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第217話 賢人会議


 俺たちはダンジョン実習から戻ってきた。色々トラブルがあった上でフロアのほとんどを制覇していない状態でラスボスだけは倒した。一応、条件付きで達成という判定となった。後日詳細が連絡されるということになったので、一旦解散した。



「学長が裏で進めている企みがあるのですね。」



 その日の夜、トレ坊先生とエルに一部始終を説明していた。内容が内容なので、二人とも衝撃を受けていた。学院だけの話に留まらず、世界全体を巻き込む陰謀が関わっているからだ。



「学長が動いているということは、賢人会議や他の七賢人も活動を始めているのかもしれません。」


「七賢人? 賢人会議? 何ですか、それ?」


「七福神がどうかしたの?」



 トレ坊先生から飛び出た謎ワードに俺とエルは困惑した。学長や銀仮面からはその言葉を一切聞かなかった。詳細を伏せた謎の組織なんだろうか?



「古くから、王侯貴族等の権力者や名士達の間だけで存在が囁かれていた組織です。発端は第一次魔王戦役とも言われていますが、詳細はわかりません。」


「神話の時代から生きている先生でもですか?」


「むしろ先生もそのメンバーに入ってそうなイメージなんすけど?」



 賢人というからには頭のいい人の集まりなんだろうけど、昔から“石の賢者”と呼ばれている先生は入っていない? おかしなもんだな。頭が切れすぎるから敬遠されてたりするんだろうか? きっとそうに違いない。



「残念ながら私には声がかかったことがありません。昔から私は嫌われていましたからね。私を嫌っていた人物のほとんどは、七賢人のメンバー疑惑がありましたよ。私をメンバーに加えたくなかったんでしょう。意図的に。」



 先生は高位の魔術師とかに嫌われてるイメージはあるな。金剛石の王もそうだし、学院からも嫌われてる風潮がある。先生の著書“トレ坊ちゃん”もそんな話だと、エルから聞いた。他の先生方や学生達と揉めるエピソードがメインらしいし。最終的には自分から学院を出て行ってしまうという。……あれは先生の体験談だったりするんだろうか?



「おそらく彼らの行動理念と私の理想が相容れないからでしょうね。なんてったって、彼らは世界を裏から支配しているようなものですから。私の考えが彼らの運営の妨げになるのは明白です。」


「そんな!? 先生の考えが受け入れられないなんて……。」


「ありがとうございます。だからこそ、私は彼らの運営を戒めるための活動をしているのです。彼らの理想が実現してしまえば、多くの人にとって生きにくい世の中になってしまいますから。」



 生きにくい世の中? 世界を良くするために動いているのに、そんな真逆の結果になる? だとしたら、よっぽどあくどいヤツらなのだろう。自分たちの都合しか考えてないとか、そんなんだろう。



「七賢人ってどんな人がいるんすか?」


「一般的には伏せられているので、正確にはわかりませんが、疑惑のある人物はある程度挙げられます。」


「例えば学長とか?」


「そうです。学長も疑いがあります。魔術師協会から選出されるのは定番となっています。その他には法王庁関係者。特に法王はメンバーの筆頭と言っても差し支えないでしょうね。他に一人もしくは二人が法王庁から選出されているとも噂されています。」



 出た、法王庁! 色々うさんくさいというのはクルセイダーズ本部に行った時に聞いた。あまりにもうさんくさいので、騎士団は独立してしまったらしいし。権力を盾に方々へ迷惑をかけているのだろう。



「ほへーっ!? 宗教団体が力持ってるのはそのためか!?」


「宗教に権力は付きものですからね。彼らが多く席を持っていますから、当然、権力も強いのです。」



 ヤバいな。同じ団体から何人も席を取っていると権力も強くなる。今後、活動する上でイチャモン付けられたり、妨害されたりしそうだな。警戒しとこう。



「他には王侯貴族や大商人等の権力者が加わっていることも多いです。中には、魔王戦役で武功を挙げた武人、ときには勇者がメンバーとして選出されることもあります。これは現役のみならず、経験者も含まれます。歴代の中で何名か該当する人物がいるのです。」


「勇者もメンバーになってたことがあるの!?」



 驚くべき事実だった! 七賢人のメンバーになっていた諸先輩方がいるとは! その人達が加わっていたときは少なくともクリーンな運営を行っていたと信じたいが……。



「何はともあれ、学長の動きには警戒しなければいけませんね。学院内の諸勢力を分断させるような動きを見せている上、今後大きな動きをみせると予告までしていますしね。嫌な予感しかしませんね。」


「俺も同感っす。」



 ヤツらが分断工作をしているとはいえ、こちらも負けるわけにはいかない。トープス先生との協力取り次いだのは大きな一歩だ。学長の野望は何としてでも食い止めないといけない。

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