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天破

 気が付くと闘技場とは違う場所にいた。どこかの山中深く……しかも、故郷の見慣れた風景がそこにはあった。でもどこなのかはわからない。霞がかかっていて、鮮明に見えない。もしかしたら、ここがあの世なのかもしれない。



「来たな兄弟。俺以外ではお前が二人目だ。」



 霞が一部晴れ、一人の男が姿を現した。とはいえ、最初からそこにいたようだ。俺には背を向けている。誰なんだ? 顔も見えないので余計にわからない。



「現在では忘れ去られた幻の奥義を使う資格をお前は得た。俺以外到達できなかった高みへ、お前は到達した。」



 幻の奥義? 何の話だ? 八刃以外に何があるって言うんだ? それ以前に俺と同じ流派なのか? この男の勘違い、人違いなんじゃないだろうか? もうすぐ人生が終わる俺なんかが到達とか習得したところで意味がない。どこで使うんだ?



「使うんだよ、今から。使ってお前は勝つんだよ。技の本質をはき違えた馬鹿野郎に一発食らわしてやれ。そして、お前の人生、戦いはこれから本格的に始まるんだ。」


「技の名前とか、どんな技なのかさっぱりわかんないんだけど……?」



 技のことがわからないと使いようがない。使ったことすらないのに、ぶっつけ本番で出来るわけがない。



「天破奥義、有形無形。この技の習得は八相撃…八刃の完成も意味している。」



 八刃の完成……あの爺さんがあと一歩と言っていた事を思い出す。それに……“天破”って、三皇の中でも最高位に位置する称号じゃないか。しかも、この称号を持っていたのは歴代でもたった一人……、



「全てを世界に委ねろ。そして森羅万象を感じ取れ。過去・現在・未来、全てに干渉する力を掴み取れ。“次元”の壁を乗り越えるんだ。」



 言ってることが超常的過ぎて、理解が及ばない。世界とか、過去とか未来とか、それが技に何の関係があるんだ?



「その時初めて、お前は究極の“超次元殺法”を使えるようになる。」



 超次元殺法? 大げさな名前だ。



「高説はこれぐらいにしとこうか。……お前を愛する娘が呼んでるぜ。後はお前が勝つだけだ。」


「最後にアンタの名前を聞かせてくれよ。」


「俺か? 俺の名は……天破、ジン・ホァンロンだ。」



 そこで視界が眩しい光でいっぱいになり、目が覚める事を実感した。それだけじゃない。そのとき、俺の感覚が“世界”とつながった様な気がした。

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