第418話 流派に対する侮辱では?
「○貞のクセにいきがるなよ? お前なんかが俺たちに敵うと思うな!」
「うっさいわぁ! スキルが上がって強くなった様をとくと見るがよい!」
デート実現の真偽は定かではないが、あんだけ若が強気になっているのは中々なもんだ。見下していたあの男に負け、鬼にもこっぴどくやられ死の恐怖を味わい、覇気のなくなっていた様子から大分回復しているのだ。神隠しにあっているうちに間違いなくイイコトがあったのだろう。さて、この調子がいつまで続くのやら?
「お前らみたいなゴリラは切り刻んで鱠にしてくれる!!」
筋肉ヤロウに変貌する前の連中はなんとか若でも多勢に無勢ながら通用していたと思う。しかし、なんだろう? このゴリラ共には何かイヤな気配がプンプン漂っている。ただの筋肉バカではないと思わせる何かがある。
「お前みたいな○貞はゴリゴリにバキバキにしごき倒して、筋肉しか取り柄のない眼鏡に仕立て直してやる!!」
筋肉ヤロウ共の額にはそれぞれ”108”という数字が刻まれている。あれは”黥(※古代中国の額に入れ墨を入れる刑罰のこと)”か? こちらで使われる数字のようだが、”108”だと? そりゃ流派梁山泊にとっては特別な数字じゃないか……。
「戦技一❍八計が一つ、落葉割旋!!」
(シュン!!)
早くも若お得意の俊足の一撃が飛び出した。意気込む気迫は紛れもなく本物で、いつにも増してキレがいい。相手は反応出来るとは思えな……いや、あれは残像だ! あの巨体で若の攻撃を読んでやがったのか!
「”爆”隙の刃!!」
(ドゴァァァァン!!!!!)
「うわあああっ!!??」
若の側面に回り込んだ上で空隙の刃! そして本来は起きないはずの謎の爆発が発生している! しかも槍であの技を再現しているのだ。闘気を技の炸裂の瞬間に放出しているんだろうが、大した威力だ。
「な、なんだ? 今の爆発は!?」
「○貞のクセに避けたか? 当たれば死んでたはずなのによ!」
「しかもなんだあの技は! 我が流派の紛い物を使いおって! 適当な技の変容など言語道断だ!」
あの筋肉ヤロウは俺らの流派の真似事をした。珍(※Mr.珍のこと)の情報じゃ、あの男は分派として認めてもらったのをいいことに弟子まで取っていたという話だ。そこからどうなったのかは知らんが、魔族とやらに技が流出してしまっているじゃないか! しかもあんな品のないアレンジを施されて上で使われているのだ。これは俺らにとって屈辱的な事実じゃないか!
「これはタイプ108最大の功績! 潜入任務から持ち帰った戦利品! 恐るべき東洋の技の数々をインプットして我が軍で展開・共有可能にしたのである! 断じて盗んだわけではない! 正当に伝授され、我が物としたのであ~る!!」
「おのれ! あの男め! 妖魔の一族に技をまんまと流出させおったな! この責任はいずれ償わせてやる!」
「勇者ロアに報復? その前にこの場でお前は無惨に死ぬのだぁ!」
確かにあの男の仕出かしたことは罪深い。こんな有象無象の輩にまで技を使わせる結果になったのだからな。これは是が非でもこの連中は根絶やしにしなきゃいけないな。いずれ流派のトップにつく、俺が黙っちゃあいないよ?
「若、俺も手伝うわ。気が変わった。」
「フェイ? こんな有象無象はオレだけで十分だろう? そこで見てればいいだろ。」
「そういうわけにはいかんのよ。技の伝統と誇りを傷つけられたとあっちゃあ、俺も黙ってられないんだよ。」
「ご意見番登場ってか? 色男に何が……ぴょえっ!!!!」
言い終わる前に首が胴体から離れ吹っ飛んでいった。臭え息を吐き散らかす輩は速攻で首をはねてやったんだ。もちろん技なんて使うまでもない。ちょいと準備運動と挨拶を兼ねて軽く攻撃をしてやったまでだ。所詮は雑魚。こんな軽い一撃であっけなく死ぬもんだ。
「……は!? ハハ!? なんかいきなり不意打ちはヒドイんじゃねえの?」
「不意打ち? こんなもん不意打ちに入らねえよ。反応できない奴が悪い。」
「コイツ、やベーよ! 反則を正当化してやがるぞ!」
「反則? 馬鹿言ってんじゃないよ。我が流派を侮辱する真似をしたのはお前らだ。先に罪を犯してるんだよ。侮辱は死に値する。」
「無茶苦茶言ってるぞ、コイツ! なんでもいいからコイツをやっちまうぞ!」
流派の侮辱ならびに、俺を怒らせた罪は重い。何人来ようが今の俺の相手にはならないだろう。少しでも本気を出せば、ここの主だって黙っちゃいないだろうよ。そうやって引きずり出した上でその落とし前をキッチリつけさせてやる!
「戦技一0八計が一つ、”烏合列葬!!」
(ザザザザザザザッ!!!!)
「どわっ!?」
「ぴごっ!?」
「ぺごみっ!?」
「ぷじょっ!?」
烏合の衆はさっさとまとめて片付けるのが一番だ。これは戟術を代表する技の一つで瞬間的に連撃を繰り出し一網打尽にする。本来は一対一を想定した技だが、俺ともなれば対複数の技に対応させることが可能だ。これこそが真の”アレンジ”というものだ。本物の戦技一0八計の極意ってものを見せてやろうじゃないか。




