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軍師エルちゃん

「策についてなんですが、私も一つ考えてみました。」



 普段は控えめであまり意見を言わないエルちゃんが策を提言してきた。まさかの発言だ。何か名案があるんだろうか?



「勇者様一人で戦いに赴くのはあまりにも不利過ぎます。相手は魔王です。向こうもどんな罠を用意しているかわかりません。」


「そんなことはわかっておる。そなたは何が言いたいのじゃ?」



 余計なことを言うんじゃないよ、サヨちゃん。エルちゃんに変なプレッシャーをかけるんじゃない!



「ある人を勇者様に同伴させます。」


「同伴?何を言っておる。魔王が出した条件に反してしまうではないか。それでは人質はおろか、町もなくなってしまうかもしれんぞ。」


「魔王が出した条件は何のためですか?勇者様を倒すことが目的なのではなく、こちらの戦力を削ぐのが最大の目的なのではないでしょうか?」


「フム、確かにそうかもしれんな。そなたとロアだけならば、彼奴はまだ余裕があったのだろう。ジェイが加勢した途端、方針を変えよったのも事実じゃ。奴も何かしら不安を感じたのかもしれん。」


「私はその点に着目してみました。はじめから戦力外の人を同伴させれば問題ないと思います。あの魔王は力のない人を侮っている様な感じがします。ですから、敢えてそこにつけ込むんです!」


「ほう。なるほど。遙か昔の木馬の逸話を彷彿とさせるのう。」


「ええ。大まかにはその逸話と同じ形を取ります。」



 木馬の話……確かにどこかで聞いたことがあるような気がする。木馬の中に兵士を忍ばせてたっていうアレか。……てことは木馬を用意するの?時間無いよ?



「木馬に相当する者を同行させると言うのじゃな。それは誰じゃ?」


「それは……タニシさんです!」


「ワハッ!?」


「な、なにぃ~!?」



 予想外の人選、想定外の人選だ!タニシなんかで大丈夫か?アイツ自身も寝耳に水だったのか、飛び起きて固まっている。



「ワン公を木馬として使うと言うのか?ドラ猫どもにさえ嘗められる様な奴に務まるのか。」


「だからこそ適役なんです。」


「ガーン、でヤンス!ひ、ヒドいでヤンス!あっしはそんな扱いでヤンスかぁ!」



 ヒドいわ、とか言いながら泣き伏せる仕草をするタニシ。戦闘に関してはホントに誰よりも素人なんだからしょうがない。だから里子に出されたようなもんだ。……とはいえ戦闘経験を積ませるためではないんだろうけど。



「ごめんなさい!タニシさん。でも、あなたにしか出来ないんです。お願いします。」


「エルしゃんにそこまで言われたなら、やらないワケにはいかないでヤンスな!」



 泣き真似をしていた姿から一転、ムクッと起き上がり、いきなりキリッとした態度でやる気を出してきた。チョロいヤツだなコイツ……。

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