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【総合ページ】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~  作者: Bonzaebon
はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【 第4章 沈黙の魔王と白い巨塔】  第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
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第447話 魔人の切り札、焔帝鬼道術


「へへ、妖術、奇術の類いかよ。こいつぁ、参ったな。」


「これぞ、鬼道術”阿修羅封腕”なり。敵の一部を奪い我が物とする秘術よ。」



 これじゃ、魔術における”血の呪法”とかと同じ禁呪法みたいじゃないか! 倫理観を無視したおぞましい邪法その物だ。古くから俺らの国でもそういう類いの術は存在していると聞いたことがあるが、蚩尤一族がそんな秘術を保持していたなんて思わなかった。武術に限らず、あらゆる戦闘技術を現在に至るまで伝えてきたのかもしれない。



「腕の一本くらいなくなったってなぁ、そんなもん大したもんじゃあないんだぜ!」


「我の様な修復の術を持たぬうぬはどこまで持つのであろう? 所詮、人の子のままに過ぎぬうぬでは限界などとうに見えておるわ!」



 ムーザは左腕を失う前と違わぬ動きを見せながら剣技で鬼を圧倒する。圧倒はしているが、鬼の様子がさっきまでとは大きく異なる。少しパワーダウンの見られたその動きに機敏さが甦ってきているのだ。薄れていた闘気さえ色濃く体に纏わり付いている様が見てとれるようになっている。腕を奪っただけではなく、ムーザの生命力さえ奪った様にさえ見えるのだ。



「腕一つ奪ったぐらいで調子づきやがって! 気の抜けた有り様からよくもまあ、元気になったもんよ!」


「うぬの体は仮初めの体に過ぎぬのであろう? 魔王の誂えた体に眠る闇の気があったからこそ、我の糧となり得たのだ。うぬ自身の身の不幸を呪うのだな。」



 ”奥底に眠る闇の力”というのがゲイリーの事を指しているのであろうことは何となくわかる。俺も箱のオッサンが途中からゲイリーに変貌する様はこの目でハッキリと見た。新たに魂を入れるために作った体は人造人間(ゲイリー)を作るための技術を使っているから、そういう現象が起きたのだ。ムーザが普通の体だったなら、ここまで鬼が回復していなかったのかもしれない。とはいえムーザが勝てばいいのか、と言われるとそういうわけでもないのがなんとも……。



「豪撃、横断爆!!」


「ふぬあっ!」



 絶え間ない連撃の末、ムーザは奥義の一つを繰り出した。鬼の方も来るタイミングは掴んでいたのか、最初に見たときとは違い同時に動き出していた。受動的な防御ではなく能動的な防御行動を取ったのだ!



(ガッ!!)


「くっ!? 読んでやがったのか! しかも奪った俺の腕で防ぎやがったな!」



 ムーザの技を奪った腕で防いでいる! しかも無造作に剣の刃を掴むという形でだ。この事実はあまりにも屈辱的だ。止められただけではなく、もとは自分の腕であった物に、である。これは精神的にもキツいはず。



「一度見た技は我には通用せぬと心得ておくのだな。とは言えど、うぬは間も無く命を落とすことになろうが! 凶獄打破!!」



 鬼は剣を掴みつつ、空いた自分の両の腕で技を繰り出し、ムーザを思い切り吹き飛ばした。狭い間合いからの双掌打。名前は違うが”驚門打破”と見た目が似ている! やっぱり元は同じ流派、技の系統は共通しているのかもしれない。



「た、大したお手前のようで……。」


「うぬもよくやった。一時は我を死の縁に追いやった事は褒めてやろう。だが、うぬも邪法によって蘇った体でなければ、もう少し我に食い下がれたであろうに。これも戦場(いくさば)の無情よな。」


「じゃあ、次で最後にしようや。俺もそろそろ幕引きが近付いて来たようだぜ……。」


「うぬは我が奥義で葬ってやろう。修羅の情けを以てな。」



 ムーザは出血のおかげで息も絶え絶えにも関わらず最後の一手を繰り出そうとしていた。対する鬼もその動きに答え、最大の奥義を繰り出そうとしている。双方の闘気がその場の空気をかき乱し、嵐の前の様相を醸し出していた。



「豪撃……重斬波!!!!」


極凄螺旋獄(きょくせいらせんごく)!!!!」


(ドォォォォォォォン!!!!!!!!!)



 弩弓から打ち出された矢の様にムーザは飛び出す。それを迎え撃つように繰り出された暗黒の破壊球! 二つは壮大にぶつかり、一瞬にして周囲の床を衝撃波で舞い上がらせ、視界を不明瞭にした。上から見ている俺たちのところにもその残骸が吹き飛んでくるほどだった。



「敗けだ。俺の。はは……コタロウとの約束は果たせず仕舞いか……。」


「見事な戦いぶりであった。拳王とやらにも引けをとらぬ強さであったぞ。」



 ムーザが負けた……。最後に無念の言葉を残し絶命した。あの剣豪勇者ですら、あの戦闘狂には敵わなかった。鬼が弱っていたとはいえ、あんな反則じみた術を使ってこなければ勝てたはずなのに……。ムーザもそれを責めたりしなかったから、俺が文句をいう筋合いではないのだろうが……。



「せめてうぬの体を取り込み、宿敵と対峙する際に使ってやろう。」



 鬼はあろうことか、ムーザの亡骸に手を掛け右腕をも奪い取った。再びあの邪法で自分の一部としていた。鬼は4本腕の魔人となったのだ。そのためか力が更に強まったようだ。魔王とは敵対しているとはいえ、また恐るべき驚異が目の前に現れた事を意味していた……。

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