あ~んなことやそ~んなこと!
ディーゲさんの葬儀は終わった。その間、話したいこと、聞きたいことは色々あったが全てはお預け状態となっていた。ミヤコとディーゲさん親子に悪いし、そのことに比べればどうでもいいことだったし。
「エルちゃん?あの技いつ覚えたの?」
葬儀の後、ミヤコが気持ちの整理をしたいので一人にしておいて欲しいということだったので、酒場で食事をすることになった。ようやく一息付けるようになったところで、あの時感じた疑問をエルちゃんにぶつけてみた!
「えっ…と、それはですね……、」
エルちゃんが狐面から何らかの手解きを受けたことは知っている。あのダンジョン攻略のときから今まで、そんなに時間は経っていない。
「ノウザン・ウェルを出てからたまにヘイフゥさんに会って、稽古を付けて貰っていたんです。」
「へ?あのオッサンいつ来てたの?俺は全く見てなかったんだけど……?」
俺が知る限り一度も来たところを見ていない。俺の見ていないところで何が起きていたのか。
「夜の間……勇者様がお休みしている間に……、」
「な、なにぃ~!?」
俺が寝・て・る・間・に?あのオッサン、俺の知らないところでエルちゃんにあ~んなことやそ~んなことを教えていたっていうのかぁ!ゆるさんぞ、チクショー!……っていうかある意味寝取られてないか、俺?
「あのオッサンと二人っきりだったのかぁ!許しません、断じて、許せませんよぉ!」
「やかましいわ、たわけが!決して二人きりではない。時間と夜という制約がある以上は妾も協力せざるを得なかったのじゃ。」
「三人でしていただとぉ?ますます、許さんぞおぉ!」
「阿呆。」
俺は錯乱している。俺の知らないところで起こっていた事に心をかき乱されていた!
「嫉妬は見苦しいぞ、やめ給え。」
火に油を注ぐかのように、渦中の人物がやってきた。相変わらずお面を被っているのでどんな表情をしているのかわかりゃしない。
「俺の知らないところで何してんだよ、オッサン。」
「おっさん呼びはやめ給え。」
「だってオッサンじゃないか。ミヤコだってオジサンって言ってるだろ?」
「彼女はいい。彼女のおじさん呼びには愛を感じるからだ。お前のおっさん呼びにはそれが微塵も感じられない。」
「違いがワカランのだけど?」
「とにかくやめておき給え。続けると、この先きっと後悔することになる。詳しい理由は言えぬが、お前のためを思って言っているのだよ。」
「えぇ……!?」
何か謎かけのような意味深なことを言っている。なんなんだろう、このオッサンは?
「サヨ殿の協力があったからこそ、エレオノーラは技の習得が可能になったのだ。魔法が偉大な技術であるということを学ばせて貰った。」
「仮想空間じゃ。そなたも以前使ったことがあるじゃろう?同じ事をしただけじゃ。」
「とはいえ、彼女の学習能力には恐れ入った。普通の者ならば数ヶ月かかるところをたった一週間足らずで習得してしまったのだからな。これほどの逸材は滅多におらぬよ。」
「う、うそ~ん!?」
俺はショックだった。俺は数ヶ月どころか数年かかったのに。エルちゃん天才過ぎる。ショックでもあるが、半分くらいは誇らしかった。自分の彼女(※諸説あります)の才能を褒められたことが自分の事のようにも思えたからだ。それだけ自分にとって彼女の存在が大きくなっていることを実感した。




