「ごっくん…。」
「ぐおおぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「ぐごごごごご…っっ!!!!!!!」
拝啓。
皆さん…お元気でしょうか…。
お気づきのとおり、先ほどから繰り返しております…。
飲み込めるまで…何度でも…。
これが、人生の…果てしない試練というものでしょうか…。
僕は、仮想宇宙空間を彷徨っております。
かつてない…大好きな人との素敵な未来を想い描いて…。
プロポーズするに相応しい…『男』…になろうと。
無謀な挑戦を繰り広げております。
リバースしては…リトライ。
いいえ…。まだまだ、僕…シュンタロの…生まれ変わり…輪廻回数…には遠く及ばないはずです。
涙目になりながらも、飲み込めないもの…木の精霊王レグノスからもらった木の実…【世界樹の種】…を、走馬燈を横目に…命を懸けて…今…必死で飲み込もうとしています…。
もしも…。飲み込めましたならば…。
僕の…最愛の人…マナシスさん…も認めてくれるはず。
生まれ変わった僕が、…『男』…であることを。
最愛の人…マナシスさん…の…想いに答えて…。
敬具。
「ふぐおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
「ぐもももももももももももも…っっ!!!!!!!!!」
何かが、一瞬…煌めいた。
星の輝き。
僕は…頬に涙を伝わせ、巨大な星が、喉もとを通過するのを感じた。
最愛の人…は、終始…笑顔で、あった。
「ファイトです!!」
森の静寂に混じり…。
遠くから…甘酸っぱい…さくらんぼ…のような黄色い声援が、きこえる。
苦し涙が、嬉し涙に…変わる。
最中。
時折、しょっぱい声が、混じる。
「ファっ…。げぼ…。ファイトぉっ…でっ…すぅ~…ぅ…ひっく…ぅっ」
…と、たどたどしい…カタコトのような…酔いそうな甲高い声が…きこえる。
あぁ…彼女もいたか…。人のように…魂を持つ剣…。
炎の魔剣…フーコ…。
「ごっくん…。」
星が流れた。
それは、まるで、一瞬の出来事。
僕の胃袋へ…ようこそ…。
「おめでとうございます!!」
「お…おめ…おっめ…おめでっとぉ…ござまぁ~…すっ!!」
耳もとから…懐かしい声が、きこえた。
口もとから…ヨダレ…が、流れ出てる…。
ひっく…。
ぴく…。
あぁ…。クルミ…。レグノスの…木の実…。
通過したんだ…。ありがとう…。世界樹の種。
ようこそ…我が…いや…僕の胃袋の中…へ…。
「良かったねぇ~。おめでとう!!」
倒れた僕の目の前で、名も無い花が…笑いかける。
!?
「いや~…。どうなるかと…ヒヤヒヤしたよぉ~…」
!?
あり得ない。
耳を疑う。
マナさん…でもなく、フーコ…でもない。
聴いたことない…声。
まるで…夢の中で…話しかけるように、聴こえて来る…。
「誰…っ!?」
気絶しかけてた僕は、急速に目覚める。
意識も、はっきりしている。
身体が、みなぎる。
大地の生命力…というか…星の生命力…を感じる。
「驚きましたでしょうか…。シュンタロさん。それが、レグノスの木の実…【世界樹の種】の力…です!!」
ふほぉ…っ!!
ぐおぉぉ…っっ!!!!
僕の吐く息が、…呼気とともに…濃く深い霧のような靄を宿らせる。
メキメキ…っ!!
と…、大樹が、その幹を急成長させるかのように…身体中が、急速に若返ってゆく…っっ!!!!
って…通り超して…赤ちゃんになりはしないかい…っ!?
…っていうほどの急速なエネルギー…っっ!!!!!!
僕は…、寝返りを打ち…四つん這いになって…ハイハイをする…。
立ち上がり…。2本の両の足で、大地を踏みしめる…。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…。
地鳴りが、する。
心の効果音かと思ったが…。
どうやら、そうではないらしい…。
「ふおおぉぉぉ…っっ!!!!!!」
僕の身体が、一瞬…スーパーマッチョ…になった。
「ふおおぉぉぉ…っっ!!!!!!」
かと思えば…。急速に縮んでゆく…。
「ふおおぉぉぉ…っっ!!!!!!」
今度は、風船のように膨らみ弾けそうになる。
「ふおおぉぉぉ…っっ!!!!!!」
そうかと、思えば…また、急速に縮んでゆく…。
「ふおおぉぉぉ…っっ!!!!!!」
「がふっ…!!!?」
僕は、再び倒れた。
キラーン…。と、魔剣…フーコ…の刀身が、光る。
「シュ…シュンタ~ロ…ンタロ…み…みっってぇ~…」
僕の隣で添い寝する魔剣…フーコ…。
刀身をウフン♡…と光らせる。
大きな真ん中の一つ目玉をパチクリっ!!ウインク…っっ!!!??
フーコ…の刀身に映る…。
いつかの細い腕。
初々しい…ツルっツルの白い肌。
あどけない…少年の顔。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!!!!!!!!
地鳴りが、する。
胸の鼓動が、押し寄せる。
気がつくと…。
「僕は、15才に、なっていた…っっ!!!!!!!!!!!???」




