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そして神は間違える。  作者: 相沢 阿吽
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薬物の皇帝

 ───地上100メートルを時速50㎞で飛行中。

 エアバイクを初めて乗るがもう何年も乗ってきた気がする。手に馴染む。



「ぼーっと飛行するんじゃなくて周囲を警戒しながら移動するぞ」

「はい」



 隊員専用ヘルメットのおかげで下をくっきりと見渡せる。

 ビルのガラスからの照り返しや視力の補助をしてくれるので大助かりの便利装備だ。



 ワニ先輩の後ろを飛行しながらビルの屋上やビルの隙間まで確認していく。

 今日は晴天で天気が良いからか人の往来が多い。



 ん⁉

 右方向に200m先、ビルの隙間で人が争ってるように見える。

 バイクの進行を止める。

「おい どうした?」

「あそこ見てください」

 気になる場所を指を差して教える。

「ん~ありゃ揉めてんな よしっ向かうぞ」

「はい」

 バイクのアクセルを踏んで加速する。



 どんどん近づいてハッキリと見える。

「あれは男女で言い争ってますね」

「そのようだな 痴話げんかかぁ?」

 男は我慢出来なくなったようで女性の腕を掴んで連れて行こうとしてる。

「急ぎましょう」

「ああ」



 二人でビルまで猛スピードで突っ込む。

 猛スピードで進行した所為かエアバイクの騒音で男が気付き女性をほったらかして逃げ出した。

「俺は男を追いかける お前は女性を保護しろ」

「了解」



 ワニ先輩は左に曲がり俺とはビルを隔てて左右に別れる。

 路地裏で女性がへたり込んでいる。

 エアバイクを降りて近づいていく。

 女性がこちらの顔を見て驚いた反応をした、すると立ち上がって後ろに逃げ始めた。

 暗くて女性の顔が見えない。



「大丈夫ですか? 安心してくださいヴィジル6です。」

 女性を追いかけて肩を掴む。

 女性は向こうを向いたまま返事をした。

「……ありがとうございます~ 私は大丈夫なので失礼しま~す」

 女性はこちらを向こうとせず帽子を深く被って顔を隠した。

 良く見ると見たことのある服装をしている。

「申し訳ありません規則でして事情聴取をさせていただきます」

 笑顔で応答する。



「あ~、事情はさっきの男の人の方が知っていると思いますよ」

「はい、もちろん先ほどの男性にも同僚が事情を聴きに行ってます……」



 更に畳みかける。

「だ か ら」

 掴んでいる女性の肩を回してこちらに体を向ける。

「安心して自白しようね! ロロア」

「い、いや~久しぶりだねゼア!」

「昨日会ったばっかだけど」

「え、あ~うん……そうだね……」

 ばつが悪そうに目を背けるロロア。



「なんであの男と口論してたんだ?」

「えっと、ね 記事のネタのために動いたらこうなっちゃって……」

 ロロアを掴む手に力が入る。

「痛っ! 痛いってゼア」

「ロロア……なぜ俺が怒ってるか分かる?」

「に、逃げようとしたから……かな?」

 とぼけだすロロア。

「真面目な話しをしてるんだけど、ロロアはどんだけ危険なことしてたか分かる?」

「ごめん……これからは気を付けるね」

「もういいよ……」

 たぶん何を言ってもロロアは今後も取材を通じて危険な現場に行くだろう。



「まさかこんなことになるなんて……もっと《《上手くやるつもり》》だったんだけどね」

 小声で呟く。

「何か言った?」

「え……ううん、何も」



「で、何のネタで揉めてたんだ?」

「最近ここら辺で薬物が出回ってるの知ってる?」

「え! ……もちろん知ってる」

「なにその驚きよう、怪しい もしかしてヴィジル6なのに知らなかったとか」

 知ってるも何も現在任務中の案件なのでドンピシャ過ぎて驚いただけだ。

「そんな訳ないだろ、それで薬物とあの男はどんな関係性があるんだ?」

「それは……」



「おい こいつの所持品から薬物らしきものが発見されたぞ」

 ワニ先輩が男を捕まえて帰ってきた。顔がバレないようにフードが付いている服を着ている。

「この男がさっき人と薬物の売買をしているのを見つけたんだけど見つかっちゃって……」

「なるほどな、記者のネタになるはずだ」

「うん」

「まずはこの薬物らしきものを検査しなきゃならん」

「そうですね 検査キットを要請しましょう」



 頭の中で念じる。

〈薬物の検査キットを要請する〉

〈……承認します。現在配達が開始されました。頭上に注意してください〉



「検査キットがすぐ来ます」

「OK」

 するとワニ先輩は路地裏から出て大通りで空を見上げる。

 空気を裂く音が周囲に響き渡る。

 本庁から小型の荷物を配達するための飛行機型のドローンがワニ先輩目掛けて検査キットを降下された。

「よっと!」

 ワニ先輩が受け取る。

 そのままドローンは本庁の方に向かってUターンして帰って行った。



 ワニ先輩は検査キットを開けて

「それじゃあ検査しようかな お前はもう逃げられねえぞ」

 売人の男は落ち込んでいる、観念したようだ。

「じゃあここからは俺たちの仕事だからロロアは帰りなよ」

「えーそんなこと言わないでよ。私の手柄でしょ! それにこんなところ見られるなんてう無いんだから」

「危険な事に会ったばっかだし一般人に見せるようなものじゃない」



「もうー!」

 と言ってロロアはぷんぷんしてる。

「まあいいじゃねえか! 検査したら帰りなよ」

「やったー! ありがとワニ先輩!」

 嬉しそうに感謝を告げるが気に障ったのか急にワニ先輩の顔つきが変わる。



「おい嬢ちゃん、俺にはドリーって立派な名前があるんだ見た目の種名で呼ぶんじゃねえ」

 ドリーさんは掛けているグラサンを親指で持ち上げロロアに顔を近づけて凄む。

「ご、ごめんなさい」

 よほど怖かったのかいつもふざけているロロアが真面目に謝っている。



 へー、先輩の名前はドリーだったのか……確かに何となくドリーっぽい。

 ドリーの名前で納得していると、

「まさかお前も俺の事をそう呼んでたんじゃないだろうな?」

 怖い顔で問い詰めてきた。はいそうです、と言える雰囲気ではない。

「い、いえ、そんなことは。それよりも検査をやりましょう」

 誤魔化すことにした。



 ドリーは目線をゼアから薬物検査キットに移し検査作業を始めた。

「……そうだな、さっさとこいつを月送りにしてやらねえとな!」

「ま、待ってくれ 月送りだけは勘弁して下さいお願いします。どうもすみませんでした」

 売人はうずくまり懇願を始めた。



 勝手な言い分にゼアの握りこぶしに力が入る。

「ムリだ、お前は月送りだ。お前は薬物で何人不幸にした?」

 ゼアは淡々とした口調で売人に次々と言葉を吐き捨てる。

「罪を償え、悪人なら悪人らしく汚く散れ」

「お前はそれを分かった上で悪事を働いたんだろ」

 自分の悪事で周囲にどんな影響が出るか考えない愚か者に反吐が出る。ごめんなさいで許してもらえるんならやったもん勝ちで、悪事を働いた人が有利過ぎるだろ。



「ちょ、ちょっと待ってゼア怖いって!」

 ゼアの売人を見る目が人を見る目ではなかった。

 ロロアに声を掛けてもらって正気に戻る。

「す、すみません取り乱しました」

「いやいいって、こいつがクズなのは本当の事だしな それよりもこれじゃこいつから取り調べが出来ねえぞ?」

 よほど怖かったのか売人は先ほどよりも体が縮こまっている。



 ドリーは検査キットから検査結果を読み始めた。

「おい、こいつは大事になるかも知れねえぞ」

「どういうことですか?」

 ドリーが読んでいた検査結果を俺たちに送ってもらう。



「えーと、検査結果は陽性で薬物の種類は……」

「「アント⁉」」

 ロロアと目を合わせて一緒に叫ぶ。

「って何?」

 ロロアが首を傾げる。俺も知らない。

「ああ、知らないのも無理はないだろう。この薬物は情報統制されてるヤバイ物なんだ」

「ええ!そんなのがあるんですね」

「これは使った人間を薬物の奴隷にする薬物の皇帝と呼ばれているんだ」



 星都全体を巻き込もうとする何者かの策略なのかそれともただの金銭を稼ぐための手段なのかは分からないが星都の治安を守るため絶対に普及を阻止して首謀者を捕まえなければならない。

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