第３６９話 なんかモッコししてる上に、頭がお花畑になってますよ？
「こんな状況も飲み込めてないというのに、オレは先陣切って戦わねばならんのだ！」
「ハイハイ、そんな愚痴ってる間に手ぇ動かすの！ まだここ外国だからいいけど梁山泊の敷地内だったら、腕立ての千や二千はやらされてるところだよ？ 慈悲深いこのお兄さんに感謝なさい。」
全くけしからん奴め！ 次期当主、梁山泊の跡取りをこんな雑用係を扱うみたいにこき使いやがって！ しかも、罰ゲーム？ どういう見解だ、コラ！ 今まで罰ゲーム的な屈辱を受けてきたというのに、更にひどい目に合わせようとするとは何事か！ だいたいこうなってしまったのはあのクソ犬のせいだ！ クソ犬が悪いのだ！ 顔を思い出しただけでも腹立つわ！
「オレがどれだけの屈辱を受けてきたのか貴様にはわかるまい？ 非モテだ、なんだの言われた挙げ句、サボった疑いをかけられ拷問にかけられたのだぞ！」
「ああそう。それは大変だったね。でも気晴らしにそこのお兄さんたちが胸を貸してくれるって言ってんだから、貸してもらいなよ？」
「……我らは決してそのような事は言っていないのだが……？」
気晴らしだと？ 気晴らしになどなるものか！ なんでこんなどこの馬の骨とも知れぬ輩どもと戦わねばならんのだ！ そこの味方サイドの修道女のお姉さん（※クロエのことです。）がお相手してくれるんならまだしも……。
「おい、今、なんかやましいことでも企んだだろ？」
「な、何を言うか！ そんな嫌らしい事など考えていない！」
「嘘おっしゃい。なんか体の一部がモッコししてるぞ！」
「も、モッコ！？ してない、してない！ そんなわけなどない！」
「じゃあ、さっきそっちのお姉さんのことチラッと見たのはなんで？」
「たまたま、たまたま見ただけだよぉ！」
あらぬ疑いをかけおってからに！ まあ確かにあの人は美人だから……って関係ない！ ちょっと美人を目にしてしまうとつい感情が昂ってしまうのだ。ミヤコちゃんやヘイゼルちゃんでも少し近づいただけでも、そうなるのは確かだ。女性が近づくと紳士としてのスイッチが自動で入るのだから仕方ないのだ！ 決して女性慣れしてないとかそういうのじゃない！ 違うからね！
「たま？ ほらやっぱそうじゃん。いやらしい！ 童○なんだから。」
「まあ。お年頃の少年ってそういうことしか考えてないのかしらねぇ？」
「年頃だから発情期なのかもしれないニャ。」
コラ！ そこの猫！ オレを猫ごときと一緒にするな！ 発情なんかしてないわ！ ちょっと紳士の精神が反応を示しただけである！ 別にやましいことなど考えては……ってお姉さんがなんかオレのこと汚物でも見日のような目で見ている！ 蔑まれてる！ ていうか、ちょっとだけ嬉しいような気がするのは何故なんだろうな……？
「ハイハイ、発情して体の一部だけヒートアップさせてる場合じゃないよ。そこにいるお兄さんたちとヒートアップでもしてなさい。」
「何がヒートアップだ！ 言われなくても戦ったらぁ！！」
（シャキィン、シュポン！！）
「あっ！？」
『！！！？？？』
し、しまったぁ！ あの場所にいたときに変な妖術をくらって武器が花束に変化したままだったのを忘れてたぁ！ あのタヌキもどきのせいでわけのわからんことに！ 戻ってきたら効果が消えてると思ったら、まだそのままだとは！ くそう！ あのタヌキめ！ 今度会ったらタヌキ汁にしてやる！
「あー、あー、とうとう頭がお花畑になってしまったか。これはもう再起不能の廃人確定だな。仕方ない。俺が梁山泊の未来を担ってやるから、安心して療養しなさい。」
「コラぁ！ 人を勝手に廃人指定するなぁ！ 刀がお花畑になっただけで頭はなってないからな！ コレは敵の罠で戦えなくされてしまったからだぁ！！」
「武器が花束だと？ どういう冗談だこれは？」
「この少年、どこか頭がおかしくなっているのでは？ ハリス様の策略の一環であろうか？」
『ザワザワ……。』
なんか敵からも心配されている！ 武器が花束になるなんて事態は聞いたことがない。こんな前代未聞の事態に対処できる方がおかしいのだ！ オレはおかしくなどない！ 決して頭がお花畑になったわけではないのだ！ ヘイゼルちゃんと”でえと”したときはちょっとお花畑になりかけたのは言うまでもないが……。
「でもさぁいくらキャラが薄いからってそれはないわぁ。梁山泊の五覇ともあろうお方がそんな宴会芸で戦いをボイコットするのはいくらなんでもやりすぎでない？ 宗家の爺いも草葉の陰で泣いてると思うよ？」
「コラ！ オレへの非難に紛れて、しれっと父上を殺すな！ まだ生きてるだろうが！ 貴様だってまだ父上に完全勝利できた訳でもないのに偉そうな口を利くなよ！」
「でも実際どうすんの？ そこのお兄さんたちも困ってるし？」
「貴様が戦えば良かろうが！ だが、逃げたととられては梁山泊刀覇の名が泣くわ！ 花であっても斬り伏せてくれる！」
そう如何なる理由があろうと五覇であれば敵に背を向けて逃げる等という真似は出来ぬ！ 不測の事態に対応してこその流派梁山泊である！ 五覇ともなれば武器を選ばずとも戦い抜けることを証明せねばならぬのだ。異国の戦士を目の前にして恥をかくわけににもいかないからな！
