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裏技


「彼女たちは……裏社会に属する人間だな。」



 相手を見た先生は一言つぶやいた。どういう意味なんだろう?私には違いがわからない。確かに怖そうな格好をしているけれど……。小柄な人と長身で細身の女性二人組だ。顔は頭巾で隠しているのでわからない。



「気を付けるんだ。彼女たちは思いがけない手段で攻撃してくる可能性がある。」



 先生は耳打ちしてきた。相手に聞かれないように。私は戦いの経験が少ないから、突拍子もない戦い方を挑まれると対応できないと思う。昨日の試合とは正反対。今度は私の不得手な戦いになりそう。



「では、試合開始!」



 どうしようかと考えている内に試合が始まった。相手は俊敏な動きで私と先生それぞれに攻撃を仕掛けてきた。



「はっ!」



 小柄な方が短剣を両手それぞれに持ち、迫ってくる。私は牽制する意味で大鎌を振るった。当てるつもりで放った攻撃ではないけれど、すんなりと躱されてしまった。それどころか私の大鎌をすり抜けるかのように最短距離で迫ってきた。



「……被験者4号……。」



 接近してきた相手は意外な一言を発した。正直、私が二度と聞きたくないと思っていた単語だ。その呼び名は辛かった事を思い出させるから。思い出してしまうから、心の奥底に封印したつもりでいたけれど、他人に言われてしまっただけで、再び私の心に蘇ってしまった。たったそれだけで私の心はかき乱されてしまった。



「今回、お前は処理対象とはなっていないけど、主は脅威となり得る存在は排除せよと仰せつかってる。」



 主とは誰のことだろう?かき乱され、動揺した頭では検討がつかなかった。実際の攻撃だけでなく、言葉による攪乱で私は完全に翻弄されつつあった。



「容赦なく、排除させてもらうよ。」



 相手は口から何かを吹いた。ごく小さな動作だったので、反応できなかった。



「痛っ!?」



 右腕に針で刺されたような痛みが走った。痛みがあったところから次第に痺れの様な物が全身を駆け巡っていった。



「ううっ!?」


(カシャン!)



 体に力が入らず武器を落とし、膝から崩れ落ちてしまった。これは……もしかして、毒?



「思った通り、甘ちゃんだったな。こんな小細工に引っかかるなんてね。」


「エレオノーラ!」



 体だけではなく、次第に…意識も朦朧と…して……きた。先生……ごめん…なさい……。



「気を……かり…て!エレ……ーラ!!」

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