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勇者、勝利する。 ~そして、伝説へ~

「……ん?ここは?」


 ロアは見覚えのある場所で目覚めた。前にも同じようなことがあった気がする。


「気が付いたか?気分はどうじゃ?」


 自分が寝ているベッドの側に一人の少女がいた。あれ?誰だったっけ?


「なんじゃ、まだ気分が悪いのか?」


 まだ、頭がボーッとしていた。自分が何をしていたのか、思い出せない。


「これ!聴いておるのか!返事をせい!」


 声を出そうにも、思うように言葉が出てこない。「ん?ああ?」


「まさか、記憶喪失にでもなったのか?」


 言うなり突然、彼女は自らの額をロアの額にぶつけてきた。ほとんど頭突きに近い状態だった。


「むー?……なんじゃ、異常はないではないか!」


 額をしばらく付けた後、離れてから異常はないことを悟ったようだ。似たようなことを前にもされたような……、


「思い出した!!ヴァルは!ヴァルはどうしたんだ!」


「何を言っておる。あやつはそなたが倒したであろうが。」


 倒した?倒したのだろうか?まだ頭の中が混乱している。


「えーい!しっかりせい!このたわけがっ!!」


 突如視界からサヨの姿が消える。頬が痛い。殴られたようだ。


「わーっ!思い出した、思い出した!」


 向き直り、必死に無事をアピールする。しかし、サヨはすでに二発目の体勢に入っていた。

バチーン!!


 為す術もなく、二撃目も食らった。


「だめだ。もう、これは死んだ。」


「もう、知らぬ!」


 機嫌を損ねてしまったようだ。


「……ところで、あの二人はどこへ行ったんだ?」


「あの二人ならば、先代勇者を弔いに行ったぞ。」


 先代勇者カレルのことだろう。ロアはあの後、簡易的に埋葬し、弔いはした。しかし、当時は名前すら知らない状態だったので、墓碑銘はなにもなかった。弔いにと言ったが、誰にも場所を教えていないはず。


「そなたが丸二日、寝込んでおる間に記憶を探って、 教えてやったのじゃ。場所の特定には苦労したぞ。」


 合点がいった。サヨが記憶を探れるということを忘れていた。


「その後はクルセイダーズの本部まで戻ると言っておった。報告なり何なり、後処理があると言っておった。そなたには目が覚めたらよろしくとな。」


 いろいろ話したいこともあったが、二人は忙しいのだろう。また会いたければ、本部に乗り込んでやればいい。


「それより、そなたはこれからどうするつもりなのじゃ?行く当てはあるのか?」


 ない。何もなかった。もとより、行く当てのない旅だったのだ。目的地どころか、目的もない。


「では目的を与えてやろう。」


 与える?与えるような目的が何かあるのだろうか?


「あのならず者、はぐれ竜、レギンを討伐するのじゃ。」


「へ?」


 ロアは目が点になった。なんだか超難度クエストを与えられた気がする。


「そうだ!思い出した。あったんだよ!目的が!じゃ!早速行ってくる。」


 ベッドから急に立ち上がり、部屋を後にしようとする。


「待てい。その目的とは〈逃げる〉ということではなかろうな?」


 ロアは聞き終わる前に急いで飛び出した。何としてでも逃げなければ。


「嘘偽りがなければ、その頭の中を見せてみよ!」


 しかし、まわりこまれた!突如、目の前にサヨがあらわれた!


「おや?どうなされました?」


 しかし、かこまれた!部屋の出口にはクエレ・ブレがあらわれた!もはや〈にげる〉の選択肢はなくなっていた。


「私が悪うございました。」


 できうる限りのきれいな土下座をした。


「左様か。引き受ける気になったか?すまんのう。」


 サヨは満面の笑みを浮かべていた。こんな顔は初めて見た気がする。逆に怖い。


「悪いが、さっそく目的を変更させてもらうぞ。」


 変更?一体何を変更するというのだろうか?


「妾の護衛をせよ!あの憎い性悪竜を成敗しにいくぞ!」


「サヨ様、いってらっしゃいませ。」


 クエレは出口から離れ、二人に道を譲った。


「ちょ、クエレさん、サヨを行かせてもいいのか?」


「構わんぞ。クエレとは既に相談済みじゃ。復興や里の移転は任せた。妾は成敗に専念できるということじゃ。」


「えーっ!族長が職務放棄かよ!」


「罪人の処罰も職務のうちじゃ!ほれ、行くぞ!」


 ロアはずるずると引きずられていく。無理矢理連行されているようだった。


「いやだー!行きたくない!」


「観念せい!そなたも勇者の職務を全うせい!」


《……これで勝ったと思わぬことだ……。》


 突然、ロアの頭の中に語り掛ける者がいた。


(……??気のせいか?)


 気のせいだろうか?とにかく今はそう思うことにした。


 二人の旅路は始まった。これからも幾重もの困難が待ち受けていることだろう。そして、二人の旅はいずれ伝説となるだろう。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


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ドラクエ? ジャラ~ン・・・ ロアは回り込まれた。 ダダ~~ン・・・ ロア囲まれた。 無音・・・・・・ ロアはボコられ魂を乗っ取られた:END
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