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拾ってあげてね!

「おいっちにー、さん、し!ヤンスぅ、さん、し!」



 タニシはヘンな運動をしていた。体を捻ったり、伸ばしたり。不規則な動きが踊りを連想させる。



「何あれ?頭を打っておかしくなったか?」



 自分の技で頭を強打したんだ。おかしくなったと言われても違和感は何もない。



「カワノ家に伝わる健康法だそうです。体をほぐしてリラックスする効果があるそうです。」


「へー。そうなんだ。」



 まあいいや。アクシデントはあったがタニシも十分休憩できたはずだ。そろそろ行くか?



「これでよしと。」



 サヨちゃんは何か一仕事終えたかのような様子だった。縛り上げたドロボウ猫どもに対する処遇を考えていたはずだが……。悪党とはいえ、殺すのは気が引けたため、峰打ち、魔法で眠らせる等、戦闘不能にする程度に留めておいたのだ。



「サヨちゃん、何やってんだよ。……って、なんだこれ?」



 巨大な箱を作って猫どもを閉じ込めているようだった。箱というより小屋とか牢屋みたいな規模だ。手の込んだことに、それぞれの頭部だけが箱から出るような形になっている。しかも、極めつけはなんといっても、「捨て猫です。拾ってあげてね!」なんて文言が箱に書かれている……。



「やりすぎだろ、コレ……。」



「殺さなかっただけでもマシであろう。妾たちに狼藉を働いた者の末路としては妥当じゃろう。」



 ひどいわー。ホントひどいわー。なんでこんなこと思いつくんだよ。殺されるよりも恥ずかしいだろ、コレ。ドSの考えることはわからんわー。



「にゃ?ニャンだこれは?」



 ドロボウ猫の一人が目を覚ました。目が覚めたら、常軌を逸した状況に陥っていたのだ。理解が追いつかないのも無理はない。



「ほう、目を覚ましたようじゃな。」


「ここから出せぇ!じゃねえとブッ殺すぞ!」


「こんな状況でそんなことがよく言えるのう。」



 サヨちゃんはこれ見よがしに手の平に炎を出して見せた。



「なんじゃ?別にこのまま火あぶりにしてやってもいいんじゃぞ?」


「ニャアー!?人殺し!人でなしぃ!」



 もう、どっちが悪なのかわからなくなってきた。やりすぎはよくない。反面教師にしよう。俺も手違いを起こさないように。



「猫さん達は放置でヤンスか?」



 謎の準備運動を終えたタニシがやってきた。



「放置してしばらく反省しといてもらおう。町に着いて、通報しておけば、逮捕してもらえるだろう。」


「ホントに捨て猫でヤンスねえ。あっしに逆らった報いでヤンス!」


「エェ……。」



 お前は自滅してただけじゃないか。まあ、コイツらが出てこなければ自滅する羽目にならなかったのかもしれないが。



「さっさと行こう。こんなところで油を売ってるワケにもいかないしな。」



 とんだ足止めを食らってしまった。早く行きたいのに中々たどり着けない。この後もトラブルが起きなければいいけどな。

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