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動かざる者

「なんだぁ!?しけた面しやがって。不細工な顔が一段と不細工になってやがるぞ。」



 会うなり、何を言い出すのかと思えば、俺の顔をブサイク呼ばわりするとは……、やっぱ、ナシナシ!こんなヤツとは絶対に何があっても組みたくはない。



「誰だ、そのジイさんは?こんなヤツ、お前の仲間にいたか?」


「仲間じゃねえよ!この前から財布代わりにされてんだよ!」


「なんじゃあ?そんな言い方せんでもいいじゃろ。儂らは立派な飲み仲間じゃろう?」


「誰が飲み仲間だ!俺は酒飲んでないんだけど!飲んでるのはアンタだけだろうが!」



 俺はそもそも、酒は苦手な上、酔いやすいので、あまり飲まない。だから、ジジイだけが延々と酒を飲み、くだらない昔語りをするだけだった。それが連日連夜続いたのだ。たまらない。ホントキツい。誰かにこの立場をなすりつけてやりたいぐらいだ。



「随分と仲がよろしいようだな?」


「んなワケあるかあ!」



 ファルは皮肉交じりにケケ、と笑った。笑いやがったな!じゃあ、お前にこのジジイをなすりつけてやろうか?



「そういや、お前はなんでここにいるんだ?出場すんの?」



 いるということはそういうことだろう。それなりの実力者だしな。誰と組むのかは知らないが。ジュリアあたりか?



「同僚の付き合いだ。ジュリアが出るって言うんでな。」



 やっぱそうか!アイツも来てたのか!賞金目当てで出そうな感じはしてた。



「お前と一緒に出るのか?だとしたら、クルセイダーズだらけになっちゃうな?」


「ちげえよ、バーカ!俺はこんな汗くさい大会なんか出ねえよ。アイツはれっきとした相方がいるんだよ。」


「へー。で、その相方って何者?」



 誰と組むんだろうか?まさか、妹分のメイちゃんだったりするんだろうか?そんなワケないよな?あの娘は荒っぽいこと苦手そうだし。



「アイツはフィアンセと組んでいる。」


「なにぃーーーっ!?」



 驚愕の真実!アイツに婚約者なんているのか?あんな粗暴な女(※あくまで彼の感想です。)に結婚相手がいるのか?何者?そいつ何者?物理的に可能なのか?



「そう思うだろ?いるんだよ、世の中には。物好きなヤツがな。その正体は俺らと同じく六光の騎士だ。」


「六光の騎士!?」



 たしか、クルセイダーズを代表する実力者だったよな?ファル、ジュリア、エドもその中に入る。またなんか強そうなヤツが出てきたのか?



「ガンツ・ローディアス。通称、クルセイダーズの盾、“動かざる者”。その名の通り、半端じゃねえタフさの持ち主だ。アイツに膝を付かせたヤツは総長ぐらいしかいねえ。お前も出場するつもりなら覚悟しとけよ。多分、お前の技でも倒せねえかもな。」



 う、動かざる者?なにそれ?一見ネガティブな異名だが、ファルの口ぶりからすると、とてつもない威圧感を感じる。やばそうだ。ただでさえ、宗家とか侍とかエド、ジェイ、槍覇withエルちゃんとかいるのに、未知の強豪まで参加しているとは!ますます大変なことになってきた。

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