トリックを暴け!
「何かおかしい。」
宙を浮く槍から逃げ惑う相方の姿を眺めつつ、槍の挙動に何か不自然な物を感じていた。槍は動いているが、ゴーレムからは大した魔力が放たれていない。槍にあれだけの動きを与えるなら、マグネット・エナジーが目に見える程のパワーが必要なはずだ。
「まさかとは思うが、試合開始直後に技発動の細工をしていたのでは……。」
最低限の魔力で槍を操る細工をしているはずだ。それに加え、マグネット・エナジーでの拘束力を高める何らか工夫をしているはず。何か見落としがあるはずだ。その仕組みがあの槍の動きと関係があるような気がしてならない。
(バアアァン!)
あの馬鹿は槍を踏みつけた。豪快に音が響き渡る。これで槍はピクリとも動かなくなった。そこに違和感を感じた。踏まれたぐらいなら魔力で強引に引っ張り出す事は出来るはず。でも、ヤツはそのままにしている。まさか……最初から槍を踏ませるつもりだったのでは……。
「……雷光引力波!!」
(ビュババーッ!!)
気付くのが遅かった。まるで答え合わせをするかのように、侍が行動を起こした。やはりあの技を狙っていたんだ。だが、まだ何か策を講じれるはずだ。もう少しで槍とあの技の原理を暴けそうなんだ。考えつつ、技の妨害用にヴォルテクス・カノンの溜めを作る。
「踏む?地面?……地属性魔法……、」
まさか!……地面に何か仕込んでいるのでは!それから離れられるのなら、技の回避も可能なはず。まずは地面だ。地面の中のトリックを暴き出すんだ!
「ヴォルテクス・カノン!!!」
「わわーっ!何で俺に向かって撃つんだぁ!?」
何かわめいて抗議しているが、そのまま打ち込む。敵の技で両断されるよりはマシだろう。
「雷光一刀閃!!!」
(ドゴォォォォン!!!!)
ヴォルテクス・カノンが地面を抉り、周囲に土埃を巻き上げる。丁度いい。目眩ましにもなってくれそうだ。そして、予想通り、“技の仕掛け”が姿を現し、槍と共に宙を舞っている。それに引っ張られる形で馬鹿も同様の事態になっている。あとは行動を起こすのみ!風魔法で空気を蹴り、相方の元へ急ぐ。
「今は何も考えずに剣から手を離せ!」
俺は飛び込んだ勢いで馬鹿を蹴り出し、技の効果範囲から脱出させる。
「おぶうぉうっ!?」
素っ頓狂な声を上げて吹き飛んだが、別に問題は無い。俺はそのまま、奴等に一杯食わせてやるための迎撃態勢に入った。




