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お互いの条件

「お待たせしました! 準決勝第二試合、いよいよ開幕です!」



 今試合の開幕宣言がなされた。先日の試合に負けず劣らず、観客の注目度の高い事は承知している。だが、私の行いは観客達の期待を裏切ってしまうことになるだろう。



「まずは注目度No.1、史上最も美しいコンビと目される、ブラック・ロータスの登場です!」



 史上最も、か。二人組で開催されるのは今回が初めてと聞いたのだが?まあ、いいだろう。司会業というものは如何に観客の心を引きつけられるかにかかっている。多少大げさでも会を盛り上げるための秘訣といったところなのだろう。そういう意味では司会殿には悪いことをしてしまったかもしれない。



「おおーっと、どういうことでしょう? ヘイフゥ選手一人での入場です。エレオノーラ選手はどうしたのでしょう?」



 予測通り、観客席がざわめいている。ここで私自身が理由を説明せねばなるまい。



「今試合は私とジン・パイロンとの一騎打ちで勝敗を決めたい。エレオノーラは私の希望を受け入れてくれたのだ。彼女の応援に来ている方々には申し訳ないが、どうか許して欲しい。この試合は皆の想像を絶する最高の試合にすることを宣言しよう!」


「予想外です! まさか一騎打ちでの試合をヘイフゥ選手が自ら申し出ました。エレオノーラ選手ファンの方々は残念だとお思いでしょうが、東洋の達人同士の名試合が展開されるかもしれません! どうか帰られずに、お見逃しのないことをお勧め致します!」



 まだまだ観客席はざわめいているようだが、期待の声も次第におおきくなりつつあった。司会殿も中々、口が達者なようだ。後で詫びを入れに行かねばなるまい。



「ほう! 貴様だけで私の相手をするというのか、槍覇よ?」


「おおっと! コール前にジン・パイロン選手の登場です。ヘイフゥ選手の一騎打ち宣言に応じて、勇み立ったのでしょうか?」



 司会から入場を促される前に宗家が姿を現した。私の宣言を聞き、居ても立ってもいられなくなったか?



「不服か?」


「構わんよ。むしろ好都合だ。弟子入りして日の浅い、あの娘が参戦したところで邪魔になるのは明白だからな。」


「邪魔か。それは少々侮りすぎだ。今後稽古をつけて腕を磨けば、五覇になるやもしれん逸材だと思うが?」



 彼女に対しての正直な所感を述べた。少々、親馬鹿にも取られかねんが、彼女の才能は本物だ。いずれは私さえ超えていくかもしれない。



「大した親馬鹿ぶりよの! まあ、気持ちはわからんでもない。私にも年頃の娘はおるのだからな。それよりも……貴様の提案を無条件に受け入れるのはつまらぬ。こちらの条件を受け入れるのならば、貴様の要求を受けてやろう。」



 まさか、向こうも条件を出してくるとは。強者と戦えるのであれば、寝食、家族のことも投げ出す様な男とばかり思っていたのだが。



「条件とは?」


「私が勝てば、あの娘を私の弟子としてもらい受ける!貴様が勝てば、宗家の座を譲ってやろう。」


「何!?」


「おおーっと! パイロン選手、驚くべき条件を提示しましたぁ! いったいどうなるのでしょうか!」



 予想外だ! 滅多に強者以外に興味を持たない、この男がエレオノーラを弟子に迎えたいというのか! 馬鹿な!



「どうした? 動揺しておるのか? 私はあの娘自身の才能は評価している。私は才能のある者は好きだ。その才能はより強い師に師事してこそ、その真価を発揮するのだ。貴様も強者だが、より強い私が教育を施せば、万全のものとなろう!」



 私から弟子を奪うというのか。確かに理屈は理解できなくもない。だが、あの娘自身がそれを認めまい。



「条件をのんだとしても、彼女はあなたを認めるとは思えん。それでも、その条件を出すというのか?」


「それでもだ。私ならば、あの娘を鍛え上げて見せよう。多少は師への反発があった方が向上心を発揮するものだ。貴様の所におれば、ぬるま湯に浸かっているも同然であろう。私の育成能力は貴様等には決して負けん。今まで数多くの弟子を輩出してきたという自負があるのだ。それが宗家というものだ!」


「私の弟子は決して渡さぬ! 私があなたを倒してみせる!」


「フン、私に敵うと思うておるのか? 五覇最強と呼ばれる私の真価を見せてやろう。そして、思い知らせてやろう、貴様の無力さを!」



 私は試合開始の宣言を聞かずに、宗家に向かって行った。この戦いは弟子のためにも、我が弟のためにも負けられないのだ!

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