郷…。
「あ…。あったかい…」
僕は、今…。
羅那と、マナさん本体を背負いきれず…。
地面に、うつ伏せ状態で…。
羅那と、マナさん本体にサンドされて…寝そべっている…。
「き…気持ち良い…」
重みよりも…羅那とマナさん…2人分の『ぬくもり』が…。
僕の泥のように疲れきった身体を、癒してくれる…。
「ゆ…夢のようだ…」
夜のロアナールの大森林…。
深い闇…。
さらに…その奥地にある場所。
切り立つ断崖絶壁に掘り込まれた、夜の無人の廃墟群を前に…。
僕は…自身の疲労と、羅那とマナさん本体の『あたたかさ』と『やわらかさ』に癒され…ウトウトと…眠ろうとしていた…。
「ちょっ!!こらぁっ!!起きろ、シュンタロぉ~…っっ!!!!」
遠くの方で…羅那の声が、聴こえる…。
うっすら…目を開けると…。
マナさんの顔が、僕の目の前に…っっっ!!!!!???
「う…。うぅ…ん…」
マナさんが…小さな口唇を尖らせて…ムニュムニュ…させている…。
「しゅ…シュンタロ…さぁ…ん♡」
目を閉じたまま…マナさんが、お口を…「うぅ…」…と、僕の口唇の方へ…のばしている…。
「ふ…ふぉぉ…っっ!!??」
星幽体マナさん…!!!??
マナさん本体の身体に…戻ったの…っっっ!!!!!?????
内心…。
何事が、起こったのか…。
分からないまま…時が、流れて…。
僕の口唇が、マナさんの口唇へと…ムチュ~…♡と、のびてゆく…。
「こっ!!こらぁっっ!!!!2人ともぉ~…っっっ!!!!!!」
羅那が、上体を起こし…僕の背中に乗っかったまま…。
僕とマナさんを…ポカポカ…っ!!…と、たたく。
「てへへ…♡」
…と、マナさんが…笑う…。
か…可愛いぃぃ…っっっっ!!!!!!!!!!!!!
「あら…。羅那は、先に…シュンタロさんの頬に…『…キス…』したじゃない…?」
ふぉぉぉ…っっっ!!!!!!!???
…と、固まる…僕…。
キス…キス…。
ま…。
マナさんが、口吻…『キス』…って…!!!!!!!
「い…。いやぁ~…。あ、あれは…。き、気持ちが…高ぶってだなぁ…。つい…」
羅那が、僕とマナさんを…ポカポカ…たたくのを止め…。
隠すように項垂れ…顔を赤らめている…。
「…ま。良いですよぉ~…」
すまし顔で、ポンポン…と身体をはたきながら…マナさんが、立ち上がる…。
おぉ…っ!!!
【魔力充填】が、ついに完了したのかぁ…っっ!!!!!マナさん…っっっっ!!!!!!!
「それにしても…。ここは、何処ですの…?」
立ち上がり…辺りをキョロキョロ…見渡すマナさん…。
「こ、ここは…。私たち…の『住み家』だった…場所だ…」
羅那も、立ち上がり…。
先ほどとは、雰囲気の違う口調で…言葉を零す…。
まるで…。
ポタリ…と、涙の雫が、一滴…。
零れたようだった…。
「3人とぉもぉ~…。仲良しぃ~…?マナシスもぉ元気にぃ…なったんだぁ~ねぇ~…。…ふぉよぉ~…?泣いてるのぉ…?羅那ちゃぁ~ん…?」
暗闇の中から…。
ピョンコピョンコ…跳ねながら…。
一本足で、近づいて来る…。
炎の魔剣フーコ…。
僕らが、ひと悶着している間に…。
好奇心からか…冷静さからか…。
辺りを散策して来たようだ…。
そういえば…フーコ…が、「羅那のお国へようこそ♡」…とかなんとか、言ってたっけ…。
なんで、分かったんだろ…?
なぜか…ちょっとばかり、フーコ…が、大人びて見えた。
剣なのに…。
マナさんも、先ほどとは打って変わって…。
羅那を、静かに…心配そうに…見つめている。
「ぐっ…。話は…、後だ…。今日は…先に身体を休めよう…」
そう言って…。
羅那は、魔剣フーコを掴み…。
月明かりに…美しい身体を…揺らして。
静かに歩いてゆく…。
断崖絶壁に掘り込まれた無人の『住居群』…。
その中でも、最も大きなものへと、続く道…。
…夜のロアナールの大森林を…遥か下に…。
岩陰に刻まれた…絶壁の階段。
昇る…僕ら3人の足もと…。
月光が、射し込む。
魔剣フーコの炎…が、階段の先…視界の奥の闇を照らす。
静かに揺れる…羅那の背中…。
僕とマナさんは…。
満月を見上げる羅那に…、ついて行った…。