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一人でできるもん(一人でするとは言ってない)

「なんじゃ、結局、そなたら二人がかりの説得でも無理だったのか。」


「うん。無理だった。」


「無理に引き留めるのは良くないと判断しました。」



 別に俺は最初から説得するつもりはなかったんだけどな。ミヤコに話しておきたいことがあっただけだ。



「しょうのない奴等じゃのう?特にロア!そなたは当事者であろう?そなたはどうするつもりなのじゃ?勝つ算段などあるわけなかろう。」



 ないかもしれない。でも、実際一人で魔王に立ち向かわないといけない。しかも、向こうには人質がいる。ここで戦ったときよりも不利な戦いを強いられるだろう。



「全くないわけじゃないんだぜ?一応、俺にも切り札的な物はあるから!」


「なんじゃ?申してみよ。」



 俺はなんとなくで言ってみただけで、具体的には考えてはいなかった。即座に聞かれるとは思わなかった。誤算だ。ハッタリで通したかったのに。



「え、えーと……。」


「……。」



 やべえ!みんな、俺に注目してる!何か名案を期待してる。どうしよ!……一人で、一人でなんとかしないといけないから……、俺は一人ではない?あっ……、



「俺は一人じゃないんだ。」


「……は?なんじゃ?それがどうした?」


「俺は一人じゃない…つまり、勇者は俺一人ではないんだ。」


「なんじゃ?まるっきり話が見えてこぬぞ?」


「ほら、この前もダイヤ野郎を倒したときもそうだったんだ。歴代の勇者が力を貸してくれたっていうか……、」



 そうそう!あのときはカレルが歴代の勇者に呼びかけて力を貸してくれた。もしかしたら、似たようなことは出来るかもしれない。



「力を借りるんだよ。一時的に。」


「もし、そうだとしても、そなたが一人であることは変わりないぞ?」


「例えばさあ……俺が急に大魔法なんか使ったら、どうなると思う?」


「出来るのか、そなたに?」


「う~ん、出来るかどうかはさておき、もし俺がそんなことしたら、誰でも驚くじゃん?ってことは魔王もそうなるんじゃない?」


「それが何になるのじゃ?」


「意表を突く!隙を作ることが出来るかもしれないんだよ!……一応、実績はあるんだぜ?前に侍と戦ったとき、俺が魔法を使ったら、動揺してたんだ。」


「まあ、そこまで言うのであれば策としては有効かもしれんな。でもそれだけでは勝てぬであろう?」


「まだあるぜ。それもとっておきのヤツが!」


「なんじゃ?まだあると言うのか?」


「それは……あの虎魔王と直接戦ったことがある勇者の力を借りることだ!」


「なんじゃと!」



 そう、ムーザ・シュラインの力を借りるんだ。まだ、本人のアポは取ってないけど……。

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