永久 2
ずっと引っ掛かり続けていながら、目を向けることを躊躇い続けて来たようだった。触れることを恐れる余り、本音は今を喪う恐れだった。
「…国のために等という大義で始めた事じゃ無かった。ただ…義務を果たしているだけだったんだ」
「…そして、俺を愛した貴方で無ければなし得ないことだった」
「…それは…」
失いたくない…2度と、喪われる所を見たくない…その一心で…
「未だ足りなければ、ホテルのホールでキスしてあげます!」
「ええっ?!」
「俺は貴方だけで良いんだ。何度も言ったでしょう?!」
ぐいと、握ったままの手を引かれて、如何すれば良いか判らなくなってしまっていた。
「全部捨ててか?!」
「貴方を失っては俺自身の意味が無い」
「言ってくれましたよね?!俺だけで良い、他に何も要らないって。あれは嘘だったと?!」
「俺は、貴方を愛し、貴方に愛されて、この国を未来へと繋ぐことが出来た。生物学的な血の将来はルーラとクリスに託しても良いと思いますけれどね?!」
林を抜けて、ホテルが見える辺りまで来ると、その先には招待客の姿もちらほら見えている。
そう思いながらも、ぐずる私に腹を据えかねて、意を決したアレンに引かれるままで何も出来ずに居た。
自分の逡巡の理由に、疑問が生じたからだった。彼が私を、存在の意義と言う根幹の部分で求めて居るのが判っていながら、何故異を唱え続けて居る?!
「俺にそのつもりが無くとも、未だに…護って遣らなければ成らないと、貴方に思わせている事が元凶なのでしょうね…」
不意に立ち止まり、溜息と共に言うのを聞いて、頭の中で何かがパチンと音を立てて弾けた気がした。
…生きていることさえ彼に負って居ると言うのに…この期に及んで、未だ自分から逃げて居たんだ!!
「判った!!私が馬鹿だった!お前の身を案じる振りで、喪うことを恐れて、逃げているだけだった!!」
見張られた蒼の瞳が、私を見定める為に注がれ、口元が覚悟を示して引き結ばれた。
「…四の五の言っても、次は容赦しません。貴方を浚って逃げますからね」
「うん」
応えると、捕らえた唇に、蕩ける様な愛撫を落としながら叱る。
「覚悟なさい。貴方は俺のものだ」
口づけを交わすと言う意味がしみじみと腑に落ちる。
触れる度毎に、互いが溶けて染み入るようだった。欲でなく、意義でも無く、ただ彼が浸透してくる。
…そのものに酔う…様だ…
夢か…現か…視点が定まらず、2度3度…瞑目して瞬時、揺らいだ躰を受け止められて現が蘇る。
見詰めて指先で頰を辿り、何度も耳を伏せて、命の音を聴いた胸の上に掌を止めた。
…逃げていてはやがて喪う…
ならば…海の蒼を見据えて言う。
「誰にも触れさせるな。誰にも触れるな。お前は私のものだ」
「他に…心を移したら…殺してやる」
息を呑み、冴えを加えた蒼い瞳が、見る間に潤んで煌めいた…
「本望です」
微笑を綻ばせると言う。
「未だ心を疑われているのは不本意ですが?!」
「何処までもキザな奴」
お読み頂き有難うございました!
アウルが本当の自分と向き合う覚悟を決めたお話でしたが、少しずつ変わってゆく彼等の今後を書き続けられたら良いな~なんて思ってます!




