大地へ!!
ロアナール地方の大森林……。
ルーラシア大陸最北端にして広陵と針葉樹の広がる寒帯地域だ……。
というのは、マナさんから聞いた…。
このラーマの大神殿の直下から真北に進めばロアナールの大森林に行き当たる。
今回は、直にその地に赴き触れて何かの手掛かりを掴もうというのだろうか?
巨大なエネルギー……。
二体の…影……。
一体、どれほどのものだろう……?
果たして、無事帰って来られるのだろうか……?
いや、自分も怖いがマナさんを守れるのだろうか……?
さっきまで怖じ気づいていたけれど、情けない自分を省みて思うんだ……。
僕は……あまりにも情けない!!
マナさんは、守ってくれると言ってくれたけど、ずっと守られっ放しの僕は、男としてどうなんだっ!?
……
「そろそろ、行きましょうか……?」
と、マナさんが、言った……。
けれど、何の準備も出来ていない……。
もちろん、気持ちの整理もついていない……。
いや、さっき決意しかけたばかりで、その……まだ気持ちが固まっていない……。
と、オロオロする僕に……
「そんなに、怖い?…私には使命があります。けれど、私はシュンタロさんと、一緒にいられる。それだけでいいわ」
「例え世界が滅んでも、シュンタロさんと一緒にいられる『今』が大事なの。それを忘れてはいけないわ」
力強くも凜とした表情のマナさん。
ダメ男の情けない表情の僕とは対称的だ。
けれど、なんとなく思ってしまった。
この世界を何とかしようという想いよりも、『今』マナさんと一緒にいられるという事実。
こんなに綺麗で美しく可愛いマナさんと一緒にいられる事実。
世界のために何かを成し遂げなくてはいけないにしても、目の前のマナさんだけは、大事にしたい…。
「よし…」
僕は、俯いた顔をあげる。
マナさんを見つめる…。
これは夢なのかと思うほどに美しいマナさん。
金色の髪を靡かせ、大きなエメラルドグリーンの瞳には頼りない僕の顔が映る…。
地上より遥か高い場所に位置する大神殿は、世界のどこまでもつづく夜空と白い雲海を足元に、風の流れとともにその動きを速めていた…。
「行くよ!」
マナさんが、僕の手を取る。
駆け出し、大空へと身体を投げ出す。
「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
僕も一緒に大空へと放り出された…。
こんな上空から即死を免れない高さで…。
頭の中に『死』がよぎる…。
「うひー!!いやあぁぁぁぁ!!!!」
僕は情けない声を放ちながら落下してゆく…。
おおよそ、魔力などという概念など頭にはなく、白目をむいて落下中の僕。
目の前に、あっという間に地面が迫っている…。
「ふひっ…」
なんか、股間が湿った。
いや、絶え間なく流れつづけた…。
『死』の恐怖は僕の脳内に凄まじい快楽を与えた…。
「ドゴオォォォォォォンンンン!!!!!!」
もおもおと、砂煙が立ちこめる。
半径1キロはあろうかというクレーターの中心。
そこには…
目を回し失禁した僕と、両足でしっかりと大地を踏み締め大空を下から見やるマナさんがいた…。
「成功ですわね。」
いや、失敗しました…。
ズボンをなま暖かく湿らした僕は幼少期に覚えた感覚を思い出しつつ、衝突の際の衝撃で自我を喪失していた…。




