第393話 ※絶対に真似をしてはいけませんよ?
「ボクさ? ボクサー? ボックサー?」
「あぁん? 何意味わからんこと言うとんねん!」
新たな手首、というか宝箱から出てきたコブラをうねらせて戦闘態勢に入ったゲイリー。余程の自信があるのか意味不明な言動を繰り返しながら、オッチャンへと間合いを詰めていく。対するオッチャンは武器を破壊されたばかりだ。今は手に何も持っていない。ゲイリーの攻撃にどうやって対抗するんだろう?
「スネーク・ハンド・アターック!!」
ゲイリーが攻撃の間合いに入り、すぐさま攻撃にかかった。うねらせたコブラを噛みつかせようと予測不可能な軌道でオッチャンを襲う! 対するオッチャンは素手ながら器用に腕で払いのけている。
噛みついてくる直前で横から手ではたき落としている。ていうか俺も見ていてデジャヴ感があると思っていたら、蛇の魔王と戦ったときに似たような蛇の腕と戦った事を思い出した。アレとは違いゲイリーのアレは長さに制限があるようだ。所詮はトラップの一部なので本物の蛇には劣るのかもしれない。
「ケーッ!? 豚のくせによく動く! 蛇が通じないならコイツはどうかな?」
コブラの攻撃を行いながら手持ち無沙汰になっている反対側の腕をオッチャンに対して向けようとしている! あっちは不気味な目玉が付いているだけだったと思うが何が出てくるんだろう? 見ている間に目玉がカッと見開き強烈な閃光を放った! 目玉から光線がオッチャンに向かって伸びていく!
「蛇に気ぃ取らせといて、目玉で石化食らわせたろ、ってか?」
オッチャンは当たる寸前で大きく飛び退き、目から飛び出た光線を回避した。光線は床に当たって、その場を変色させている。オッチャンはアレを石化光線だと言っていたが、床も石作りなので大した変化は起きていない。元々硬質な床が質の悪いボロボロと砕けやすそうな脆い材質に変化した様な感じか?
「へへっへ! うまいこと避けやがったな! 豚のくせによく動く!!」
「何遍も豚とか言うなや! はっ倒すぞ、ワレ!!」
オッチャンも武器なしでよくやってるよ。あんな噛まれたら即死しかねない蛇を素手で払い落とすくらいで切り抜けるなんて、達人が過ぎる。一説では、オッチャンの強さってクルセイダーズの”六光の騎士”並みだとか言われてるらしいからな。
それ以前にメイちゃんのお母さんやファルの師匠と世代的に同じらしいから、かなりのベテランと言うことになるんだよな。大抵の人は引退してる年頃なのにあの強さを維持してるのは凄いよな。
「でも、もう追い詰めたようなもんだろ? こっちはリーチが長い上に飛び道具もある!」
「さよか。こっちも飛び道具みたいなん使わなしゃあないわ。」
とかなんとか考えているうちに新たな武器を……ってアレは武器と呼んでいい物なのか微妙な物体を取り出していた。弓の付いてないボウガンのような物を手に持っている。割とサイズも小さくグリップ後端には細い管が出ており、それが例の四次元袋に繋がっている。何なの、アレは?
「飛び道ぐぅ? なになに? 俺っちにオモチャで勝とうってのかい?」
「ほーん。これがオモチャに見えるんやな? でもオモチャやと思うてたら痛い目見るで? 使われる側も使う側もエラいことになるでぇ?」
なんか今の言い方にゾワっと来る物を感じた。なんか本能的にアレはヤバい物だと俺の勘が伝えてくる。そして、ごくわずかだが空気が漏れるような「シューッ」という小さな音が聞こえる様な気がする。この音にあの武器の恐ろしさの秘密があるのではないかと思った。
「オモチャ持ったまま、蛇に噛まれて死んじまいな!!」
ゲイリーはオッチャンを馬鹿にしながら、何も警戒すらせずに蛇を使って攻撃を始めた。オッチャンは素手の時と同じ要領で蛇の頭を払いのけながら、攻撃のタイミングを計っているようだった。俺の勘が合っているなら、あの武器は至近距離で使わないと効果を発揮しないはずだが……?
(ガギッ!!!)
「ガップリング・ザ・スネーク!! 捕らえた、掴んだ、毒染み込んだ!! もう終わりだ! 掴んだからにはもう離さないぜ!」
「掴んだって、武器に噛みついただけやないかい。まあそれでええんやけどな。これで終わりやさかい。」
(ぷしゅぅっ!! ボンッ!!!!!!)
「ギニャアッ!!!!????」
デカいすかしっ屁みたいな音がした直後、蛇が大きく膨らみ破裂した! それだけじゃない! ゲイリーのヤツの宝箱服全体がはじけ飛んだのだ! まるで爆裂魔法でも使ったかのように見事に全てが吹き飛んでしまったのだ。
これは以前、ファルが大武会で鎧武者を内部崩壊させたのと同じ原理か? 狭い隙間に強力な風を送り込むような感じで風船みたいに破裂させる。あの武器はそういう空気を送り出す道具なんだろう。
「そんな……馬……、」
(ぶしゅううっ!!!!)
「これが空気圧入器や。ホンマは金物とか木工の職人が切り粉を飛ばすときに使う道具なんや。コレを人に向けたらエラいことになるんやで。コレでミミックも一発でコロリやから重宝しとる。」
ゲイリーが装備の破裂したことに気を取られている隙にオッチャンは後ろに回り込み、ケツに例の武器を差し込み空気の注入を行ったようだ。大して音はしなかったものの、ゲイリーは悶絶しながらそのままその場にうつ伏せに倒れ込んだ。終わった。アイツは中から破裂させられたんだろう。ご愁傷様……。




