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忌まわしき記憶。~破門勧告~

「未だに師範代にもなれぬとは。不適合も甚だしいな。」


 その言葉を前にロアはうなだれていた。その場には宗家――ジン・パイロンを始め、梁山泊の名だたる師範たちが一同に会していた。ロアはその中で宗家の眼前にいた。


「全く、あの男にも困ったことだな?こんな不適合者を梁山泊に止まらせていたのだからな。」


 ロアは自分の不甲斐なさは重々承知していた。弟子入りしてから10年余りたった今でも、師範代にもなっていない。同じ時期に弟子入りした者はもう既に師範代はおろか、師範になっている者までいる。しかも、後から弟子入りしてきた者にまで追い抜かれる始末である。いつまでたっても一人前になれない、弟子のままである。


「師父のことを悪く言わないでください。」


 身から出た錆びとはいえ、自分が慕っている師父のことを悪く言われるのは我慢できなかった。承認しがたい事実だ。


「あやつもお前と同様、不適合者だ。あやつは敗北した。我が梁山泊の名を汚したのだ。」


 彼の師は敗北し、命を落とした。詳細は知らされていないが、死んだのは事実であった。だが、やはり、受け入れがたい事実なのは確かで、何らかの事情があったに違いないとロアは師父を信じていた。


「まあ、あやつの死など今はどうでも良い。あやつが今までお前の様な者を梁山泊に止まらせていたことは、許容しがたい。皆も、同じことを考えておるだろう。」


 その場に同席している師範たちは口々に宗家に対して賛同の言葉を述べる。それに反対するものは皆無なのは明白だった。


「意は決したな。……これより裁定を下す!」


 宗家の一声にその場一同が静まり返る。ロアは絶望した。これから死にも等しい裁定が下されることに。


「明日をもって、お前をこの梁山泊から追放する!異議は認めぬ!」


 覚悟していたとはいえ、実際に他人から言い渡されると、その衝撃は測り知れなかった。全身から力が抜けていく。そして、目からは熱いものが溢れ落ちた。


「不適合者め!」


 周囲の人間から一斉に罵声を浴びせられる。もう何も考えられなかった。思考を全て遮断した。


「おまえは、不適合者だ!!」


 その言葉だけが頭のなかに木霊した。


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