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【総合ページ】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~  作者: Bonzaebon
はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【 第4章 沈黙の魔王と白い巨塔】  第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
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第415話 三つ巴の決闘って事にしませんか?


「ところでお前ら、決着はつけなくていいのかよ? 俺っちは終わったと思ったから乱入したんだよ? 決着つけちゃいなよ!」



 タマネギ頭は俺たちに決着をつけるよう促す。何が決着だ。白々しいにも程がある。俺たちを焚き付けて再び争わせ、漁夫の利を得たり、その間に逃げ出そうっていう魂胆が丸見えだ。ちょっと風向きが悪くなってきたところで逃げ出そうと考えるとは戦士の風上にも置けない奴よ。



「別に。」


「いやいや! ”別に”じゃないでしょお、お犬様? 息を吹き返すも、一度は殺されたんですよぅ? 復讐しなくていいんですかいぃ?」


「別に。」


「あああ!! ”別に”としか言えない機械になってしまっているぅ! バビロフの犬ぅ!!」



 犬の魔王は冷静に無関心であることを明言している。アレはわざとだったんだ。恨んでいなくても不思議じゃあない。それを理解せず、タマネギ頭は自分の都合で俺たちを争わせようとしている。俺たち二人を同時に相手できるほど強くはないのかもしれない。


 そういやバビロフの犬とは、確か犬に食い物を見せたときに条件反射で涎を出す現象の事をいう学術用語じゃなかったか? それに準えて言ってるんだろうが、場違いなことこの上ない。奴が”別に”と言っているのは提案を無視しているから、逆に理性的に敢えてそうしているので真逆の状況だと言える。誠に滑稽な事よ。



「というか、その前に俺っち達ってそれぞれ敵同士じゃない? 三つ巴の三竦み状態じゃない? 三権分立、三国鼎立、天下三分のKですよ?」


「それがどうした?」


「別に、何も思わないけど?」


「あああ!! 空気の読めない方達ぃ!!!」



 互いに争わせるのが無理だと判断した挙げ句、今度三竦みの関係に持っていこうとしている。自分へのヘイトを一点集中にするのを避けるために必死な様子。どうあってもまともに戦うことを避けたいのだろう。



「ああ! じゃあもう、審判やります! レフェリーに転向します! ジョブチェンジしまぁす!!」


「だからどうだって言うんだよ?」


「いや、だから、お二人の戦いを見届ける事にしたんですぅ!」


「見届ける? 参加しないのか?」


「そうでっす! レディー、ファイッ!!! ……ごみゃああっ!!??」


「あ、悪い。手が滑った!」



 挙げ句の果てに審判をやるとか言い出し、試合開始の合図までとる始末。だがそれは却って相手に手を出させる口実を作ったようなもの。犬の魔王はミスを装い、棍棒で左腕を吹き飛ばした。一応手加減はしたようだ。



「ぎょえええっ!! 痛い!! 審判への攻撃は反則です! ピピーッ!!」


「反則? そんなルール聞いてないよ? あっ!」


「ぎょにゃあ!! 痛い!! どさくさに紛れて二度めの攻撃をするなぁ! まだ説明が終わってないでしょうが!!」



 戯言を抜かすタマネギ頭に二度めの攻撃を加え、左腕をも吹き飛ばした犬の魔王。これで奴はもう戦えない。両肩から血を吹き出しつつ、タマネギ頭はじりじりと後ろへ後退していく。だがもう逃げ場はない。すぐ後ろには壁が迫っている。



「度重なる反則行為!! 許しがたい!! こうなればもう、退場を言い渡すしかない!!」


「ああそう。残念だ。じゃあ……、」


(ベキャッ!! メキメキ!!)


「ぎにゃあ!! 何してんの!!」


「いや、ゆっくり休んでもらおうと思って。」


「休ませるためにわざわざ相手の足を砕く奴がどこにいるんだぁ!!」


「ここにいるじゃない。」


「あああ!!!!」



 両腕に続き、両足を砕いた。犬の魔王は横から膝の辺りを強打し、膝の骨を砕いて立てなくしたのだ。これはもう休むしかなくなるよなぁ。足も使えなくなったのだから、逃げるなんて選択肢はなくなった訳だ。



「退場ぉぉぉっ! 退場を言い渡すぅ!!」


「え? まだ用事が残ってるから、やだなぁ。あっ、そうだ。いいこと思い付いた!」


(ベキャッ!!! ゴリッ!!!)


「ごぶぉ!!」


「オレたちが退場できないなら、お前が退場すれば済むじゃんって思ったんだけど、どう?」


「コレ、退場どころか、人生から退場してしまいそうなんだけどぉ!!」


「それでもいいじゃん。はい、サヨナラ。」


(ゴッ!!!)



 鈍い音が辺りに響いた。棍棒は確かに振り下ろされ、タマネギ頭は無様な姿を晒すことになっただろう。でも、おかしい。今の一撃には生々しい破砕音は聞こえなかった。固いもの同士が接触する鈍い音が聞こえただけだった……。



「チッ! 逃げたか。」


「逃げただと? あの状態でか?」


「ホラ、いないだろ? 倒せたんなら、もっと大惨事な光景になってるはず。」



 犬の魔王はゆっくりと棍棒を持ち上げ見せるが、付いているのは血糊だけだった。肉片は全くないのだ。不自然に奴の姿はこの場から消えたということになる。不可解に思っていたら、頭上から何かヒラヒラと小さな紙切れが落ちてきたことに気付いた。それを手に取り確認してみると……、



『間一髪、危機一髪!! 危うく擂り潰されるところですた! 危うく絶命する所だったタイプ108は一旦拠点に戻り体勢を立て直し更なるパワーアップに望むのであった!!』


「なんだこれは? 奴はまだ生きてやがるってことか!」


「どうせ”強制脱出(イジェクト)の魔法でも使ったんだろう。その紙は羊からの挑戦状ってところだろうな。」


「クソッタレ!!」



 逃げたというよりも、羊の魔王が逃がしたということか! 形勢が悪くなったから自ら退場させたのだろう。やられるのを避けたのは、やはりアイツが切り札として用意されていたからなのかもしれない。加えてまだ強くなる余地が残されているという宣言もするとは……。

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