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【総合ページ】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~  作者: Bonzaebon
はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【 第4章 沈黙の魔王と白い巨塔】  第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
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第445話 剣豪勇者の実力


「豪撃、縦烈斬!!!」


(ザザザザザザッ!!!!!!)



 ムーザの苛烈な攻撃が始まった。まるで五月雨みたいに立て続けに繰り出される斬撃! 鬼もこれには堪らず、後方へ下がりながら回避に専念する他ないようだ。盾もなく武器も持たない格闘専門の鬼からすれば厄介なことこの上ない攻撃のはず。



「むうう!」


「どうした、鬼さんよ? 避ける一方じゃないか? 底力を見せてみろよ!」



 武器がないから防戦一方、これは普通に実力が拮抗していれば自然とそういう流れになってしまう。誰が言ったかは知らないが素手格闘術で武器を持つ者を相手取る場合、3倍以上の段位相当の実力がなければ勝てないという話がある。ムーザは鬼を圧倒するほど強いのか、というとそれも違うような気がするのだ。



「豪撃、横断爆!!!」


「むぐぅ!?」



 ムーザが横凪に強烈な斬撃を一閃し、鬼は体勢を崩しつつも回避した。やはり、何かがおかしい。俺は二人の対戦前から鬼の覇気・闘気に陰りがあるのではと疑っている。東洋武術の実力の方が優れているといった贔屓目にみたいとかじゃなく、単純に俺と戦った時よりも弱くなっているような気がするのだ。


 学院に現れたときはエルやレンファさんを同時に相手した上で圧倒していたという話だったし、俺が戦ったときも青龍(ティンロン)と共闘したから勝てたのであって、単身でなら勝つことは出来なかったはずだ。つまり、アイツはもっと強いはずなのだ。本調子ではないように見える。



「そうかい、そうかい。 いつまで経っても腑抜けなまんまなら、ちょいと渇を入れてやらないとなぁ。」


「言いおるわ! うぬの攻撃など……、」


「効かない、当たらないって? じゃあ、当ててやるよ。俺の最大の一撃に耐えたら認めてやるよ!」



 ムーザが宣言して尋常ではないくらいの気迫を漂わせ始めた。鬼を遥かに圧倒するほどの闘気がムーザの体に漲っていく。この技は俺も実際に身を委ねて放ったこともある技……虎の魔王さえも恐れさせたあの技だ!



「豪撃……重斬波!!!!」



 あの重い、空気さえも切り裂いて重厚な斬撃を浴びせる、ムーザの必殺の一撃! 鬼は攻撃を避けることなくまともに斬撃を受けてしまった! いや……ギリギリで衝撃波を左右から拳で挟み、その身で受け止めているのだ! 渾身の闘気を拳に集中させ踏み止まらせている!



「ぬううっ!!」


「受け止めた! やろうと思えば出来るじゃないか! それぐらいはしてもらわないとな! そのまま押さえ込んでみろ!」



 相手であるムーザでさえ、鬼の奮闘ぶりを更に鼓舞しようとしていた。このまま鬼が耐えきれなければ、戦いは終了してしまうからだろう。ムーザはただ勝ちたいのではなく、相手と心行くまで戦いと思っているのだろう。


 せめて全力の一撃くらいは凌いで欲しいと願っているのかもしれない。だが、その願いは届きそうにない。鬼の体勢が徐々に苦しげな物に変化しているからだ。いつ瓦解してもおかしくない状況になってきた!



「ふぬ……うぐはっ!!??」


(ズシャァァァァッ!!!!)



 鬼が体勢を崩した、その瞬間、血飛沫が周囲に飛び散った! 鬼がムーザの技を押さえきれずに力尽きたのだ! 鬼の胸には縦一文字を作る程の切り傷が出来、そこから噴水のように血を吹き出させていた。そのまま、鬼は倒れ地に伏し動かなくなった。



「オイオイ! 期待させといて、それかよ! 何が鬼だ! こんなもの、ただの人間風情と何も変わらないじゃないかよ!!」



 ムーザは失望の声を上げた。剣技を解禁し全力で立ち向かったのに、相手はそれに耐えきれず、瞬く間に地に伏してしまった。ムーザからすれば期待を裏切られたようなものだろう。強敵感を漂わせていたのに、呆気なく倒れた。そう、あまりにも呆気なさ過ぎるんだ。



「鬼か……。その風貌から、コタロウ以上の好敵手と巡り会えたと思ったもんだが、期待外れもいいとこだぜ。だが、それもやむ無し。戦いの勝敗は時の運も絡む。勝ち運から見放されちまったんだろうよ、こいつは。」



 ムーザは鬼を見限り、その場を去ろうとした。次の相手は決まっているからだ。彼の好敵手が負けるはずはないと確信した上で、その男の元へと向かおうとしている。はじめから鬼は眼中にはなかったのかもしれない。ちょっと興味を引かれた程度の相手ってだけで、侍以外とは戦うつもりもなかったのだろう。


(ズル……。 )


「……?」



 なんだ? 今、鬼が動いたような? ムーザもその気配に気付き、足を止めた。鬼に背を向けているが鬼の様子を探って警戒しているのがわかる。ムーザからしたら、あの傷で鬼は絶命したものと考えていたはずなのだ。ヤツは魔族とは違い、コアやシードを持たない。鬼とはいえ普通の人間の様に心臓で生きているからには、多量の出血は命に関わる事態のはずなのだ。



「我、死中に活を見出だしたり……。」


「なんだよ? 生きてたのか? とはいえ、息も絶え絶えみたいだがな? まだ何か、出来るってことだよな?」



 よろよろ、むくりといった調子で鬼はまるで幽鬼の様に立ち上がってきた。まるで操り人形のように糸に引かれるかの様な有り様でもある。弱まってはいるが暗黒の闘気が体から禍々しく立ち上ぼり、絶命した事を否定しているかに見えた……。

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