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実況見分

「まさか、魔王が本当に現れるなんて……。」 


 

 エルちゃんの死霊術でディーゲさんが死ぬ前の状況を調べていた。その具体的な視覚情報はサヨちゃんを通して俺も見ることになった。その内容は……えげつなかった。最初に見たエルちゃんはあまりのショックに気分を悪くしてしまっている。



「それに直接手を下したのは娘さん……いや、剣の巫女だっていうのか?」


「間違いない。親である本人が見間違うわけがなかろう。これは紛れもない真実じゃ。」


「だとしても、私は信じられません。こんな悲しいことが起きるなんて……。」



 行方不明になっていた巫女が父親の前に急に姿を現し、殺害をした。しかも、魔王と結託しているなんて……。



「何があったら、魔王と仲間になるなんて事ができるんだよ……。」


「さあな。今となっては本人同士でしかわからないことじゃ。親子間で何らかの愛憎のもつれがあったのじゃろう。とはいえな……、」



 サヨちゃんは歯を食いしばり、手は震えていた。まるで怒りを抑えているかのようだった。父を宿敵に殺された境遇だからかもしれない。サヨちゃんからすれば望まぬ別れとなってしまったんだ。巫女はディーゲさんを恨んでいたのかもしれない。でも、自らの手で父を殺したという事実が許せないんだろう。



「それと剣についてわかったことがある。」


「何?」



 エルちゃんが死霊術で調べている間、サヨちゃんは剣について調べていた。壊された原因を探っていたのだ。



「これは呪いと毒、この二つを闇の力で増幅して使った結果とみた。随分と手の込んだ手法を使っている。準備にも相当な時間が必要なはずじゃ。さすが魔王、悪知恵が働きおるわ。」



 魔王側も前々から剣を狙っていたのか?剣がなければ勇者が弱体化するというのも経験から知っていたのだろう。そう考えるのが妥当だろう。



「とりあえず、剣についてはもう取り返しがつかないことはわかった。あとは魔王とどう戦うかを考えよう。」



 とにかく今できる最大限の事で対処するしかない。無い物は無いんだ。頭を切り替えるしか無い。



「巫女を探すぞ。顔はわかった。魔王と一緒にいる可能性もある。それに、この町から離れていない可能性もある。この親不孝者を何としてでも探し出すのじゃ!」



 巫女とは出来れば普通に会いたかった。父親殺害の疑いを持ったまま会うのは少し気が引ける。でも、犯人じゃない可能性はある。何か引っかかるものを感じる。魔王なら魔法で姿を変えたりして、巫女を犯人に仕立て上げるなんてことくらい考えるんじゃないのか?少しでも別の可能性は考えておきたい。

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