本番!?
「我が名は、【羅那】…。準備は…良いか?お前たち…。逃がさぬぞぇぇ…?」
マナさんに、気を取られていると…。
妖艶の炎を纏い…ユラユラと…揺らめきながら…陽炎のように…長い舌を、ペロリと舌舐めずりさせる…『鬼姫』【羅那】。
「あいあ~い…。女王様ぁぁぁ~…」
気の抜けた返事…。
魔剣フーコの甲高い声…が、何度目かの夜のロアナールの大森林に木霊する…。
地面に突き刺さり、逆さまの魔剣フーコが、またもや僕にウインク。
僕は…、もはや、マナさんの刺すような視線から逃げるように…フーコへと駆け寄り…助けを求める。
そ…そうだ…。
こんなことしてる場合じゃない…。
なのに…。
眼前に迫る…『鬼姫』【羅那】…に、見とれそうになる…。
こんな状況なのに…美しい…と、想う…。
「シュンタロさん…っっ!!!!」
「ふへ…っっ!!!???」
マナさんの声に…思わず…ビクッと、…なる。
ガタガタ…。震えているのは…マナさんの視線と声…のせいじゃない…。
ポタポタ…。額から汗が、滴り落ちるのは…魔剣フーコの炎…のせいじゃない…。
目の前に迫る…『鬼姫』【羅那】…の恐怖のせいで、動けない…っっ!!!!!!
「斬…っっっっ!!!!!!!!」
月光に照らされる…【羅那】…の笑った口角から…漏れ出た言葉…。
刺すような痛みの無意識下で、身をよじらせた僕の…またもや…右腕が、後ろへ飛ぶ。
…と、思いきや。
またしても…僕の肩の傷口から…植物のツルのようなものが、飛び出し、ビュルオオォォ…!!!と、右腕と結びつく…っっ!!!!!
バチィン…っっ!!!!!!!
痛みも無く…僕の肩と右腕が、くっついた…。
グルグルと…腕を回す。
違和感は、ない。
驚きを隠しきれないのは…僕だけじゃなかった…。
「どうなっておる?そなたの身体ぁ…?」
コキキ…と、首の骨を鳴らして…近づいて来る…。
『鬼姫』【羅那】…。
しかし…。
『鬼姫』【羅那】の斬撃が、速すぎる…。
今の僕には…到底…見えなかった…。
「シュンタロさん!!【羅那】の【魔力】の流れを感じとるのです!!今のシュンタロさんなら、分かるはず!!!!」
マナさんの声が、飛ぶ。
そうは言われても…【羅那】の恐怖に打ち勝てない限り…何を、どうしたって…身体が…動かせないんだ…。
「はっ…!!!!!!」
何を、しているんだ僕は…。
マナさんを…。マナさんを…。
守るんだ…っっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
【ヴェガ】の時…あの時みたいに…マナさんの命を…危険にさらしちゃ…いけない…っっっっ!!!!!!!!!!!!!!
まずは…、まずは…、僕が、マナさんの盾になって守らないと…っっっっ!!!!!!!!!!!!!
「守らぁ~…っっ!!!騎士ぉ(夜ぅ)~…っっっっっ!!!!!!!!!!!」
僕は、興奮と心の気づきで…。
気づけば、オヤジギャグを解放…。連呼し…絶叫していた…。
「うおおおおぉぉぉぉぉ…っっっっ!!!!!!!!!!!マナさんをぉ…守るんだぁぁぁぁぁぁぁぁ…っっっっっ!!!!!!!!!」
ドゴオオオオオオォォォォォォン…っっっ!!!!!!!!!!!
『鬼姫』【羅那】が、宙空に舞い、瞬時に巨大な拳の影が、眼前へと迫り、大地へと爆ぜる。
もうもう…と、砂煙が、立ち込める。
「何処に行った…のかぇ…?」
砂煙が、消え去ると…。
僕は…。
僕は…。
マナさん本体を…植物のツルのようなもの…で、包み込み…。
【星幽体マナさん】を、背に守り…。
両の手の平で、魔剣フーコの炎…を、力強く…握りしめていた…。
「シュンタロさん…っっ!!!!」
【星幽体マナさん】の声が、優しさと嬉しさで、満ち溢れている。
「だ…ダ~リン…ん…♡そ…そんな…に…握りしめ…ちゃっ…。イヤ~ぁん♡」
心なしか…魔剣フーコの…しゃべり方が、いつもより滑らかに感じた…。
なんでだろう…。




