第112話 みんなの元気わけてくれ!
「七星極應!!」
魔王の体に複数の気配が集まり始めた。まさか、仲間全員の力を結集させるつもりか? 力が一カ所に集まり、ただでさえ強かった威圧感がさらに膨れ上がっていく!
(ズゥン!!!!!!)
威圧感が最高潮に達したとき、空気が大きく震えた。ビリビリとした緊張感が辺りに張り詰める。最高の……絶望感だな。まるで勝てる気がしない……。
「オイコラ! いつまで俺の頭に乗っかってるつもりだぁ! いい加減にしやがれ!」
この間、ゲイリーはずっと地面に埋まったまま、しかも頭の上に魔王がいる状態だったのだ。気持ちはわからなくもないが、その言葉は場違いともいえる。それ以上に絶望感がみちた現状だというのに、空気の読めない発言が出来るとは……ある意味、大物かもしれない。
「悪ぃな! 足元にお前がいること忘れてたよ!」
魔王は頭から飛び降り、片手で無造作にゲイリーを地面から引き抜きいた。この流れがたった数秒であり、しかもいとも簡単にやってのけた。これだけでも恐ろしい強さになっていることを実感せずにいられなかった。嫌な汗が出るのを感じた。
「ぶっ殺すぅ!!」
俺が魔王にビビっているのをよそに、空気の読めない弟子は地面の中から復帰する共に魔王に襲いかかっていった。構えからすると、破竹撃だろう。
「爆! 竹撃ィ!!!」
ヤツの攻撃が魔王に当たると思った瞬間、魔王が恐ろしく速く強烈な掌打を相手に叩き込んだ!
(ズドォォォォォォォォン!!!!!)
まるでゲイリーの技のように大きな爆発が起きた。ゲイリーは為す術もなく、思いっきり吹き飛ばされた。とはいえ、これを食らって五体満足なのが不思議なぐらいだった。
「悪ぃな。この技は無意識に反撃をしちまうんだ。手加減できねえ。まあ、それだけアイツの攻撃力が強かったってぇ事だな!」
アレは無意識に反撃しただけだったのか? そうなると、こちらから仕掛けるのは慎重にした方がいいかもしれない。得体の知れない技に無策で突っ込むのは危険だ。
「赫灼の雨!!」
ロッヒェンが魔王に向かって飛び込んでいく! あのお家芸、あの技を引っさげて魔王へ果敢に挑戦しに行った。俺がクルセイダーズ本部で見た物とは違い、今度は完全版だ! 炎を纏った大剣と宙に浮く刃が魔王を狙う!
「ヴァボーサお気に入りのあの技だな! いっぺん、俺も戦ってみたかったんだ!」
対応する魔王も腕に炎を纏わせた手刀でロッヒェンの技に対抗している。恐ろしく速く正確な攻撃を全てさばいている! それどころかどんどん魔王がロッヒェンを押し始めた。
「そりゃ、そりゃ! お前の力はそんなモンかぁ!」
「うわぁぁぁっ!?」
何度も手刀を叩き込まれ、ロッヒェンは最後に大きく吹き飛ばされ倒れた。元々怪我をしていた上から更にダメージを受けたために、グッタリとしている。
「これ以上被害者を増やすわけにはいかない! アクセレイション!」
ロッヒェンが倒れると同時に、次はエルが大鎌を振り上げ魔王に向かう。アクセレイションの声と共に彼女の移動速度が急激に速くなる。気付いたときには大鎌の刃が魔王の首に迫っていた。
「お前、アクセレイション使えるのかよ!」
言うと同時に魔王の姿が一瞬で消えた! 瞬く間にエルの背後に回って攻撃を仕掛け返していた。エルも尋常じゃない速さでそれを回避し、二撃目の動作に入っていた。
「霧中光燐!!」
流れるような動きで連続した攻撃を入れていった。魔王はそれを容易くかわし、途中から反撃を加えていく。そのうちに技を維持できなくなり、エルは為す術もなく攻撃を受け、倒されたしまった。あまりにも二人の動きが速すぎたため、俺は介入したくても出来なかった! エルがやられる様を黙って見ているしか出来ないなんて、俺はなんて情けないんだ!
「ううっ!?」
「牛野郎の力を引き継いでいるだけのことはあるな。アクセレイションをきっちり使いこなしてる。大したもんだ!」
エルに対して賞賛を送っている。魔王にしては結構素直に敵を褒めている。これ以上、みんなに追撃を入れないところを見るに、やはりコイツは異質な感じが凄
くする。魔王らしくないというか……。
「どうだ勇者! この技もりょうざなんとかっていう流派の奥義なんだぜ! この技で俺とアイツは相打ちになった。魔王を倒したこともある技なんだぜ? 確か名前は“奥義・天上天下”とか言ってた様な気がするなぁ!」
聞いたことのない技だ。コイツの記憶は曖昧なところがあるから正確性に欠けるけど、習得しているのは間違いない。しかも自分自身を倒した技だとも言っているが、果たして?




