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勇者、行方不明。

「さて、これから君たちをどうするかだな?」


 ヴァルはクルセイダーズの二人を見ながら言った。二人のこれからの処遇について考えていた。あの時、ヴァルの一撃で足元の岩場が崩壊してしまったのだ。多少手加減したとはいえ地盤まで崩壊させてしまったのは誤算だった。


勇者、ロアは洞穴に空いた穴の中に落ちていった。生死は不明だが、あの状態では只ではすまないことは確信していた。よほど幸運でも命はないだろう。いや、あんなことが起きたということこそ勇者の幸運が引き起こしたのかもしれない。


似たようなことは一度目にしたことがあった。先代の勇者を仕留めきれなかった事に似ている。もしかしたら、あの額冠の力かもしれない。どちらにしても、額冠をてにし、解析すればわかることである。今はそれよりも……、


「このままで終わらせない。あなたを放っておけない。」


 言葉とは裏腹にジュリアは立っているのもやっとという風にしかみえなかった。もはや戦闘を続行できる状態ではない。しかも相手が悪い。勇者、竜帝でさえ倒してしまう男である。


「気丈なことだ。ここで始末してしまうには惜しい。ますます気に入ったぞ。」


 ヴァルは二人を称賛した。実力は彼に遠く及ばなくとも、その精神性は高く評価していた。

彼は強い者を純粋に評価する。例え敵対していようと。


「あなたの思い通りにはさせない!」


 よろめきながらも、ジュリアはヴァルの元へ向かっていく。


「待て!ここは一度退避するんだ!」


 ファルが制止する。彼も同様、立っているのが精一杯なようだ。


「退避するだと?そんな体で逃げ切れるとでも思っているのか?」


 ヴァルには二人が逃げ切れるとは思っていなかった。彼から逃げ切ったものなど、ほぼ皆無だった。そう、勇者以外は。


「退避してみせるさ。」


 そう言い、ファルは魔術の準備を行う。


「リープ・ディメンジョン!」


 その瞬間、ジュリアとファルの姿が光に包まれていった。次第に光が二人を覆い隠していく。


「むう!これは!」


 光が消えると同時に二人の姿はその場から消え失せていた。


「転移の魔術か。そんな切り札を残していたとは。しかし、あの状態であんな大魔術を使っては体が持たんだろうな。」


 ヴァルはため息を付いた。勇者だけでなく、彼ら二人も逃してしまった。


「だが、私からは逃げられん。決してな。」


 彼は余裕たっぷりに言った。勝利を確信するかのように、洞穴内には笑い声が木霊した。


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