あァ!? コラ、よくもやってくれたな、コラぁ!!」



 寝ていて飛び起きたように、すんなりとゲイリーは復活した。しかも起きるなり、トニヤとガンを飛ばし合っている。元気なもんだ。死んでたはずなのに何事もなかったかの様に復活する。それがコイツだ。



「というわけだ。形勢は逆転したな。いつまでも自分に有利な状況が続くわけじゃないんだぜ。状況は常に変化する。それがサバイバルだ。」


「なにがサバイバルだ! ビックリ人間コンテストかよ! 納得できねえ! テメエら超人、変人の集まりじゃねえか!」


「いやあ、照れるなあ。そんなに褒められると。」


「褒めてねえ!」



 俺ら勇者パーティーは超人変人の集団であることは間違いない。アホ勇者に魔王様、遊び人にエロ犬、筋肉ゴリラ。ロッヒェン? いやいやアイツはゲストなんで非正規メンバーです。今後どうなるかはわからんが。



「いつまでもいがみ合ってないで、ここら辺で休むぞ。まだまだ初日が終わったところなんだからな。」


「ケッ、何言ってやがる! 今の俺たちは敵同士なんだぜ!」


「ふーん、結局、意地張るんだ? そんなに俺の首が欲しいわけだ?」


「当然だろ! 今は不利だから、お前らとは離れて活動する!」


「当然ねえ? 当然、俺はお前のことを敵とは思ってないから、心配してやってるんだけどねぇ? 当然、ジムも含むよ。」


「うるせえ! あばよ!」



 トニヤは夜闇に消えていった。ここで一人になるのは危険以外の何物でもないというのに……。



「師匠、腹減ったッス。何か取ってきてもいいッスか?」



 そういえば、楽しい食事は中断されたままだった。一口しか食べてないし、串も捨てて出るしかなかったのだ。コイツを引っ張って行かないといけなかったし。



「いいけど、ほどほどにしとけよ。」


「ウイっす!!」



 正直、言うことを聞くとも思えんが、任せとこう。腹が減っては戦は出来ぬだ。何とかしないと生き残れない。それがサバイバルだからだ。

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