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金剛石の王

「お侍さーん!無事ですかー!」



 転移魔法で侍の行き先までやってきた。今までとは打って変わって、狭苦しいダンジョンではなく、王宮の庭園のような場所に辿り着いた。植物はないものの、噴水とかがあったり絢爛豪華な作りだった。しかも、一面白一色だった。同時に不気味さも感じた。



「パゴア!?何故だ!?この場所には侵入はできぬはず!」


「フフ。来てくれたか。拙者が芝居を打った甲斐があったというものだ。」


「貴様、謀ったな?我が傘下に下るふりをして、そやつらをおびき寄せたというのか!」



 侍は謎の鎧男と対峙していた。鎧?と言っていいのかもわからない。そいつは全身が光り輝く宝石のようなもので覆われていた。まさか、これはダイヤモンド?



「金剛石の王やんけ!」


「伝説の記述と一致しておる。おそらくは本人じゃな。」



 サヨちゃんとおっちゃんは何か知っているようだった。しかも……伝説?アイツはそんなヤツなのか。



「パゴア、パゴア!懐かしい呼び名を聞いたな。だが、ダイヤモンド・ジェネラルあるいはアンドリュー・エクスェルナと呼んで欲しいものだな?」



 えぇ?今なんて言ったの?……もういいや、めんどくさいから、ダイヤーさんでいいや。



「結晶化魔術を極めた、伝説の古代魔術王。まさか、本当にまだ生きておったとはな。突如、歴史から姿を消して以降、いずこかでひっそりと魔術の研究を行っているという噂が残っておる。」


「貴様、神竜族の末裔か?どことなく、あの竜帝にオーラが似ている。」


「父上を知っておるのか?」


「そうか貴様は奴の娘か!知っているも何も、生意気なあの竜に灸を据えてやったこともあるぞ。竜風情では私には遠く及ばぬ。パゴア、パゴア!」


「馬鹿を言うな!父上が貴様等に!」


「よう似ておる。そうやって、彼奴も噛み付いてきおったわ。」


「プロミネンス・バースト!!」



 おいおい!いきなりかよ!これだと侍まで巻き込んでしまうぞ。巨大な火球がダイヤーさんに向かっていく。



「むっ!これは退避せねば!」



 侍はその場を離れた。でも、ダイヤーさんは逃げようともしない。どうするつもりなんだ!サヨちゃん全力の魔法だぞ!



「パゴア、パゴア。この程度、たかがしれておるわ。」



 余裕たっぷりにダイヤーさんは、片手を前に突き出し受け止めるような姿勢を取った。火球は手の平に吸い込まれるように、徐々に小さくなっていった。



「吸収してやがる!」



 ファルちゃんが声を上げた。アイツがサヨちゃんの全力火球を見たのも初めてなんだろうけど、それが無効化されている現実を目にしてしまったんだから仕方ない。上には上がいるというのは本当に残酷だ。



「パゴア、パゴア。うむ、悪くない魔力量だ。良いエネルギー補給になった。さしずめ、ディナーの前の食前酒といったところか。」


「くっ!馬鹿な!こんなことが……。」



 普段、余裕のある振る舞いで俺たちに的確な助言をしてくれるサヨちゃんだが、今は見る影もない。あまりのショックからか、見た面通りの小さい女の子みたいに、弱弱しい表情を見せていた。サヨちゃんをこんな目にあわせるとは……絶対に許さん!

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