表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
318/1128

例え、獣に成り果ててでも……、


「ほう、これは……。」



 私は闇の力…アクセレイションを使うことにした。今は持てる限りの全力で使う。表立って闇の力を使えば、私は捕らえられてしまうかもしれない。そんなことはどうでもいい。この力を全力で使えば、試合に勝てたとしても、私の体は……崩壊してしまうかもしれない……。



「……アクセレイション!」



 体中の筋肉が強ばっていくのがわかる。感覚だけではなくて、実際の見た目にも影響すると思う、全力で使えば醜い姿になってしまうのはわかりきっていた。



「筋力増強か? その様な奥の手を持っていたのか。」


「……!!」



 ただシンプルに相手を攻撃する。多分、避けられる。凌がれる。でもそんなの関係ない。その技ごと力まかせに壊すから。



「一指空遷。」



 身体能力と一緒に感覚能力も倍にしたから、今は見える。避けて攻撃することも出来るけど、そのまま攻撃する。まだ、手加減を続けるつもりなら、遠慮なく壊す!さらに力を凝縮させ、攻撃の勢いを増加する。さらに力を増すことは想定してないはず!



「アアアアアァッ!!!!」


「むうぅぅ!?」


(ビキィィィッ!)



 相手の小指を破壊した感触が伝わってくる。このまま首を刈る。



「……景門搏擽!」



 折れた小指をそのままに手刀に切り替え、大鎌を円を描くように払いのけた。その影響で私の体勢も大きく崩された。そこへ反対側の手からの手刀が振り下ろされた。



「くああっ!?」



 無防備な脇腹に攻撃をもらった。アクセレイションで体を強化しているのに、物凄い衝撃だった。一瞬意識を失いそうになる。



「……さすがに私も無傷ではなかったが、武術を甘く見すぎたようだな。」



 起き上がって、相手と向き直る。激痛で苦しかったけど、倒れている暇なんてない。相手を倒すまで、自分が倒れるわけにはいかない。



「本来武術というものは、肉体的に強い者へ劣る弱者が対抗するために編み出した技術だ。同じ技術を有しているのならばともかく、膂力のみで対抗することなど無謀に等しい。」


「アアアアアアッ!!!」



 相手が言っている事は正しいのかもしれない。でも、そんなことは私には関係ない。もっと圧倒的な力で立ち向かう。それしか私には道がない。さらに加速する。私は風になる。突風になる。嵐にさえなってみせる!



「更に速くなった! どれだけ強めようと関け……、」



 相手の想定外を狙う。もっと速く、もっと強く。私がその技を叩き潰す!再び、同じ技で防御したところを更なる力で押し通す。



(ミシッッッッ!)



 相手を破壊する感触を感じる。これだけでは済まさない。相手を破壊し尽くして、動けなくなるまで止めない。



(ビキッ!)


(グキッ!)


(バキャッ!)


(メリッ!)



 これだけ続けても、どれだけ壊しても大鎌の刃は当たらなかった。悔しい。これだけ必死になっても、当たらない。届かない。相手の命が奪えない。



「もう、止めぬか。」



 どれだけ体を壊しても、涼しい顔をしている。そんな状態で冷静に私を制止しようととしている。



「……驚門打破!」


(メギィィィィッ!!!)



 彼は反撃に転じた。大鎌を狙い、その強烈な一撃でねじ曲げて見せた。そこから更に、攻撃を仕掛けてきた。



「これで地に伏せよ! 傷門擂折っっっ!!」



 一瞬で視界が歪み、右の頬に激痛を感じた。この瞬間、全身の何かが切れるような感触に襲われた。もう、体に力が入らなかった。



「まさか、貴様が悪鬼羅刹の所業を身に付けておったとは。」



 まだ意識がある以上は戦える。でも、体が言うことを聞いてくれない。力が入らない。耐えがたい激痛が走るだけだった。



「むやみに使いすぎたな。し損じれば自らを傷付ける邪法よ。まるで我が流派の仇敵のようだ。西方にもこの力を使う者がおったのだな。」



 何を言っているんだろう? 魔王、魔族以外に闇の力を使う存在がいるっていうの?



「それはともかく、貴様は過ちをしでかした。全身の筋肉が断裂し、下手をすれば一生、自らの意志で体を動かすことすらままならなくなるであろう。こうなるのであれば、ひと思いに貴様を倒してやるべきだった。」



 体に負荷がかかりすぎて、私の体は壊れてしまった。ここまでして戦ったのに、勝てなかった。悔しくて、悔しくて、涙が止めどなくあふれ出た。



「貴様がどうなろうと先程の話は取り消すつもりはない。廃人に成り果てても、貴様の面倒は見てやろう。……その上で、あの男を処断するつもりだ。」


「……だめ! お願い! 私から彼を奪わないで!」


「貴様をここまで追い詰めたのは、奴にも責任がある。貴様という才ある者を惑わせた罪は大きい。私はより一層、奴を処断する決意を固めた。この世から完全に滅してくれよう。」


「……ううっ……。」



 我が身の無力感に苛まれ彼を失う絶望感を感じながら、だんだんと意識は遠のいていった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ