【邂逅】
マナさんが、地面に衝突した際に、巻き上げられた粉塵。
もうもうと…立ち込める白い煙に紛れ、次第に夜空へと消えてゆく…。
ガクガクと…身体と眼を、震わせて…失禁?しながら…マナさんを見上げる少女…。
額に…角…が、ある…。
マナさんの…光輝く…気が、消え…いつものマナさんに戻った…。
「貴方は、【鬼族(闇・土属性)】の子ども。その『影』。影でありながら、実体を持つ。誰かの恐怖と支配による洗脳を受け、極限まで本能が、開かれている。自身の死を目前にして…その【呪い】が、外れかけている…」
マナさんによる【神聖浄化魔法】…。
鬼族の子どもの『影』に。
マナさんが、魔法…言の葉…を…ひとつひとつ…投げかける。
…【呪い】というのだろうか…、なぜか、外れてゆくのが、分かる…。
詠唱ごとに、マナさんの身体から…光の粒子が…溢れ…実体のある影…鬼の子…へ吸収される…。
鬼の子の額に【呪印】?と、思われる何かが、浮かび上がり…黒い煙と…紫のような塊…が、夜空へ…この世界へ還ってゆく…。
「貴方は、失われた…もう一人の自分…を探しているのですね…。貴方が…もう一度…自分自身に…出会えますように…。」
マナさんが…手をかざすと…鬼の子の胸に…黒紫の魔方陣のようなものが…浮かび上がり…光輝く。
「【解錠】!!!!」
マナさんが…叫ぶと…。
その魔方陣のようなものに…ヒビが、入り…光の粒子となって…崩壊してゆく…。
「グルアアアァァァァァァァァ…っっ!!!!!!!!!」
鬼の子が、白目をむき…身体を仰け反らせ…、激しく【抵抗】している…。
「やはり、何者か…おそらく…【ヴェガ】が…、施した【呪印】と【呪縛】…が、【解錠】に…伴う【神聖浄化魔法】に…激しく【抵抗】しています…ね…。このまま…だと…【反転】して…【呪い】が…復活…し…て…」
そう言いかけて…。
マナさんは…。
倒れてしまった…。
…グルン…。
浄化されかけていた…鬼の子の…眼が…もとの金色の色彩に…変わる…。
浮かび上った…崩壊寸前の魔方陣が、円盤状に…星型の中心部を…逆回転させ…もとの状態へと戻ってゆく…。
「マナさん…っっ!!!!マナさん…っっっ!!!!!!!!!」
僕…は、必死で、呼びかける…。
まるで、嘘みたいに倒れてしまった…マナさん…。
【世界】…の維持に、力のほとんどを、常に使い果たしている…マナさん…。
僕との…【存在】…【魂の共鳴】…で、飛躍的に…力を増した…マナさん…。
それでも…。
【超巨神土人形】…を一瞬で塵にした…力の放出…反動…その揺り返し…は、大きかった…。
それだけに…。
やはり、僕が、メインになって…先頭に立って…マナさんを…守らなきゃならなかった…。
「ぐおおおおぉぉぉぉっっ!!!!!!!!!マナさん…っっ!!!!!!!マナさん…っっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ピクリとも…動かない…マナさん…。
「グッパァァァァァァァァ…!!!!危なかったぜぇぇぇぇ…。もぉちょっとぉでぇぇ…、浄化されちまうとこだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
鬼の子…。その影。
見た目は、女の子…。
なのに…。
身体が、ブクブク…音を立てて…煙…を、上げている…っっ!!!!!
恐怖の言葉の戦慄が…、空気をつたって震動する…っっっ!!!!!!!!
「マナシ…ス。会いたかった…。お前と…私…2人で…ひとつ…。その身体…魂…貰い受ける…」
マナさんとよく似た…でも、声色の違う声が…立つ。
マナさんとよく似た…影のような…女性。
「【ヴェガ】…っっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その隣…に。
…細身にして…筋骨隆々…流れるような黒髪…黒い影…。
光射す鋭い視線が…矢を放つ…。
僕…?
まったく面識の無い他人なのに…なぜだか…確信が、心臓を貫く…。
「情けない…男…だ…」
もう一人の僕…が、グルグル巻きにされた…僕を…ミノムシを見るような視線で…見下ろしていた…。




