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女神マナさん!!ヘタレ勇者に恋オチしました☆彡  作者: すみ いちろ
第一章 ~飛び出せっっ!!!異世界(アースラッド)降臨編 ~
15/59

静かなる波紋…天界と…魔界の門


「聴いた?…ねぇ…聴いた?」



 大神殿【ラーマ】…その内部の深奥…。


 

 マナシスの白い小部屋『祈りの間』より、程なく中央に抜けた中庭。

 

 

 月面のように光輝く泉のほとり


 

 白い大理石の天井が、ゆらゆらと青白い光に揺れる。夜…。


 

 草木も眠りにつく微睡まどろみの時…。


 

 天使たちが、【神王デウス】の目を盗んで、ヒソヒソと、水辺の蝶のように舞う。

 羽根を揺らしながら、光輝く鱗粉りんぷんを残して、真夜中の秘密のつぼみを開かせようとしていた…。


 

 それは──

 

 文字どおり…【デウスの目】と、呼ばれる神器。

 異界とつながる八芒星オクタグラムの陣形をかたどった虹色に光輝く花形の宝石。

 誰もいない、この真夜中に、妖しく光る魔力をこめて天使たちが【ねがいの泉】にその宝石を浮かばせていた…。



「朝までに返せば良い。そうよ…。返せば良いの…。借りるだけ……」



 天使たちが、微笑む。

 それぞれが、それぞれの『ねがい』を口にする…。



「私の勇者様を、連れて来てください…。私の勇者様に会えますように……」



 口々に天使たちが泉に祈りを捧げ、光輝く鏡面世界へと飛び込んでゆく。


 

 シュンタロのいた世界。



 その白い羽根を闇夜に浮かべ、艶やかな裸の曲線が、一枚の衣をまとうようにして溶けてゆく。

 まばゆい光と悦びに満ちて…。



 ──……。



 時を同じくして、とある魔城。



 ギガナの魔大陸。地底湖の奥深く。



 深淵と呼ばれた暗黒の洞窟。そのさらに最奥。闇のみが蠢く禍々しい世界。


 

 【虚無世界ゲヘナ


 

 【アースラッド】の緩やかな時の崩壊。

 漏れ出る魔瘴気の濃い影響を受け、魔界デモンズ(ゲート)が、時折ゆらいでは黒い炎を吐き、時をも呑み込んでいた。



 一柱の少女。魔神が、神界の天使たちのむくろで造られた玉座に、頬杖をついてたたずんでいる。



「ほぉ……。現れたか? 【全界の救世主】が……」



 物憂げな表情カオは、すべての者をとりこにする。見る者を惑わす可憐な溜め息が、ピンクの小さな口唇くちびるから漏れ出る。

 

 『スキル』【天使ラバーズたちの吐息ブレス】。


 

 魔城は、少女──魔神の吐く濃い深い霧で守られている。

 まるで、誰しもが恋に落ちるように深く。



 玉座。

 一柱の魔神として君臨する少女の目の前で、執事──一体の吸血鬼ヴァンパイアが、ひざまずく。

 

 少女の、ヘテロクロミアの瞳。

 左右で瞳の色彩が、違う。

 見下ろした金と銀の色彩が、吸血鬼の心臓──その奥深くを射抜く。

 


「【ヴェガ】は…。何処に、いる?」



「ハッ。申し訳ございません。まだ足跡が、つかめておりません……」



 吸血鬼ヴァンパイアの震える足もとが、悦びに満ちている。

 報告よりも何よりも、ここに呼び出された理由──


 それは、食事。

 目の前の魔神である少女──空腹の女王に捧げる下僕である我が身。

 眼前に迫り来る至福の時を待てず、吸血鬼ヴァンパイアの心中は、魔城の主──目の前の少女で溢れんばかりだった。



「見えているぞ。忠誠心よりも至福か? 今の貴様の中から溢れんばかりではないか。理性の無い奴め。我が下僕しもべ、失格だな? お前は、2度と喰わん……」



 冷たい金と銀のヘテロクロミアの瞳が、突き放す。

 もはや、執事──下僕しもべですら無くなった吸血鬼ヴァンパイア表情カオが、絶望へと変わる。



「ふふ……。良い表情カオをする……。我が忠誠の下僕しもべよ。近う寄れ……」



 スラリとした美しい長身の女性。吸血鬼ヴァンパイア

 その美しい金髪が、悦びで打ち震える胸へと流れ落ちる。

 そのまま、その下を流れる下腹部が、もじもじと、恥じらうようにして両の手のひらで覆い隠されていた。


 

「分かっているぞ。私に改めて誓え。何ものよりも貴様の全てが、私の手の中に納められていると。自身を知り、私を知るのだ……」



 少女の可憐な腕が、瞳が、金髪の美しい吸血鬼ヴァンパイアの肢体を──瞳を、抱きよせる。



 透きとおるような白い肌。

 首筋に血が滴り落ちる

 いや……。それと同時に白金プラチナの尊い牙が、赤黒い血液の色に染まる…。



「あぁ…」



 朦朧もうろうとした頭の中に少女の思考が流れ込む。



 「お前は、私の全てだ……」



 「はい……」



 身も心も打ち震える頭の中で、なんとか言葉を発する吸血鬼ヴァンパイア

 『絶対』と言う言葉が、身体の中の奥深くを支配する。



「勇者をらえるのだ。影とともにな……」



 美しい夜の魔城に少女のつぶやいた小さな声が、響き渡る。

 その言葉を聴いた者は、絶頂とも言える得も言われぬ悦びに、身体の奥深くを貫かれる。

 それこそが、このヘテロクロミアの金銀の色彩に輝く瞳を持つ少女を、魔神と言わしめた由縁である。


 闇夜に浮かぶ…満月のように…。

 



 



 



 

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挿絵(By みてみん)
― 新着の感想 ―
[一言] 連載再開、おめでとうございます~♪(^ω^) 応援応援~♪ 頑張ってくださいませ~!(≧▽≦) さて、自分も頑張るか……( ̄▽ ̄;)←ゆるゆると(^_^;)
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