【風魔(フウマ) 刹那(セツナ)】
「ハァ……ハァ……」
「……ッグ!!…………くはっ!!!」
オレは、何故、走っているのか………?
何故、闇夜の中を、走っているのか………?
分からない…………。
ここは……………?
分からない…………。
何故、こうなったのか…………?
分からない………。
感じるのは、とてつもない、疲労感と、激しい痛み……。
どうやら、ここは、森の中らしい…………。
しかし、何故?
気が付いた時には、倒れていた………。
しかし、ここが、どこだか、分からない…………。
あるのは、足首の、痛み………。
「ッウ………!!」
思わず、しゃがみこむ……。
激しい足首の痛み…………。
ふと、見上げると、月の、輝きが、森の木々の、隙間から、垣間、見える………。
「満月か…………」
そう、つぶやくと、一閃の視線を、感じる………。
負傷した獲物を、狙う捕食者………。
月の光が、黒いウロコに、反射する……。
50メートルは、あろうかという巨大蛇が、蜷局を、巻く…………。
赤い目が、金色に、光る…………。
何かの、動作の、前ぶれ………。
瞬時に、その場を、飛び退く………。
その場所には、土が、焼けただれ、植物が、腐食され、溶けている………。
明らかな、致死性の猛毒…………と、殺意………。
何故か、オレの右手には、ナイフ?のような、短刀が、握られている………。
逃げれば、追って来るだろう………。
闘わなければ……。
死ぬ…。
………
瞬間、視界が、暗くなる………。
暗順応で、暗闇に視界が、慣れ、月の、光の、差していた前方に、巨大蛇が、開口し、目の前まで、迫っている…………。
オレは、何故か、左手に持っていた『何か』を、投げつける…………。
激しい、光が、辺りを昼間のように、照らし………凄まじい、爆音が、暗闇に静まり返った、森の中に、鳴り響く…………。
バッガァァァァンンン!!!!!!
ズォゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッ!!!!!!
強烈な閃光に、一瞬、目を回す巨大蛇………。
ためらわず、右手の、短刀を、持ち替え、背中の大刀を、抜き去る…………。
…………
意図せず、目の前の、巨大蛇が、一刀両断される……………。
「……ッグ!!……ハァ……ハァ……くっ!!!」
痛みは、治まらない………。
しかし、夜の森の中は、魔物の出現率が、昼間に比べ、圧倒的に、多く、高い…………。
夜の闇のせいか…………色濃い影のせいか…………。
………
いや、昼間も何も、今し方、目覚めたばかり…………。
ここが、何処だかも、分からずに、気が付くと、走りながら、闘っていた……………。
意図せずに、放られ、意図せずに、闘っていた……。
今、ここに…………。
「走る必要………は、無い……、か………」
走る必要性に、思い当たる節が、無い………。
気が付くと、走っていたのだが、この、焦燥感は、何処から、来るのか…………?
いや、それは、あった…………。
得体の知れぬ、影が、迫り来る恐怖……。
得体の知れぬ、闇が、迫り来る恐怖………
森の奥から………。
最初に、倒れていた場所から…………。
………………
ここに、来るまでに、
単体の、大狼を、仕留め、
同じく、単体の、巨大百足を、焼き払った………。
……………
後方から、何かの、声がする……………。
……………
「殺す…………殺す…………コロス…………コロスッ!!!!」
月の明かりに、異様な、光景が、照らし出される………。
その、巨大な影………と、異臭…………。
先刻、倒したはずの、大狼が、月の明かりを、背に受けて、巨大化している………。
二階建ての家屋ほどの大きさか…………。
人語を、話し、二本の足で、立っている…………。
切断したはずの、首が、ブクブクと、泡を立て、繋がりかけている…………。
異臭を、放ちながら………。
不死大狼男………。
「満月……か………」
小さく、そう、つぶやいた…。
そして………。
闇夜に白々と円光を放つ月を、見やる…………。
……………
刹那……………。
頭の中に、何かが、響く…………。
『キーーーーーーン………………』
「ッ痛………………!!」
頭の中に………
文字が…………
鳴り響く…………
……………
【風魔 刹那】…………
フウマ…………
セツナ…………