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しばらく勇者のターンが続きます。

「いってえ。まだ、腫れが引かない。」



 エルちゃんに敵意を向けさせるためとはいえ、結構ヒドいことを言ってしまった自覚はある。セクハラで訴えられても、文句は言えない。



「フン、バカなヤツだな。レディの扱いがなっちゃいねえ。あんな話をする奴がどこにいる。」


「ここにいるんですが、何か?」


「バーカ。」



 扱いがなってないとか言われても困る。だって、今まで周りに女の人がいなかったから。レンファさんくらいだよ。いや……レンファさんしかいなかった。さすがに梁山泊では女性との接し方なんて教えてはくれなかった。どうするのが正解だったのか?



「まあいいや。恨まれても。元々はあの娘の緊張をほぐすのが目的だったし。なんか見てられなかったからな。遠目に見ても。」


「方法はナンセンスだが、お前にしては気が利くじゃないか。」



 今までエルちゃんとは一緒に戦ったことはあったが、その時は問題なかった。多分、俺とか仲間がいたからだろう。



「それにホントに戦うことになったら本気で戦って欲しいからな。手加減されても嫌だし。」



 今回は狐面がいるとはいえ、個人的な理由で自己責任で戦うことになる。きっとそれ故の怖さを感じていたんだと思う。出会った時から俺達は依存し合っていた。そこから離れるために彼女は前向きになる決心をした。俺も最初は困ったけど、お互いの関係を進める上では必然なんだと思う。



「手加減される?それでもお前の方が圧倒的に強いんじゃないのか?」


「今はな。いずれ俺なんか追い抜いていくだろうさ。あの娘は俺と違って天才だからな。」


「随分とあの娘の才能を買ってるんだな。普通なら嫉妬に狂うところだぞ?」



 ちょっと悔しいのはあるけど、それでも嬉しいのは彼女のことが好きだからだろう。心の底から。



「ただ、俺と特性が違うだけだ。俺はとことん泥臭くやっていくさ。多分、この泥臭さが八刃を極めるのに必要なんだと思う。」


「……?なんだそれは?言ってる意味がわからん。」


「わらなくてもいい。そのうち、見せてやるさ。」



 ここでもう一つ、エルちゃんを見て気になっていたことがある。それは……、



「なあ、なんかペアルックっていいって思わねえ?」


「は?」


「いや、なんかさエルちゃんの服装がさ、いつもの地味なローブじゃなかったから、気になっちゃってさ。しかもペアルックだよ、ペアルック!」



 しかも狐面の服装と似た動きやすそうなヤツになってた。いつの間に作ったんだよ。サヨちゃんに魔法で何とかしてもらったのかもしれんが。



「あの二人は師弟関係だからなんとでも言えるが、ペアルックなんてやめとけ。」


「なんで?」


「そういうのをやりはじめたら、人々はこう言う。……バカップルってな!」


「ば、ばかぁ!?」



 俺の夢を壊すなあ!せっかくいつかはやりたいって思ってたのに。あれやこれやと色々話している内に、クジの順番が回ってきたようだ。行こうとしたら、ファルが遮るように前に出てきた。



「俺が引いてくる。お前に引かせたら侍と当たらなくなるかもしれんからな。自分で引いた結果ならどうなっても納得は出来るからな。」


「お、おう……。」



 俺が引いたらヘンなミラクルが発生するから仕方ない。多分引いたら“優勝”とか書いてある紙が出てきそうだ。ここはおとなしくファルに任せておこう。


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