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そして神は間違える。  作者: 相沢 阿吽
9/12

現地調査

 星都の中心地、大通りと面しており巨大な貨物自動車が何度も出入りをしている。星都一の巨大ショッピングモール、スターライト。



 巨大な30万㎡の敷地に3つの建物が建てられている。


 正面には木材を交互にクロスさせて木材の色がアクセントになることで、自然と建造技術を見事に調和させた長時間居ても居心地の良い空間になっており、木材の隙間をガラス張りして日の光が木漏れ日に見えるように細工がしてある。また周囲には様々な樹木が植えられており森林浴を彷彿とさせる自然を楽しめる空間に昇華されている。



 右奥には全長は300mにも及ぶ巨大ビルがある。二棟のビルが左右に立っており、階層が上がるごとに徐々に二棟のビルの中間地点を軸に捻じれ始め、地上150mを超えるとショッピングモール正面からはビル二棟が重なって見える。そして更に階層が上がっていくと二棟のビルが混じりだし一つのビルになる。ビルの屋上には展望台と緊急離着陸場が設置されている。実用とデザインと両立させたビルである。



 左奥には人類の飛躍をイメージして作られ、建物本体は複数の柱で宙に浮いており、地面の上を暴れて跳ねる魚のように上下左右に波打つ曲線美で、所々にステンドグラスを使うことで虹色の鱗を表現し、太陽の位置によって建物内外に煌めく光を乱射する。そして羽ばたく翼のように建物の真上から左右90度に2翼、空高く伸びている。建物自体は3階までの階層しかないものの技術の粋を集めて非現実を感を出し建物自体が芸術作品となっている。



 3つの建物を繋げるプロムナードにはタイルやアスファルトコンクリートなど歩くのが楽しくなるよう舗装が工夫がされている。周囲には大小様々な植物が植えられており道に迷わないように誘導している。3つの建物の中心にはイベント用のセンターステージが造設され、ステージの観客席の後ろには水遊びが出来る大きな噴水広場が設置してある。



 人の流れが多く、自分たちの間に人が通るのを気にもせず口論しながらプロムナードを歩き右奥のビルに入るカップルが1組。

 ミラに連れられてショッピングモールにやってきた。

 任務中では無いため一度解散し、寮で私服に着替えてからやってきたのだがどうやら俺が着ている服装が気に入らないようで潜入するための正装を購入する運びとなった。


「まさかその格好で潜入するつもりじゃないでしょうね?」

 と言うので、

「何か問題ある? 俺の心の一言を表現した素晴らしいTシャツたど思うんだけど……」

 と返答すると呆れるようにため息を返された。こちらは誠意を持って思っていることを言葉にしたのに腑に落ちない。

 因みにTシャツには”俺が正義だ”とプリントされている。これはバークスでオリジナルTシャツの制作サービスに依頼した世界に一枚しかないTシャツなのだ。自宅には他にも正義シリーズを幾つか所蔵している。



 ミラはそんな俺のオリジナルTシャツを指差して、

「ダサいから! それにその服装は目立つ、オークション会場では正装だと決まってるの」

 そこまで馬鹿にされるとこちらにも言葉に熱がこもる。

「そう言うミラはガーリーでお洒落な格好をしてヴィジル6のファッションリーダーのつもりですかぁっ?」

 彼女の服装を下から舐めるように見る。花びらの刺繍が入った白のロングスカートで大人らしさと可愛さを醸し出していて、黒のトップスを着ることでロングの銀髪が一段と映えている。



 前側に垂れた髪の毛を左手で勢いよくかき上げ、腕を組み、重心を左足に移して語りだす。

「私たち隊員は休みも少なく、せっかくの休みさえも緊急収集で呼び出されるなんてザラよ!」

 そして右手を腰に当てて、左腕を伸ばし人差し指を俺の顔を指差して自分の意見を宣言する。

「睡眠不足で肌は荒れるし、化粧だって時短メイクで完璧には出来ない。そんな日々を続けていると身だしなみもおざなりになって、髪型のセットだって出来やしない。だからこそ、時間がある時に労働で失った女子力を溜めておくの、また明日からも戦い続けられるように!!」

 怒涛の勢いで捲くし立てた。



 彼女の言葉に圧倒されてしまった、がこちらも負けじと反撃する。

「……じゃあこのTシャツも俺が当日戦えるように必要なお洒落だから……」

「それはダメ!」

 はっきりと断言されてしまった。

 渋々、当日着る服を正装にすることに了承する。



 しかし時間を元には戻せない。

 後悔先に立たず。

 それからは彼女の着せ替え人形状態になりあらゆる正装の試着を幾度と繰り返すことになる。

 スーツにネクタイ、革靴まで全てが調和するまで何パターン試着をしたか思い出せない。

 結局昼過ぎまで、ざっと4時間ほど衣装合わせに難航したのだ。

 目に付いたやつが安かったのでこれにしようと言ったけど無視された。

 最終的には黒一色に若干ラメが入ったダークスーツで、遠くから見ると光が反射して煌びやかに見えるが近くになると光は姿を消してクールな印象を与える夜空をイメージして作られた大人の一品に落ち着いた。

 ネクタイピンには自分の髪色と同じブルーサファイアがあしらわれている。



 両手を腰に当てて、

「ふぅー、まあこんなもんでしょ。 もうこんな時間だからお昼行こっか」

「え! ちょっと待って、まだ着てるから」



 ミラは後ろ向きで手を振りながら店の出口に向かって行った。

「先に行って席取っておくから」



 急いで店の中央にあるレジに向かい会計を済ませる。

「これ全部下さい」

「全部で235000Diera(ディエラ)になります」

(23万?……は? これ、経費で落ちないよな……)

 顔の表情が曇っていく。

「……います」

「申し訳ございません、上手く聞き取れませんでした。もう一度よろしいでしょうか」

 悪気が無くただ機械的に要求された。

 アンドロイドに聞こえるか聞こえないか……いや、むしろ聞こえないように喋った。

「……買います」

 次も聞こえ無かったら帰ろう。


 聞こえてないことを祈ったがどうやら聞こえていたようで、

「ご購入誠にありがとうございます。身長や体格に合わせて製造されたのち、出荷せれ明日の昼には自宅に届けられると思います」

 にこやかに満面の笑みで感謝を言われた。

「・・・分かりました」

 アンドロイドの明るい笑顔が俺の感情をより凹ませる。



 ショッピングモール内にある食事エリアで、食べる机が中心にあり、お店が周囲にあるフードコートにやってきた。レンガ造りで外観が美しくレトロさを感じさせる老若男女に居心地の良い雰囲気を作っている。

 会計の後ミラと合流し、食事を済ませて一息ついている。

 このフードコートにあるカツカレーが絶品で、幼いころから時々このカツカレーを食べにわざわざ足を運んでいるほどである。今日も変わらずカツカレーが旨かった。


 ミラはと言うとステーキを頼み、綺麗なナイフとフォークの使い方をして完食した。さっきはお洒落をして女子力を溜めるとか何とか言ってたけどステーキは良いのか? もっと女子力を上げる食べ物を食べなくて良いのか? と聞こうとしたが邪推だろうし、聞くのは止めておいた。



 程なくして彼女は突如立ち上がり、

「よしっ行くわよ」

 お腹いっぱいで眠くなってきたので帰って惰眠を貪ろうと考えていたのにこの一言である。

「まだどこか行くの?」

「何って本当の用事はこれからよ」

 ミラはトートバッグを右手で肩越しに引っ掛け、顎で指し示す。

「行くよっ!」

 女子らしさが全く無い彼女の言動に度肝を抜かれてしまったがこのカッコよさが彼女の魅力だろう。男さえも引き付ける男気が彼女にはある。



 用事と言うのはビルを出て右手にある芸術の建物である。

 建物の周辺に近づいてきたので聞いてみた。

「何でここに来たの?」

 彼女は呆れてため息すら出ないようだった。

「……あなた次の任務の事何も知らないのね」

「だって何も情報を受け取ってないからね」

「何でそんなに偉そうなのよ! 情報を持ってないなら欲しいって言わないと誰も助けてくれないよ。あなたは大人の世界にいるの、自覚して!!」

 ぐうの音も出ない。


「……うむ」

「うむじゃない」

 ミラが軽く俺の頭をチョップした。

「……すみません、情報を下さい」

 年を取ろうと若い年齢だろうと謝罪やお願いするのはいつだって恥ずかしい。

「よろしい」

 でも、優しく受け入れてくれると信頼するし、次は自分が助けたいって思う。

 


 彼女から送られたデータを読みと、この建物が奴隷オークションに使われると記載されている。

「え⁉  ここ? こんな人の往来が多いところで堂々とやるつもりなのか!」

 ”木を隠すなら森の中”大作戦にはミラも驚いていたようで、

「そうなのよね……。入場の際には本人確認をするでしょうけど、もしバレたら人混みに逃げる作戦なんだと思うわ」

「なるほど……、なら逃げられないように包囲する必要があるな」

 俺の言葉に同意するようにミラは頷いた。

「そう言うこと! だから今から現地調査を行います」



 まず初めに建物内の調査を実施した。

 大きな横付けの階段は上りと下りで左右に別かれており、5mほど上ると建物の入り口に辿り着く。入り口は大勢の人が出入りできるように最大で3つまで大きなゲートが開くようになっている。


 ゲートを通ってからも左右で入場と退場の進行方向が決まっているようで道の真ん中から左右に人の流れが正反対に別れている。建物内は高級感のある濃い赤の絨毯が敷かれていて壁には今後のイベントのポスターがずらりと並んでいる。

 そのまま道なりに進んでゆくと左に上り階段とエレベーターがあり、まっすぐ行くと現在開催中の美術展に入場できるようだ。美術展には用が無いので階段を二人で上るとそこは劇場への扉が複数あり、それぞれサイズが違う別々の劇場に繋がっているようだ。



「この階を貸し切ってオークション会場にするんだよな」

「ええ、その通りよ。後で視界データをチームで共有するんだから隅々まで見といてよ!」

 そのあとは3階の食事エリアやグッズコーナーまで隅々まで調べ上げた。



 最後に建物周辺の調査である。

 これは逃げられる方向や隠れられる場所などを調べて逃がさないこと、そして自分たちが時間まで潜伏出来る場所の調査である。建物の右と後ろには土地の境界線として草木が生い茂っている。

 大体こんな感じの調査結果となった。

 後はチーム内で共有して本番に臨むのみである。



 オークション当日。夕方の6時なだけあって真っ赤に染まった夕日が空と建物を赤く染め上げ、子供連れの家族たちが帰り支度をしている。

 そんなショッピングモール内に私服の集団が入店して行く。集団はバークスを通してグループ通話で連絡を取り合う。

 ミラは昨日とは違いクールでカッコいい大人の格好をして全隊員に声を掛ける。

〈A班は噴水広場の近くで待機、B班は建物近くの茂みに隠れて待機、C班は私と一緒に1階と3階で一般客を装い潜入、ゼアはオークションに参加してタイミングを見計らって合図を頂戴! それに合わせて隊員が突入します。〉



〈〈〈イエッサー〉〉〉

 全隊員が返事をする。

 ミラは続けて全員を鼓舞する。

〈我々は出来ることはやった、後はやるだけ。さぁ任務開始よ!〉

 外待機の隊員が配置に付き、潜入の準備が整う。


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