ウソだと言ってよ、エルちゃん!
「ウソだろ?笑えない冗談はよしてくれよ、エルちゃん!」
「ウソではありません。私はここに来る前から決めていたんです。」
こうやって彼女と向き合っていても信じられなかった。いや……信じたくなかった。
「彼女の決意は固いぞ。お前が止めようとも、出場するだろう。」
申し合わせたかのように狐面がやってきた。今までどこに行ってたんだろう。急に現れたり、消えたりする。神出鬼没すぎ。
「なんだよ、アンタ!エルちゃんがこんなこと言い出したのも、色々武術の手解きをしたからなんじゃないのか!余計なことすんなよ!」
「彼女自身が希望したことだ。私とて止められるものではないよ。それほど彼女の決意は強い。」
「私、勇者様の役に立ちたいんです。だから、もっと強くなりたい。勇者様に追いつきたいんです。」
「そんなに無理をしなくても……。」
「彼女の気持ちをわかってやれ。彼女はお前のため、そして自分のために強くなりたいと願っているのだ。」
「それでもさあ、エルちゃんに何かあったらと思うと心配なんだよ。」
「彼女を信じてやれ。それが彼女を愛することでもある。お前にはその自覚が足りぬのだ。」
「……。」
信じたい。信じたいけど、何か心がざわつくんだよ。嫌な予感がするというか……、
「人に対して一方的な要求をするなんて、最低だからね!ウチの両親と同じ!ウチんとこは最後に自覚してくれたけど、アンタには出来るのかな、バカ勇者?」
そうだよな。俺はミヤコの両親と同じような事をしてしまっている。その行為が彼女を傷付ける事にもなりかねない。俺はエルちゃんにミヤコと同じ目にあわせようとしているのかもしれない。でも、どこか割り切れない。どうすればいいんだ?
「じゃ、じゃあ、俺と組んで出場しよう。それなら問題ないよね?」
「残念ながらそれは無理だ。彼女は私と組むことになる。」
「ええ。私は先生と一緒に出場します。ごめんなさい、勇者様。出場するなら他の方を当たって下さい。」
「クッ……。」
俺は何も言えなかった。エルちゃんが出場することを止められなかったばかりか、一緒に出場することも拒まれてしまった。これからどうすればいいんだ?




