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第64話 ジェット・ストリーム・三段オチ!?


 次から次へと変わり者が出現する中、気になってはいたが、あえて気にしないようにしていたことがある。突っ込むのもメンドクサイ相手なんだから仕方ない。まあ、ある程度料理の構想が固まって暇になったので、タニシに振ってみる。



「あのさあ、あえて突っ込まないようにしていたんだが、気付いてるか、タニシ?」


「へあっ? 何がでヤンスか? タマネギ臭いマッチョがいること以外は特におかしいところはないでヤンス。」



 やっぱ気付くよな。見るからにアイツとしか思えないようなヤツが紛れ込んでいる。しかも、タマネギを模した覆面をしている。さっきのハンバーグ仮面とは違い、頭部全体を覆うタイプのマスクだ。でも正体バレバレ。何のために着けているのかと問いただしてやりたい。



「アイツ、なんかいつの間にかいたよな? 何故わざわざ変装までして出場するのか?」


「急にタマネギみたいに生えてきたでヤンス。あっしらにナイショのつもりでヤンスかね? 一時的に姿を消したのはこの準備をするためヤンスか?」



 不可解なんだよな。たまにアイツ、気配を消失させたり、行方不明になったりする。気配を消すのが得意? いやいや、キャラ的にそれはあり得ない。普段空気読めないヤツが気配消して、存在が空気になれるはずがない。それがヤツの不可解要素を更に強めてしまっている。不可解が服着て歩いているようなもんだ。



「そこにいるのは勇者さんではないでッスか?奇遇だなぁ! そして光栄だなぁ! 同席できるなんて嬉しいッスよ!」



 うわぁ……。話しかけてきたよ。しかも初対面のフリして。恥ずかしいから他人のフリしていたかったのに! 関わりたくないよ。こんな変人なんかと! まだハンバーグ仮面がマシに見えてくるレベルだ。



「俺っちの名前知りたいっすよね? 気になるッスよね? どうしよっかな? 名乗っちゃおうかな?」



 コイツ、ウゼぇ! 死ぬほどウゼぇっ! なんでそこでもったいぶるんだよ! 知りたくねえし、そもそも正体わかってんだから、別にどうだっていいんだよ!



「俺っちは………………ハンバぁーーーーーーーーーーーグぅ!!!!!!!!!!!!」



 やめろぉぉぉぉっ! どんだけデカい声出すんだよ! デカい声故に出場者全員がこっちを見ている。恥ずかしい。穴があったら入りたくなるぐらいに恥ずかしい。



「……先生ッス! ハンバーグ先生参上ッスよ! そこんところよろしくゥッ、ッス!」



 何がよろしくだ! なにがハンバーグ先生だ! よろしくねえよ! 周りのみんなドン引きしてるじゃねえか。おかしな空気になっちまっただろ! どうするんだよ、これ?



「もちろん優勝するッスよ、この仮装大会に!」



 やっぱり。勘違いしてやがった。料理の“り”の字も頭の中に存在してなさそうな男だ。おかしいと思った。俺たちの話も聞いてなかっただろうし、例の張り紙を読んでいたとは思えない。だからこうなった。だからおかしな勘違いをしたのだ。もう付き合ってらんない。コイツと一緒にいると色々おかしくなる。



「お待たせしました。出場者の皆様、会場の方へお越し下さい!」



 コンテスト運営の人が案内で入ってきた。控え室がおかしな空気になっているのに気付いて、一瞬不思議そうな顔をしたが、淡々と仕事をこなしている。ゴメンナサイ。うちの不肖の弟子が迷惑かけてスンマセン!



「なかなか愉快な友人がいるんだな。以外と楽しめそうだ。」



 ハンバーグ仮面が通りすがりに言ってきた。決して愉快じゃないよ。不愉快だから! 身近にいたら、嫌でもわかるから!

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