絶命サバイバルマッチ
「色々ルールなどの変更がありましたが、両者納得済みですので、試合を開始します。史上最大のサバイバルマッチ、開幕です。」
サバイバルマッチ……確かにそうかもしれない。どっちかが死ぬまで続けられる、サバイバルだ。
「貴様は何本目まで生きていられるかな?」
気付いたときには宗家に間合いを詰められていた。これでは対処できない。
「驚門打破!」
腹部に大きな衝撃が加わる。踏ん張ることも出来ずに、後ろへと吹き飛ばされた。俺の意識はそこで一瞬、飛んだ。
「これでまずは一本。」
気付いたときには、俺は空を見上げていた。一瞬のうちに一本を取られてしまった。別に油断をしていたわけじゃない。それほど、俺と宗家の実力に差があるんだ。
「一本取られたということは、一度死んだ事に等しい。実戦であれば貴様はとうに死んでいた。貴様はこの後、何度も死ぬこととなる!」
声が聞こえたときには、俺の真上に宗家がいた。跳躍で俺の真上に飛んだみたいだ。
「休門坑鏨!」
(……ドスッ!)
つま先…と言うより、足刀が俺の腹に突き刺さった。ここで再び俺の意識は飛んだ。
「……で、二本目。」
意識が戻ると共に、今度はすぐに起き上がり体勢を立て直す。このままでは相手のなすがままになってしまうからだ。
「死門霍鐐!」
宗家の両足で蟹挟み状に足を囚われ、横転させられた。横転させられた際に頭を地面にぶつけ、再び意識が飛んだ。
「……三本目。」
意識は戻ったものの、前の二回とは違い、頭部を打ったため、まだ朦朧とした感覚がまだ残っている。とりあえず起き上がることはできたが、視点が定まらず、宗家がどこにいるかわからない。
「ほれ、どうした? このまま何度も死ぬつもりか? 一矢報いたいとは思わぬのか?」
まだ鈍い痛みが頭と腹部にはあるが、視点は定まるようになってきた。誘いに乗る形にはなるが、ここで初めての攻撃を放つことにした。
「破竹撃!」
何も考えずにシンプルな攻撃を放つ。それも容赦なく宗家には払われた。
「景門搏擽!」
剣撃を払われると同時に脇腹へ手刀を叩き込まれた。一回目、二回目と同じ所を狙ってきていた。それまで二回に比べたら、威力は抑えられていたようだが、俺の意識を失わせるには十分だった。
「……ん目。」
意識が戻った。今度は倒れずには済んだようだが、さっきまでより戻るまでに時間がかかっていたのかもしれない。これで四本目か?
「……有隙の征!」
体が自然に動いた。動ける内は攻撃を仕掛ける。今の俺に出来る最善の行動を取るんだ! さっきとは逆に連撃で攻める。でも、当たらない。宗家は全く動いていないのに当たらなかった。
「開門推手。」
剣を持つ腕を取られ、攻撃を封じられた。そして、また腹部へ攻撃を受けた。その衝撃に吹き飛ばされる途中で、また意識を失った。
「……目。」
気が付いた。今度は五本目か? 意識が飛んでる間に剣を落としてしまっていたようだ。慌てて探す。
「貴様の探している物はこれか?」
宗家から剣の柄を差し出された。おれはそれを素直に受け取った。
「生門勒骼!」
宗家の姿が突然消え、代わりに下から顎を突き上げる攻撃が来た。予想外の方向から来たので無防備なまま、攻撃を食らい意識を失った。
「…。あと二つだ。」
顎が痛い。そして、頭もぐらぐらする。さっきの攻撃で脳を揺らされる程の衝撃を受けたからだろう。何か言っているようだが、内容がわからない。何の数を言っているのだろう。
「杜門縺扞!」
ぼんやりした脳で考えていると、攻撃の猛連打が来た。俺の有隙の征とは比べものにならないくらいの攻撃だ。為す術なく滅多打ちにされるしかなかった。そしてまた、腹部を強打され意識を失う。
「…。……とつ。」
あれ、これで七本取られたんだっけ?朦朧とする意識の中、どうでもいいことを考えていた。戦闘中に現実逃避するだなんて、いよいよだな。
「“八掌”を構成する技はこれで最後だ。この技を受けて、貴様は立っていられるか?」
宗家が迫る。一瞬にして間合いを詰められ、止めの掌打が眼前に迫ってきた。
「傷門擂折っっっ!!!!」
死。それしか頭に浮かばなかった。その意識さえ、すぐさま吹き飛んだ。




