【影の存在】と【世界を喰らう者】
「ようこそ!!我が国、我が世界が 【アースラッド】へ!!君が、シュンタロ君だね?いやぁ、娘から、話は、聞いていたよ!!」
満面の笑みを浮かべるお父様【神王デウス】……。
ズンズン…と、目の前まで、歩み寄り、僕に、手を差し伸べる…。
「よろしくなっ!!」
分厚い手は、熱く、固く、僕の手を握りしめる…。
「痛でっ!!いででっ!!」
軽く、骨折させるであろう握力に、飛び上がる。
「いやぁ、すまん、すまん…。つい…なっ!!」
とても、嬉しそうである。
さっきから、何なんだ?
「君は、【全界の救世主】!!娘が、言うんだから、間違いない!!おーい!!誰か、おらぬかっ!?」
大神殿に、大きな声が、響き渡る…。
パンパン!!っと、大きくも、心地良い音を、両の手の掌で、打ち鳴らす…。
「お呼びでしょうか…?神王様……」
どこからか、音もなく現れた青年。
キリッ!!とした表現そのままに、クールな眼差しを、床に伏せ、お父様に、跪く……。
「おぉ!!精霊王アナスタシオン!!実はな、つい今しがた、【全界の救世主】シュンタロ君が、こちらの世界に、我が愛娘の力によって、来てくれたばかりだったのだよ。労ってやりたいので、持て成してやってくれんか?」
一瞬…チラリと見やる、精霊王アナスタシオンの視線が、僕の心を抉るようで、痛い……。
「畏まりました……。神王様……」
「予てから存じ上げております。あなた様が、シュンタロ様ですね。はじめまして……。精霊王アナスタシオン……と、申します……」
目の前で、跪かれ、恐縮の至りである……。
何処の馬の骨とも知らぬ、むさ苦しい男を、目の前に、黒く際限ない気を、放つ、精霊王アナスタシオン……。
明らかに、場違いな僕、シュンタロ……。
帰りたい……。
そうこうしている内に、各種、精霊たちが、飛び交い、あっ……という間に、宴の準備が、整う……。
そして……。
各種、属性の精霊王たちが、次々と、集まる……。
風の精霊王、ウィンドラ
火の精霊王、ファイガ
水の精霊王、ヴェネトス
木の精霊王、レグノス
金の精霊王、オーリオ
土の精霊王、テラ
………
無の精霊王…、アナスタシオン…
……
「忙しいところ、わざわざ、駆け付けてくれて、ありがとうございます。他の者達は、各処の守りで、手一杯と、聞いています…。今回は、紹介も兼ねて、思念伝達ではなく、直接、集まって頂きました……」
マナさんの挨拶に聴き入る、そうそうたるメンバー。
多分、生身の人間なら、一瞬で、昇天、浄化されてしまっているのではないだろうか?
とてつもない聖なる気。
それを前にして、人間なら、誰もが、その場に、存在することは、不可能なことだろう……。
なぜ、僕ぁ、この場に、いられるんだろ?
「シュンタロさんの、魂の質量は、私の加護により、高まっています。大きく、重く、強く……。そして、そのことにより、私の『力』は、更に、遥か桁違いに、増幅されているのです……」
何気に、こっそりと、僕の耳元で、スラスラスラっと、マナさんが、耳打ちする……。
…………っ!?
って言うか、聞こえてたの!?心の声っ!?
「すみません……。【思念伝達】により、他の方の想いも、読み取れてしまうのです……。申し訳ありません……」
と、ピッと、一瞬で、僕の心の中に、入ってくる……。
マナさんに、ウソつけないな……。
僕の想いも、バレバレ……。
恥ずかしっ!!
………
白い巨大なテーブルの奥に、ズーン……と、神王デウスお父様が、座られ、任せたと言わんばかりに、全幅の信頼をマナさんに寄せ、無言を貫いている間、マナさんが、司会進行役の全てを取り仕切る……。
宴というより、会議………。
僕を、労うとか、言っていたのに………と、想うことは、やめておこう………。
ごめん。
マナさん……。
「皆様、ここに、おられるお方は、【全界の救世主】シュンタロ様に、ございます……。シュンタロ様の【アースラッド】来訪により、現在の状況は、大きく変わってゆくかと、思われます……。」
「しかしながら、未だ解決しえない事も、幾つか、あります……。それは………」
僕ぁ、挨拶しそびれたまま、固まったまま、身動きが、とれなかった………。
頭の中、真っ白………。
けれど、僕が、そう想った瞬間………。
「以前より、追っている、もう一人のマナシス………私の【影の存在】…………【ヴェガ】…………と、【世界を喰らう者】の関係性についてお話します………」
静かに……しかし、語気を強めて話す、マナさんの言葉に、思わず、驚いて、我にかえって、聴き入る僕だった………。