パンらはぎで歩けないでヤンスよ!
「もう無理でヤンス!」
タニシは情けないことを言い始めた。今まで、事務所で仕事したり、ダンジョンに出かける仕事はしていたので、ある程度体力はある。
「もうふくらはぎがパンパンでヤンス!パンパンのパンパン!パンらはぎで歩けないでヤンスよ!」
「パンパンうるさいな。いい加減にしないと、ケツをパンパンするぞ。」
「パワハラでヤンス!訴えるでヤンス!」
ある程度体力はあっても、ダンジョンと外の世界の広さは違う。圧倒的に違う。そんなタニシが外に出たらこういう結果になったのだ。
「そろそろ、休憩にしてもいいんじゃないでしょうか?」
エルちゃんが休憩を提案する。何年か監禁されていた上に華奢なこの子の方が普通体力はないはずだ。でも闇の力を使って魔力を体力とか身体能力に変換しているらしい。これをサヨちゃんから聞いたときは驚愕した。
「さすが、エルしゃんでヤンス!休憩を要求するでヤンス!」
「え?求刑?おしりパンパンの刑に処す?処すの?」
「ちーがーう、でヤンス!求刑ではなく休憩でヤンス!」
比べる対象が最初からおかしかった?今までこの問題が出てこなかったのも、この勇者パーティメンバーが規格外ばかりだったからなんだろう。俺やエルちゃんは後天的に超人じみた能力を身に付けたし、サヨちゃんは人間ですらない。……まあ、タニシも犬人なんだが……。
「しょうがないのう。休憩するとしよう。」
「や、やったでヤンス!大勝利でヤンス!」
「むう!」
俺は早く先へ進みたかった。やっぱり早く剣を手に入れたい。剣がないと落ち着かない。それが俺を焦らせていた。なんか早く行かないといけない気がするのだ。
「こういうときはお菓子を食べるに限るでヤンス!」
「なんだよ、急に元気になりやがって。」
タニシの荷物はほぼ嗜好品ばっかりだった。お菓子とか、ゴッツンとかチュルチュルとか!中には“冒険猫”グッズとかいうのもあった。前にキャンプ・ファイアー・ミーティングの時に使っていた、兜を被った猫のキャラクターである。どうやら、タニシ本人のオリジナルキャラクターらしい。グッズ自体も本人の手作りであるらしい。
「くはあ!体中に染み渡る味でヤンス!」
なんか、最終的に猫キャラグッズを世界に広めて、稼ごうとしているらしい。本人にセンスがあるかどうかはわからないが、商売で稼ぐ欲があるのはご先祖様譲りなようだ。
「人間の女二人に犬連れとはいいカモだぜ!」
しばらく前から妙な気配がしたので泳がせていたら、このタイミングでようやく姿を現した。
「覚悟しな、あんちゃん。殺されたくなきゃ、有り金、お宝全部置いて行きな!」
どんなヤツラかと思ったら、猫人だった。十人ぐらいいる。旅の途中で襲われるのは初めてだが、まさかそれがドロボウ猫とはねえ……。