バケツでがぶ飲み!
(がぶ!がぶ!がぶ!がぶ!)
タニシさんが水を勢いよく飲んでいる。みんなでソード焼きをおいしく頂いた後、食後の飲み物ということで、タニシさんはバケツ一杯の水を出してもらっていた。
(がぶ!がぶ……がふっ!がふ、がふ………ホエエエッ!!)
噎せ込んでる!そんな急いで飲むから……。大丈夫かな?
「ふいーっ!たまんないでヤンスなあ!水はがぶ飲みするのが一番でヤンス!」
「噎せてましたけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫でヤンス!むしろ、噎せるところがクセになるでヤンス。だが、それがいい、というヤツでヤンスよ!」
「エェ……。」
私には理解できないよ。下手したら命に関わるかもしれないのに。
「馬鹿は放っておけ。馬鹿は死んでも治らんもんじゃ。其奴に限った話ではないがのう。」
サヨさんは達観した様子で意見を言った。タニシさんに限った話じゃないって、まさか……、
「男という奴は案外馬鹿で単純なもんじゃ。それは彼奴に関しても例外ではないぞ。」
やっぱり、勇者様のことも含んでいた。勇者様はそんな人じゃありません。絶対に。……タニシさんもそんな人じゃないと思います。
「勇者様はそんな人じゃないと思います!」
「うん?なにもロアのことは言っておらぬぞ?」
サヨさんは意地悪そうな顔をしながら言った。確かに勇者様の名前を名指ししてはいませんけど……。
「それより!勇者様の後を追わなくてもいいんですか?」
サヨさんに止められたけど、勇者様のことが気になってゆっくり休んでいられません。早く追いかけないと!
「放っておけ、と言ったはずじゃが?今はそっとしておいてやれ。男とはそういうもんじゃ。落ち着けば、ケロッとした顔で戻って来るであろう。」
「でも……。」
「構わん。彼奴は明らかに焦っておった。珍しく、勇者であることに徹していたからこそ、ああなったのじゃ。彼奴なりに成長しておる証拠じゃよ。暴走しとるとはいえな。」
勇者様としての使命がそうさせた?確かに今の状態じゃ、うまく戦えないかもしれない。剣がないと本当の力が出せない、とサヨさんが説明してくれたことだ。今、強い敵がやってきたら大変なことになるかもしれない。
「彼奴自身も妙にカンが良いところはあるからのう。もしかしたら、なにか悪い予感がしておるのかもしれぬな。とはいえ、剣はすぐには作れる物ではない。彼奴は放っておいてもそのうち戻って来るであろう。」
すぐには作れない?剣はしっかりした作りの物ほど手間がかかると聞いたことがある。勇者の剣も作るのは大変なんだとは思う。
「それに今は作ることさえ出来んかもしれんのじゃ。」
「それって一体……?」
「ここに来る前に妙な噂を聞いた。それは……、」