第453話 飛躍的増強《クァンタム・ライザー》
「フ、憎き天翼騎士と言ったところか。執拗に俺達を根絶やしにしようとする様はある意味狂気じみているな。」
「ある意味、”ゲウォルダンの獣”の時からの因縁だからな。切っても離せない関係なのさ。奴らは未だに二百年前に殺された神殿騎士達の事を根に持っているんだろうよ。」
ああ知ってる! あの都市伝説でヤンスね! 謎の凶悪コボルトの正体が魔王だったかもしれないってヤツ! 正に犬の魔王なダンチョーが言ってるんなら本当の事なんでヤンしょ。てことは同じ話に出てくる天翼騎士も? どっちも怖いから、ちょっとおそろシッコ案件でヤンスな!
「俺の様に蘇った者達の中で、元天翼騎士がいたことを知っているか?」
「知るわけないだろ。会ってないんだし。」
「そうか、ならば仕方ない。元とはいえ、裏切り者であったようだ。天翼騎士の、聖天使の鎧装の秘密を暴露しようとした男らしいな。」
「ハハ、未だにその情報が表に出ていないって事は失敗したんだな。惜しいな。オレらと手を結べばどうにかなったかもしれないのに。」
「言っておくが、十数年前の話だ。俺達が知る由もない話だよ。ガキの頃の時代だからな。」
「でも、その男に息子はいるらしい。それもこの塔に攻め込んで来た連中の中にいる。そいつとなら協力し合えるんじゃないか? 同じく天翼騎士を敵として見ているのならば。」
ありゃりゃ? なんか陰謀論的な話が出てきてるでヤンスね? あの空を飛べる鎧も本当にあるんでヤンスね? あ、でも飛べる鎧はエピオン君も持ってるでヤンスね? おや? 意外な共通点が? 何か関係があったりして? ましゃか~?
「元天翼騎士であってもハリス様の本命戦士ではないようだがな。元魔王の俺ですらない。俺なんて肉体は与えられず、暗黒幻影がせいぜいだったわけだしな。」
「どうせ大方目星は付いてる。先代の勇者が本命だったりするんだろ?」
「ここを見たから言えることなんだろう? だが半分しか合っていない。ハリス様はもっととんでもない切り札をお持ちなんだ。持っていると言うよりはおびき寄せたらしいが。」
「は? 何それ?」
影の人はアンデッド・モンスターとして復活したんでヤンスね? なんか他の人は体を作ってもらったと? それがここにあった水槽の中身でヤンしゅね。ヤバいテクノロジーでヤンス! でも魔王の切り札の正体がイマイチわかんないでヤンしゅ。勇者カレルよりももっと凄いのって一体?
「おおっと! しゃべりすぎてしまったようだな。続きをしようか。俺も本気を出さないといけないしな。飛躍的増強!!」
(ドンッ!!!!!!!!!)
なんかコッチも平均的なコボルトの体格から外れて巨大化したでヤンしゅう! 影だけの姿でもハッキリわかるくらい筋肉バキバキ、牙もムッキムキな感じに仕上がったでヤンスぅ! ダンチョーも併せて、どっちも”ゲウォルダンの獣”みたいに! モチロン実在のは見たことないけど、本とかの挿絵に似てるって話でヤンスよ。
「どうだ。これでお相子だ。これで心ゆくまで戦えるだろう!」
「お相子……。それはどうだろうな。」
ダンチョーは穏やかに言ったと思ったら、一気に相手の方に飛びかかってたでヤンス! 影の人も激しく応戦してるでヤンしゅ! 激しすぎて部屋の中が更に激しく散らかっていくでヤンス! まるで嵐とか竜巻みたいな災害になってしまってるでヤンしゅう!
(ガッシャーン!!!!! ドガシャーン!!!!!)
「クク! やるじゃないか! ここまで追いついてこれるとは! ファングすら凌いでみせるなんてな!」
「そろそろアレを使ってみろよ! オレはアレじゃないと倒せないと思うぞ!」
「良かろう! アレを解禁してやる!」
影の人はダンチョーから離れて剣を掲げて構えを取ったでヤンス! 飛び回っていた剣が元通り一つの剣に戻って行くでヤンしゅう! 剣が元通りになった途端に剣を水平に構えて、力んでいるようなポーズを取ってるでヤンスよ! なんか大技を出そうとしてる感が強いでヤンス!
「食らえ、魔王の一撃、クァンタム・バスター!!」
「魔王の一撃、ブレイク・ダスト!!!!」
影の人は剣の先から真っ黒いビームを出したでヤンス! 対するダンチョーは棍棒を大きく振り上げながらジャンプしたでヤンしゅ! このままだと振り下ろす前に当たっちゃうでヤンスよ! と思っていたら、爆発が起きて何も見えなくなってしまったヤンしゅう! 埃とか瓦礫が舞い上がって余計に見えないぃぃぃ!
(ドゴァァァァン!!!!!!!!!!)
「クク! やはり影では勝てないな。体があれば勝てていたものを……、」
「体があっても同じだっただろうよ。オレ、まだ完全に本気だしてないもん。」
あああ! 影の人がドンドン消滅していってるでヤンス! てことは勝った、ダンチョーが! 相手の攻撃もろとも叩き潰して勝利したんでヤンスね! しかもまだ本気じゃないって言うくらいの余裕っぷり! これなら羊魔王にも勝てるんじゃ?




