【影】…の正体
「ぐおっ……!!グルルルルルルルゥゥゥ…………!!!」
月明かりに、両の赤い眼球を、更に血走らせ、不死狼男が、唸りながら、涎を垂らして、繋がったばかりの首に、手を当て、言葉を、口にする………。
「俺は、影に、やられねえ……。俺は、影を喰らう。闇も喰らう。ひ弱な人間と、人間どもの影を、喰らう。下等な魔物ともども、その影すらエサに、すぎねえ……。俺に、とっては!!」
よく、しゃべる奴だ…………。
しかし、影…闇を、喰らうとは、どう言うことだ?
「『影』とはぁ……生きる者の、『命』の『力』ぁ……。漏れ出る『世界』の『力=(イコール)【魔力】』を、『世界』自身が、補おうと、 生きる者たちから、『影』を、奪う………。昼も夜も、彷徨い、悠久の時を、経て、【魔瘴気】となり、やがて、『世界』に、吸収されるぅゥゥゥゥ…………」
……………
かなりの知能だ………。
満月と、影、闇、魔瘴気……の影響か………?
しかし、何者かに、操られている可能性が、高い………。
明確な殺意を、剥き出しに、しながらも、尚も、襲わずに、敵に塩を贈るかのような、この世界(……アースラッドと、いうのか………)の理を、説明する始末…………。
明らかに、異変を、感じる…………。
「グルルルゥゥオッ!!!グハーーーーッッッッ!!!!」
一瞬、不死大狼男の、体躯が、更に、大きくなったかと、思うと、消え去った…………。
【風身】
不死大狼男の、巨大な、鋭利な爪の刃が、当たる寸前、身体が、風圧で、吹き飛ばされる………。
しかし、【風身】の術で、森の木々の隙間を、すり抜け、フワリと、地に、降り立つ…………。
【円月輪】
両手の掌より、生み出された、円光…………。
縦横無尽に、不死大狼男の巨軀が、幾重にも、切断され、ボタボタ……と、肉塊が、地面に、落ちる…………。
ジュハァァァァァァ…………。
けたたましい蒸発音とともに、泡を立てながら、尚も、肉塊のひとつひとつが、浄化されまいと、抵抗を、みせ、凄まじい、悪臭を、放ち、もとの身体へ、形成されようとしている…………。
【鬼火】
そう、口に、含んだ、言の葉を、地に触れた指先に、流し、地より繋げられた肉塊は、火を噴き出す…………。
ゴォォォォォォオオオオオオ………………。
燃え盛る炎に、跡形も、無かった……………。
辺り一面、炎の海…………。
「やはり、来ていたか…………」
オレを、追って、轟音を、轟かせながら、闇の中を、走り迫っていた『影』の、正体…………。
一人の少女が、赤い炎の海に、照らし出される……………………。