剣は何処に?
「剣はどこにあるの!」
神殿で勇者様の支援をするため、ウィザーズ・アイでモニタリングしていた私の元へ、突然誰かがやってきた。でも、聞いたことのある声だったので、すぐに誰なのかはわかった。
「ミヤコちゃん!」
戻ってきてくれた?勇者様には「心配しなくていい」とは言われたものの、放っておけなくなって、来てくれたのかもしれない。
「ねえ、答えて!壊れた勇者の剣がどこかにあるんでしょ!あれが必要なの!」
壊れた剣……あれは返還するために持ってきた物。あの剣自体はもう修理できないはず?壊れた物で何をするんだろう?
「壊れてても、あれがあるんなら何とかなるんだよ!だから、お願い!教えて!」
「直せるんですか?」
「ちがう!壊れてても、あれを使えば新しい剣を作れるんだよ!」
「なんですって!?」
剣を作れる……勇者様が確実に魔王を倒せる!勇者王の剣は壊されたけど、まだ希望はあるんだ!
「剣は多分、宿屋に置いたままになっていると思います。」
「ありがと!探してみる!」
「いえ、こちらこそ、ありがとうがざいます!」
私はミヤコちゃんに深々と礼をした。彼女は彼女で色々問題を抱えている中で協力を申し出てくれたのだから。
「礼なんて言わないで。まだ剣を作り直してないし、勇者に渡さないといけないんだからね!」
彼女は照れくさそうに背を向けて、神殿から飛び出していった。
「ほんとに……ありがとう。」
遠ざかる彼女の背中を見ながら、改めて感謝をした。このことを早く勇者様達に伝えないと……。
《タニシさん聞こえますか?》
彼の耳に取り付けておいた中継用の水晶製の耳飾りに向けて魔力を送信する。
《おうああああ!た、たしけてぇ!?》
悲鳴と共にタニシさんの視界が私の視界にリンクした。何者かからの攻撃を避け続けていることは一瞬でわかった。
《何があったんですか?》
ミヤコちゃんがやってきて中継が途絶えていた間に状況が一変していた。さっきまではタニシさんが善戦していたのに……。
《子猫ちゃんに殺されてしまうかもしれんでヤス!》
《どういうことですか?》
《魔王に操られてるでヤスよぉ!これが、これが、とんでもない強さなんでヤス!》
黒い影が周囲を俊敏に飛び回っているのが見えてきた。速い!私でも目で追いきれない。
(これが子猫ちゃん?信じられない。)
目の前の事実を認めないといけない。タニシさんに危険が迫ってる。なんとか打開策を考えないといけない。
《とにかく、さっきみたいに筋力強化の魔法をかけますから、全力で逃げて下さい!》
《ひょええええ!?それでも無理でヤスよぅ!》
筋力強化の魔法を全力の魔力でタニシさんへかけた。
《無理を承知でお願いします!剣が、勇者の剣が作ってもらえるかもしれないんです!》
《な、な、な、なんですとぉ!?》
そう。勝利への希望が見えてきたので、何としてでも、持ちこたえて欲しい。お願い!
《は、はひぃ!?》
急にタニシさんの呼吸が荒くなった。無理をさせすぎてしまったのかな?どうしよう!
《ダメでヤンス!鼻がかわいて力がデナイヨ~~!ゴッツンの効果が切れてきたでヤンスぅ!》
大変だ!タニシさんの元気の源が切れてしまった。どうしよう!




