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【総合ページ】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~  作者: Bonzaebon
はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【 第4章 沈黙の魔王と白い巨塔】 第1幕 異界塔士Ro・Ar
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第338話 またとない機会……?


「こうやって二人で静かに歩いていると、中々に情緒のある町並みを堪能できて良いですわね。」


「ハハ、そうだな。馬鹿騒ぎしている連中と離れられて清々したよ!」



 お、オレはたった今、人生で初の佳境を迎えている! いわゆる、年頃の娘との”でえと”というヤツを体験しているのだ! 彼女は二人きりで静かと言っているが、俺の中では鼓動が高鳴りすぎて大太鼓の多重奏の如く鳴り響きまくっている!



「貴方は妹のシャンリンさんと共に異国からやってきたと聞きましたけれど?」


「う、ウム! 我ら兄妹は東の大国からやってきたのである! 西の国々に我ら梁山泊の威信を知らしめるための旅に出たんだ!」



 オレは流派の強さ偉大さを広めるためにはるばるやってきた! 父が受けた雪辱を晴らすため、不当な勝ち方をした輩を倒すためにここまで来た。鬼などという輩に阻まれ、未だ目的は果たせていないが、いずれは調伏するつもりである。オレもまだ成長の途上なのだ!



「まあ。それは勇ましいことですわ。」



 勇ましい? おお、なんと甘美な称賛なことか! 美人な娘に褒められるのはこれほど気分がいいとは思わなかった! なんというかコレは手応えというか、”脈あり”というやつなのか? ムッフフ! オレにも運が回ってきたということか?

(※あくまで彼個人の感想です。)



「オレの父上はとある武術大会で辱めを受けたのだ。不当な勝ち方をして、名声を轟かせた不遜な輩がいる! その男を成敗しにやってきたんだ!」


「それはもしかして、あのニセ勇者のことですの?」


「あ、ああ確か、この国では”勇者”とか名乗っているようだな。実はあの男、我が流派を破門になった落第者でもあるのだ。」


「落第者でしたの? 常々胡散臭いとは思っていましたけれど、そのような前科を持っていましたのね。」



 フム? この娘でさえあの男の事を知っているのか。この国では不当に英雄扱いされ、異常なまでに祭り上げられているようだが、この娘にはヤツから邪悪さを感じ取っているようだ。ヤマ師には独特の胡散臭さが感じられる。それをこの娘は理解しているようである。人を見る目がある!



「ほう。ヤツの事をヤマ師と見抜いているとは、君は中々いい目を持っている。」


「見抜けるのには理由がありますの。あの男が庇っている女がとても邪悪な存在ですので、必然的にそういう事になるのでしてよ。それに加えて貴方のお話を合わせると、とても辻褄が合うのです。」



 女? あの美人の彼女の事を言っているのだろうか? 確かに父上もあの女性の事は特別な力を持っていると話してはいたが? 蚩尤一族と似た力を持っているということで、父上自身が導くとまで言っていた。その目的は果たせていないようだが。



「あの女は悪魔の力、魔族としての力を持っているのですわ。それを勇者とあろうものが匿い、擁護しているのです。神に弓引く、不届きな輩なのです!」


「なんと! アヤツはそのような大罪を犯しているとは! 許しがたき行為だ!」



 なるほど。蚩尤一族と同じ力を持つということはつまり、悪鬼の如き存在だということか? あの美しい見た目に惑わされていたが、そのような存在だったとはな。その怪しい色気に惑わされ、あの男は愚かな行為に手を染めているのだな。



「憎い事にあの女は私の従姉でもあるのです。私の生まれ育った家を焼き払い、その思い出の何もかもを全て奪ったのです!」


「なんだって! 君は生家を焼き払われてしまったというのか!」


「その時に誓いましたの。あの女を生涯かけて追い詰め、この世から滅する事を誓ったのです!」



 こんなに可憐な姿の娘がそのような誓いを秘めていたとは! 復讐か……。まるでこのオレと同じではないか。オレもかつてあの男とその師に屈辱を味合わされ、復讐を誓った。その気持ちはよくわかる。踏みにじられた感情を忘れはしない。その目的を晴らすまで歩みを止めるわけにはいかぬのだ!



「一度は挑んで、破れましたの。その代償として失ったのがこの右腕。あの女の仲間に切り落とされてしまったのです。一生消えない傷跡が出来てしまいましたわ。」


「なんということだ! このように卑劣な行いが出来るのは鬼畜にも劣る!」



 なんと! 右腕が義手になっているのはそのような経緯があったからなのか! 一度見たときからこのような可憐な娘が何故、と思っていたのだが、それが復讐の途上で受けたものであったとは。未だに目的は果たせていない上に大切な体の一部まで失ってしまったのだ。なんと健気なことか。



「このままでは無力だと思った私は母のかつての学友だった方を訪ねて、その師事を仰ぐ事に決めましたの。教団の異端審問会、それが今の私の肩書となった理由ですの。」


「なるほど。神の威光をもって悪鬼を滅する事に尽力することを決めたのか。素晴らしい考えだ。」



 身なりからして宗教関連の組織に属していることは伺い知れた。教団にとっての異端者を糾弾する組織ならば悪鬼の類を滅することにも秀でているだろう。それだけ彼女の決意は固いということだ。なんと尊いことか!



「互いに復讐の思いを胸に秘めたもの同士だ。君とならば共に苦難の道を歩んでいけそうだ!」


「ええ。貴方とならとても気が合いそうですわ。」



 ハハ! なんというか、オレにもとうとう春がやってきたような気がする! 異国まで来て復讐が失敗に終わり、屈辱的な扱いを受け、悪鬼の類を相当する作戦に駆り出された。不当な扱いばかりを受けてきたオレだが、コレなら希望を持って前に進めそうだ!

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