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剛撃重斬破!!!

「ダメでヤンス!鼻がかわいて力がデナイヨ~~!ゴッツンの効果が切れてきたでヤンスぅ!」



 魔王との戦闘中、それは聞こえてきた。タニシには子猫の相手をさせていた。下手をすればタニシが死ぬ可能性があるにも関わらずだ。解決するには俺が子猫を霽月八刃で呪縛から解き放つしかない。でもそれはできない。魔王がそうさせてくれない。魔王の攻撃を掻い潜り、それを行うにはあまりにも困難だった。



「くそ、このままではマズい!」


「おお?どうした勇者!よそ見してる暇はあるのかぁ?殺っちまうぜ!」



 魔王はタニシへの助けを妨害するかのように猛然と嵐のような攻撃を仕掛けてくる。正直凌ぐだけで精一杯だ。身体能力は今まで相手にしてきたヤツの中でも群を抜いている。



「タイガー・カノン・ボンバー!!!」



 武術的なモノは感じられないが、長年培ってきた戦闘のカンで全てをカバーしている。コイツは無駄に長生きしていない。殺してきた者の数だけ強くなっている。



「ひゃっはぁ!!」



 伸びる腕が急に向きを変えて、横から向かってきた。予測できない動きだ。



「なんで間接じゃないところで腕が曲がるんだ!」



 ギリギリで躱した。対処が遅れていたら死んでいたかもしれない。



「てめえらみたいなただの生物とはワケが違うのさぁ!多少、形を変えるなんてのは朝飯前よ!」



 コイツはまだ本気を出しているような気がしない。チャンスがあればタニシを助けにいけるかもしれないという状況を作っている風に感じる。あえてそうすることで絶望感を演出しているのだろう。



「うう~!もうダメでヤンスぅ!」



 タニシはあちこち血が出ている。子猫の爪を躱しきれなくなっているようだ。もう限界だ。



(すまないムーザ!手を貸してくれ!)



 ここで奥の手を使ってチャンスを作るしかない。ムーザの力は魔王にとって想定外の物のはずだ。



《案外早かったじゃねえか?トドメを刺す……ってワケじゃなさそうだな?》


(ゴメン。色々、計画が狂っちゃったんだ。なんとかしないといけない。)


《まあいいさ。あとは任せな!》



 ムーザに体を明け渡す。すると、急に全身に妙な緊張感が走った。その感覚の直後から体が勝手に動き始めた。金縛りにでもあっているみたいだ。



(ドォン!!)


「な、何ぃ!?」



 ムーザが周囲に闘気を放つ。急に雰囲気が変貌した俺を見て、魔王は怯んだ。



「よぉ!久し振りだな、虎野郎!」


「てめえは!……バカな!?そんなはずはない!」


「俺はァ!……剣豪ぉ!剣豪勇者ムーザ様だぁ!!!」



 ムーザは刀を構えて、技の体勢に入った。尋常じゃないくらいの気合いを込めている!



「剣豪の一撃!……剛撃重斬破!!!」



 ムーザは瞬時に魔王との間合いを詰め、袈裟懸けに一気に切り裂いた。



(ズオァッ!!!)


「ごうああああっ!!!!!」


《おい!チャンスは作ってやったぜ!お前の番だ。》



 そこで体の主導権が俺に戻った。真っ黒な血を吹き出しうめいている魔王を尻目に、俺はタニシと子猫のところへ向かった。



「間に合ってくれ!」



 できる限りの力で走った!技も即時に出せるようにして。



「もぅ、ダメだぁ……。」



 力尽きかけているタニシ。今まさに子猫が襲いかかろうとしている瞬間だった。



「霽月八刃!」



 子猫を支配する黒い気配を一刀で切り裂いた。八刃の衝撃で子猫が軽く吹き飛んだ。



「ニャウッ!?」



 子猫は倒れ、姿が元に戻っていく。間に合った。よかった。



「タニシ!子猫を連れて逃げろ!全力で!」


「はひぃ!」



 タニシは声にならない声を出して、子猫を抱きかかえる。



「魔王の一撃!!」



 その瞬間、俺は背中に邪悪な気配を感じた。背筋が凍った様な感触がする。でも避けることができない。今からでは最小限のダメージにするぐらいしかできない!



「猛虎斬鉄撃!!!」



 体を捻って躱そうとしたが間に合わず、攻撃を食らってしまった!



「ぐああーっ!!!」


「あ、アニキぃ!」



 タニシは悲痛な叫びを上げる。いかん、意識が朦朧としてきた。このまま、ここで倒れるわけには……。

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