第147話 凶暴には凶暴で
「ファースト・ステージにて舞台が汚物でまみれたことにより清掃を行いました。決闘とは思えないアクシデントでしたね!」
よく言うよ! その原因を作ったのはそっちの方だろ! タニシは悪くない。昼メシを少なめに食べていれば、被害は少なく出来ていたのかもしれないが、出来てもその程度だ。とはいえ、それ以前にタニシも戦うことを知らされたのは直前の事だったので、そういう準備すら出来なかったのだが……。
「続いてセカンド・ステージに入ります! 次の処刑対象はゲイリー・ザ・オニオンです。この男は暴力・爆発上等を旨としており、今回の決闘の発端となった、マンティコアのフリアン君殺害事件の実行犯です!」
そんな紹介をしたもんだから、会場のブーイングは最高潮となった。早く出せ、早く殺せ、とかの野次まで飛ぶ有様だ。こりゃキツいわ。身内の俺まで気が滅入ってくる。
「いやぁ、なんか俺っち、大人気ッスね! 鼻が高いッスわ!」
ダメだコリャ! こんな状況でもポジティブっていうか、エラい勘違いを起こしている。空気がまるで読めてない。コイツの脳内はお花畑なのだろうか? いやタマネギ畑かもしれない。ヤツの背後にうっすらとタマネギの花が咲いてるのが見えてきた……。
「行ってくるッス! タニシパイセンの仇を取ってくるッス!」
「ああ。お前こそ仇として討たれるなよ。」
ゲイリーを送り出したとき、俺はあることに気が付いた。さっきまでいた。キマイラとタニシがいない。タニシは運営側の医務室に連れて行かれた可能性はあるが、キマイラは説明がつかない。いやな予感がする……。
「おっほっほ! コボルトは軽く虐める程度に済ませてあげたけれど、次の筋肉男は只では済ませませんわよ! 覚悟をし!」
やはり、また怪物に相手をさせるつもりのようだ。キマイラ以外の怪物を用意しているのだろう。キマイラもマンティコアと対して強さに違いはなさそうだったし。本気殺し用の怪物はどんなヤツなんだろう?
「出でよ、グラディオ! フリアンの仇を取っておいで!」
なんかさっきのキマイラと違う登場のさせ方だ! キマイラはそのまま連れてきた感じだったが、今度は召喚魔法を使うようだ。舞台の真ん中に魔方陣が出現し、巨大な影が魔方陣の中からせり上がってきた! で、デカぁい!
(ズゥゥゥゥゥゥゥン!!)
「グオゴォォォォォン!!!!」
舞台が潰れるんじゃないかと思えるくらい巨大な怪物が現れた! なんか牛の様な二本角が生えた、筋肉質なライオン?のような獣だ。マンティコアやキマイラみたいに複数の動物をくっ付けた感じではないが、シンプルに凶暴で凶悪そうな魔物だ! ヤベエ奴にヤベエのをぶつけるつもりなのだろう。
「ベルムトさん自慢の最強魔獣ベヒモスのグラディオ君の登場です! ドラゴンさえ餌にしてしまうとまでいわれる、その凶暴さ! 果たしてこの魔獣を倒せる人間はいるんでしょうか?」
べ、ベヒモス! どうりで強そうなはずだ!中級種のドラゴンに匹敵するとも言われる魔獣の王だったよな? そんなのを持ち出すとは大人げない。たかが決闘にそこまでしやがるとは! このままでは確実にゲイリーはやられる! いや、食われるかもしれない。
「でかすぎなんじゃ、ゴルァ!! 倒すのに手間かかるんじゃ、オラァ!!」
いや、そういう問題ではないだろ。お前、勝つつもりなんか、コレに? まさかここまで空気読めないとは思わなかった。もうフォローしきれないや。
「オルァーーッ!!!」
ゲイリーは剣を振り上げ、無謀にもベヒモスに突進していった。ベヒモスもそれに合わせて巨大な口を開け、ゲイリーを丸ごと飲み込んだ!
「うわーっ! ゲイリーが食われたぁ!?」
「丁度いい餌だったわ! グラディオ、念入りに?み締めてお食べなさい。」
いいんか、コレ? 決闘で死人出してもいいのかこの学院? しかも餌にするたぁ、どういう事だ! 大問題だろ!




