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【総合ページ】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~  作者: Bonzaebon
はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【 第4章 沈黙の魔王と白い巨塔】  第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
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第446話 やはり本調子じゃない?


「不覚であったわ。一時は地に伏す結果となったのだ。この上ない屈辱よ。」



 鬼は蘇った。と言うより死んでなかったのかもしれない。魔族とおんなじで再生能力を持っているから、どこかが欠損とかしたとしても、いつの間にか元通り生えてきているものだ。この前戦ったときに拳が割れていたはずなんだが、逃げる前には綺麗さっぱり元通りになっているのは確認していた。



「へへ、やっぱり魔族と同じじゃないか。奴らもゴキブリみてえにしぶとい連中だ。殺したと思っても蘇ってくる時がある。最悪、アンデッドになってまで縋り付くみたいにしつこく襲ってきやがるんだ。」



 鬼は人間に近いとはいえ、闇の力が使えるだけのエルやエピオンとは違って、負の感情を有効的に使って力を増幅している様なのだ。怒りとか憎しみとか嫉妬、欲望なんかが闇の力と相性が良いらしい。


 ネットリとした悪辣な感情をエネルギー源としているので基本的に魔族はしつこい。体は滅んでも負の感情が残っている限りは死なないのかもしれない。鬼の場合も闘争心とか殺意が残っていたので、”死”をなかったこと扱いにしたのだろう。



「負けるのは恥、死ぬる事は更にあってはならぬ事。それが我が一族の掟なり。いかなる手段を用いても、相手を倒しこの世から抹殺するまでは、倒れることすら許されぬのだ。」


「意地汚くなっても勝ちを取りに行くってか? 大した根性よ。その精神性は認めてやらんでもない。勝ちだけに拘るってのは俺も同じだからよ。」


「口上はこれまでよ。我もうぬに習い、闘法の制限を解くとしよう。」


「俺が剣技を解禁したのと同じようにか? アンタの戦い方に”他”ってあるのかよ?」



 なんだかピンとこない発言だな? いつも全力で手加減なしの戦い方をする鬼がそんなことを言い出すのは不自然に感じた。何か武器の類いでも使うのか? いや、それはあり得ない。梁山泊ですら最高峰とされる拳術を極めたものはその他、武器を用いた武術の使用を禁じ手とすることが多い。「全ての武器に勝るのは自らの体のみ」という心情を持って修練しなければならない、という掟が存在するのだ。


 その源流を名乗る”蚩尤一族”も同じ心構えで取り組んでいるに違いない。その技の誇りがあるからこそ無闇矢鱈に下位互換ともされる技術を使うはずがない。鬼の言っている事は決してハッタリではないのはよくわかる。でも、わからない。梁山泊には存在していない概念、技術が存在している? なにか物凄く嫌な予感がする。ムーザもただでは済まないのではないかと……。



「とくと見よ! 我が一族に伝わる究極の秘術を見せて進ぜよう!」



 宣言とは裏腹に、何の変哲もない構え鬼はでムーザの間合いに飛び込んでいった。特に何の変哲もない突進だったためムーザも通常通りに迎え撃とうとしていた。このままでは間違いなく鬼はあっさりと斬り伏せられてしまうだろう。あと少しでムーザの間合いに入ると思った瞬間……、



(ブワッ!!)


「なっ!? 斬れ……!?」



 斬った! 間違いなく鬼を斬った。でも何も血が出ないどころか、鬼の体はチリチリと黒い靄のように飛散してしまった。幻術? いや、鬼が魔法を使える訳がない! それに間違いなく気配はそこにあった。だが実体が消えてしまったのだ。気配もその場に残ったままだ。



「何処へ消えた?」


「フハハ、不思議であろう? 我は体を変質させたに過ぎぬ。決して消えてはおらぬ。」



 そこで変化が訪れた。ムーザの影からムクムクと立ち上がる黒い塊があった! ムーザの影から人影が現れ、背後から左腕に組み付き肩関節を極めた状態の鬼に姿を変えたのだ! 一時的に黒い靄へと姿を変え、影に擬態して背後へ回っていたのか! これじゃまるで魔法じゃないか!



擒拿脱肩(きんなだつけん)!!」


(バギャッ!!)


「ぐおあっ!!??」



 鬼がムーザの左腕を肩関節ごともぎ取った! 一瞬の出来事だったので、ムーザも逃れる事は出来なかったのだ。関節を極められた時点でもう手遅れだったのだろう。ムーザの肩からはおびただしい血が流れ出し相当な深手となっている。腕をもぎ取った鬼は一旦間合いを離し、もぎ取った腕を掲げ低い声で笑っていた。



「うぬほどの者であっても腕を取られる苦しみは耐えがたい苦痛であろう。」


「やってくれるぜ! 腕をちぎりやがるとは!」


「まだ驚くのは早い。我が一族が誇る秘術の骨頂はこれからよ! これが”焔帝鬼道術”なり!!」



 もぎ取った腕の断面を自身の左肩に押し付け集中を始めた。鬼の全身には闇の闘気が漲り、左肩が徐々に変化していった。押し付けた腕が徐々に鬼の体に癒着していっている! 第二の左腕とも言うべき形でくっついてしまったのだ! こんなのありかよ! 外道って言うのも生やさしく思えるくらいのえげつない行為だった。



「うぬの腕を拝借した。同時にうぬの体の奥底に眠る闇の力を吸収させてもらったぞ。」



 腕をもぎ取っただけでなく、自分の体の一部を奪い取るなんて! 蚩尤一族が秘めているのは武術だけでなく、鬼道術の類いまで極めているとは思わなかった。これはとんでもないことだ。通りで、梁山泊とは相容れないはずだ。こんな外道な力まで躊躇いなく使うような一族とは袂を分かった理由の片鱗が見えたような気がした……。

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